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本田朋広 瀬戸熊直樹 萩原聖人 黒沢咲 高柳寛哉監督
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【萩原聖人】
「振り返りたくはないですね。またかというのもありますし、やっぱり大事なところで力になれないという部分で言うと、メンタルは結構きつかったですし、どうしたらいいんだろう、麻雀というものとの向き合い方が間違っているのかなとか。個人的なことを言えば、セミファイナルとファイナルはきつかったですね。
ただ、このチームにいる、このチームで戦えているということは楽しかったです。4人ともみんないい年をした大人ではありながらも、チームの成績の浮き沈みで、空気がいろいろ変わったりするわけですよ。そこでどう自分がいれるかとか、みんなはどう思っているんだろうかっていう、本音と建前とのせめぎ合いみたいなところも絶対にあったと思いますし、最終的には良かったのも悪かったことも含め、チーム力が上がった1年だったんじゃないかなと、僕は感じました」
-個人としては10連続連対など、安定感も出てきたのではないでしょうか。
「決して手応えがなかったわけではなかったんですけどね、結果がなかなかついてこなかったなと思いつつも、年齢的なことで言うと、いろいろなことがだんだん衰えてくるような年齢にはなってきましたけど、こういう現役の中で戦っているということは、自分の伸びしろをもっと感じる時間もたくさんあるなと感じましたし、より謙虚に、より真摯に、より厳しく麻雀というものを見つめ直さなければいけないのかな、と感じました」
【瀬戸熊直樹】
「まず、チームが(選手入れ替えの)レギュレーションにかかる可能性のあるシーズンだったので、みなさんの記憶に新しいように、雷電はずっとプラス100からマイナス100を推移していて、本当にレギュラーシーズンは長く遠く感じました。その中で自分の成績もプラスマイナスゼロぐらいをずっとうろちょろしていて、シーズンがどうなるかなとやきもきしていましたけど、3月になって急に4人全員が絶好調になりまして、レギュラーシーズン突破が見えたときにはホッとしました。
でも、セミファイナルでは不本意な成績で、結構なポイントを残してセミファイナルに行ったんですけど、ファイナルにそのポイントを持ち越せなかったのが自分的にはちょっと後悔というか、もう少しセミファイナルでファイナルを見据えた打ち方をすればよかったと思いました」
-レギュラーシーズン最終盤頃から、控え室のいい雰囲気がよく見えていました。
「チーム全体に『レギュレーションに引っかかったらどうしよう』というのは、みんな言葉には出さないですけど全員が思っていたことなので、その呪縛から逃れたときには本当にのびのび打てるようになりました。それはこの7年の集大成で、チームの精神力が強くなったなと、僕は感じました」
【黒沢咲】
「私は、レギュラーシーズンに関しては年を越えるくらいまで苦しんだり悩んだりしたシーズンでした。ただ、そこから復活することができたことは、たぶん今後の自信にもなります。その復活に関しては、チームメートやスタッフの人たちのいろいろな言葉だったり差し入れだったり、そういう気遣いがあってすごくいい状態に戻れました。そして最終的にみんなでファイナルに行けたことで、今は負けたばかりで悔しいですけど、少し振り返ると、本当にいいシーズンになったな、と思っています」
-最終日は厳しい条件の中で第1試合に身を投じましたが、それも大きな経験になったのでしょうか。
「そうですね。ただ、私たちはかなりの大トップを取らなければいけない、奇跡が起こらないとなかなか難しいという条件だったので、逆にもう開き直って思い切っていけました。ただ、他の3チームは本当に優勝のためにギリギリの戦いをしていますので、私も自分の全てを出して、いい試合になるように、ということは心がけて打ちました。すごく疲れました」
【本田朋広】
「レギュラーシーズンはそんなに簡単に振り返れないんですけど、セミファイナル・ファイナルに残れたことで、今年の経験が来年以降に生きるな、というのをすごく感じました。やっぱりセミファイナルの試合に出てみて、ファイナルもですけど、試合に出て経験したことが本当に多かったです。これはたぶん試合に出ないと経験できないことだ思ったので、この経験はかなり貴重で、来年以降の自分の力になると、すごく思いました。
やっぱり条件であったりとか、難しい局面がすごく多くて、レギュラーシーズンではやらないプレーをセミファイナルやファイナルでたくさんすることが多かったので、そういった経験をいっぱい積んでおく必要があるなと思いました」
【高柳寛哉監督】
「終盤、セミファイナルとファイナルにかけて少し厳しい状況にはなりましたけど、全体を通して見ると、4人がそれぞれにいろいろな場面で同じように活躍したと思っていますし、単純にチーム力が高まったなと思います。うちはご存知の通り、途中で本田さんが加入しましたけど、初年度からメンバーを変えずにずっとやってきて、7年目のシーズンで今までで一番の成績を残したという事実はすごく大きいなと思いますし、そこで自信もついて、結果ファンの人たちもすごく喜んでくれたシーズンだったなと思います。僕は全体を通じて、今シーズンはすごくいいシーズンだったなと思っています」
-今後、さらに上を目指す中で、どういうところがポイントになると考えていますか。
「具体的に言うならば勝負どころ、『ここで勝たなきゃ』というところでチーム全体を通してなかなか勝ちきれないところがあるかな、と感じています。それをどうやったら克服できるのか、それは僕にも分からないですけど、そこで勝ち切れるような力をつけなければいけない、そうしなければ上位入賞まではたどり着かないんじゃないかな、と思いました」
-今シーズンは『RAIDENTITY』というフレーズや横山健さんのチャンステーマなどで、今まで以上にファンとの一体感が増したシーズンだったと思います。
萩原
「やっぱり、中にいる自分たちだけでは獲得していったり広げたりするのは結構限界があると思うんですよね。周りにどれくらい麻雀が好きで、応援してくれる人たちが増えるかということに関しては、僕らが魅力的であれ、というのが圧倒的な条件になってくると思うんです。その中で健さんだったり、他にもいろいろな人が『雷電が盛り上がるなら』『Mリーグが盛り上がるなら』ということで協力してくれたことは、結果とかは一旦置いといても、このチームが『RAIDENTITY』という今シーズンのキャッチーなワードで歩んできた道は、間違いではなかったのではなかろうか、とは常に思っています。
おこがましくも『俺たちしかできないだろう』ということは今後も率先して、やれることはどんどんやっていきたいですし、そういうふうにやることで、それぞれの選手のスキルやパーソナルな部分とか、いろいろなものがどんどん太くなっていくと思うんです。だからただ麻雀を打つだけではなくて、どうそれぞれが魅力的でいるかというのは、うちのチームだけじゃないと思うんですけど、各々のチームでそういうことをみんなでやっていけば、Mリーグはもっと新しいものを獲得できていくんじゃないのかな、というふうには感じています」
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。