渡辺太
「うわっ、私の点棒、多すぎ?」
文・カイエ【火曜担当ライター】2026年1月13日
本日の第2試合をもって、パイレーツが80試合目に最速で到達。
今期レギュラーシーズンは過去最多、各チームが120試合ずつを戦うため、これでちょうど3分の2が終わる計算になる。
序盤・中盤・終盤で分けると、いよいよ年が明け、Mリーグ2025-26シーズンも終盤戦に突入だ。
第2試合
東家:東城りお(BEAST X )
南家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
西家:鈴木優(U-NEXT Pirates )
北家:岡田紗佳(KADOKAWAサクラナイツ )
現在3位のBEASTはチーム発足以来の最高ポイントを更新し、レギュラー突破は安泰かという位置。
それ以外の3チームは優勝経験チームではあるが、ここまで苦しく、ボーダー下に沈む。
実況&解説は、今期2度目の松嶋桃と河野直也。
火曜日第2試合の観戦記を担当させていただくことになり、いつも桃やんの実況と共にあった。そんな彼女も、先ごろご懐妊を発表し、各界から祝福の嵐となったのは周知の通り。無理することなく、やれるところまで実況を続けて欲しい。
河野直也の解説の素晴らしさについては、以前の観戦記でも言及した。
「AIそのもの」渡辺太が祈る、その先にあるもの【Mリーグ2025-26 レギュラーシーズン 観戦記 10/28 第2試合】担当記者 カイエ
先週の観戦記でも選手の「長考」について記したが、仮にそれが退屈に思えるなら、責任の一端は実況・解説にあるかもしれない。Mリーガーたるもの、悩むべきでない局面で、悩むことはまずない。当たり前だが、考えるべきことがあるから、考えるのだ。それが言語化されれば、選手の長考の内実が見える化されれば、われわれもドラマを視聴するように選手に感情移入をして、一緒に悩んだり思考できたりする。
これが抜群に巧いのが、河野直也という解説モンスターなのだ。
彼は、選手の「間」で、いま何を考えているのかを的確に解説する(「・・・と考えてそうですね」)。あるいは「〇〇なら〇〇。××であれば××」と、考慮すべき要素を端的に取り上げて、何を切るかの2択・3択を提示してくれる。結果、たとえそれが選択肢「外」からの選択であっても、その打牌にはこういう意図があったのではと、追って説明してくれる。しかもそれが冗長でなく、次の選手の摸打に被ってまで説明を引きずらない。局面の「尺合わせ」が絶品なので、常に一言解説が、心地よく頭に入る。
河野直也は、選手の思考を細かく分析して、端的に伝える解説を心掛けているのだ。
東1局
親の東城の先制テンパイ。当然リーチなのだが、リャンカンからの待ち選択は非常に難しく、麻雀における永遠のテーマのひとつだ。映像ではこの時、東城が
を右端に置いているのを捉えていた。
実際、東城の選択は
を切ってのカン
でのリーチ。
理牌からも、あらかじめ決めていたのだろう。ノータイムだった。
中筋になるとはいえ、いわゆるドラ表の牌で、見た目枚数も1枚少ないカン
。4枚中の1枚の差というのはなかなか大きい。
仮にここで解説が流してしまうと、視聴者の中には、それがどういう意図だったのか分からない人もいるだろう。酷い場合には、打牌批判にまで発展することもあるかもしれない。
しかし河野は、これは裏をかいたのだろうとすぐに看破した。リャンカンの選択であれば、普通はカン
に取ると多くは考える。それをノータイムで即リーしたことに東城の深謀遠慮があると、解説のおかげですぐに分かるのだ。
ツモアアガリ効率(枚数差)のカン
か、出アガリ効率(読みを外す)のカン
か。
麻雀に正解が存在するのかについては難しい。しかし、結果ははっきりと出てしまう。
ただ、たとえそれが裏目であったとしても、プロの思考と意図が分かれば、ファンも視聴者も納得できるかもしれない。だから、選手の中にはSNSや検討配信などで自身の思考を開陳する者も多い。もっともそこまで熱心に追う視聴者ばかりではないだろう。リアルタイムの闘牌中に、即時解説のフォローがあれば、それに越したことはない。選手の中には、解説でちゃんと言及してくれているだろうと信頼を語る者もいる。その信頼に十全に答えられる解説者の一人が、河野なのだ。そして、そういう解説者は案外多くない。
さて、渡辺太の11巡目。
ツモ
でカン
のテンパイに取れるが。
ここは現物の
を抜いて手を壊した。ベタオリだ。
太の攻めの苛烈さを知る者には、解説が必要な判断だろう。
私もそのひとりで、こういう状況で、秒で曲げる太を何度も見た気になっているからだ。
東城リーチの宣言牌
は、岡田だけが合わせている。だからMAX山に2枚。
しかし、リーチ者の東城がもう1枚
を保持してのリーチの可能性も、それなりにある(実際はリャンカン形のため持っていないが)。残り1枚だとすればさすがに分が悪く、ここはMリーガー屈指の攻め屋である太でも、オリ判断となった。
というのが、河野の解説で「見える化」したことだ。
なるほど、と私は納得できた。決して後づけの解説ではない。太の考慮中に、これは押さない=テンパイ取らずを解説は先に見抜いていたのだ。実際に自分が卓について打っているかのように、選手に憑依してその思考をトレースする。打ち手としても指導者としても一流であることに加え、何よりMリーガーの対局を誰よりも見て、研究しまくっている。
そんなAI学習のような面があるかと思えば、麻雀が大好きな視聴者に近い目線で、興奮したり騒いだりしてくれる側面もある。絶叫もするし、軽妙な冗談も言うし、うっれしい~!とも言う。何より待ち枚数のカウントは、AIより速い。
昨年は風林火山オーディションにも参加し、Mリーガーを目指す存在としても耳目を集めた河野直也。
解説者として一つ区切りを迎えるのかもしれないとまで語ったが、惜しくも体調不良で途中棄権となってしまった。
だが、いずれは公式解説の先輩である渋川難波のように「Mリーガーになったら解説が聞けなくなるから解説者でいてほしい」という声を背中に「Mリーガー河野直也」であることを待望され、あの舞台で闘う姿も見られるのではないか。そんな期待を記して、筆を措こうと思う。
(了)
・・・いや、まだ東1局すら終わっていなかった。
この半荘は全17局。うち、流局が2局。
実にアガリが15回発生し、全員がリーチ5回ずつ打つという、すさまじい乱打戦となった。














