咲乃もこは神域リーグ初年度、多井隆晴監督に指名を受けて、チームアキレスに所属していた。
初年度はとにかくアキレスは向かい風で、最後まで優勝争いになかなか絡めずにシーズンを終えてしまった。
そして今年、神域リーグで初めて、古巣に帰ってくる形での指名となった、咲乃。
麻雀の実力と、全員と円滑なコミュニケーションがとれるバランサーとしての役割も買われて、再度の指名。
多井が麻雀を教えてきたVtuberは数多くいるが、その中でも咲乃はやはり特別なように感じる。
そして今年、その多井の元での優勝が、もう目の前にまで来ている。
今年から導入された新決勝方式。
かなり有利な立場で迎えるとはいえ、安心はできない。
自分がアガリを宣言するまで、この対局は終わらないのだから。
ファイナル 第4試合
東家 咲乃もこ (チームアキレス)
南家 緑仙 (チームヘラクレス)
西家 渋谷ハル (チームゼウス)
北家 歌衣メイカ(チームアトラス)
新決勝のルールをおさらいしよう。
現在のポイント状況はこのようになっている。
新決勝には順位点が無く、純粋にこのままの点数が各選手の持ち点になる。
そしてこの咲乃もこが持つ、186100点をどこかのチームが超えることができれば、その時点で終了。
逆に、咲乃はそれまでの間に、1回でもアガれば、優勝決定だ。
順位点が無いので、視聴者の方にも単純で分かりやすい方式だと言える。
アキレスが相当に有利なこの最終戦だが、麻雀は何が起こるかわからない。
それでは早速、内容を見て行こう。
東1局、
を仕掛けたのは、ゼウスの渋谷ハルだった。
「(アキレスの)![]()
の手出しもうちょっと嫌だな」
このルールは、1位のチームを絶対にアガらせてはならない。
その時点で、決着がついてしまうからだ。
その点で、この新決勝に、渋谷ハルを抜擢したのはゼウスは英断だったかもしれない。
試合前、ゼウス監督のたろうからルールの説明を受けながら、渋谷がその言葉ひとつひとつをかみ砕いていく。
人一倍ゲームへの理解度が高い渋谷だからこそ、すぐにその本質に気付き始めていた。
渋谷が、300、500のツモアガリで延命。
常に咲乃の動向に気を遣いながら、自身のアガリを見る。
この究極の状態を任せるのであれば、まさしく渋谷は適任だろう。
今年のゼウスは、序盤多いに苦しんだ。
一時期負債は300を超え、セミファイナルで敗退も十分に考えられる位置にいたのだ。
しかし、チームは終盤大きく盛り返すことに成功。
桜の大きなトップを始め、渋谷も連投した第9節では1位2位と大健闘。
強気な『ゴリラ麻雀』を合言葉に、ここまで戦ってきた。
その最後の望みは僅かであっても、渋谷ハルが懸命に戦っている。
東2局
「ヤバイ終わる終わる!」
咲乃が
を仕掛けた直後、親番の緑仙がすかさずリーチへ。
咲乃はアガれば優勝だが、親に対してはリスクを背負い辛い。打った時の打点が高く、また打ったチームの親番が継続してしまうからだ。
このリーチの裏で、アトラス歌衣がファインプレーを見せる。
リーチに対しては通っている
を、歌衣が止めたのだ。
「今更緑(緑仙)がアガろうがどうでも良いわ。もこがアガりさえしなきゃ良い」
緑仙のリーチは放置しても良く、とにかく咲乃に厳しく打つ。
実際、この
が切られていたら咲乃に![]()
待ちのテンパイが入っていた。
歌衣の、ナイスストップ。














