「AIそのもの」
渡辺太が祈る、
その先にあるもの
文・カイエ【火曜担当ライター】2025年10月28日
いまオンライン麻雀界隈、最大のトピックとして「麻雀AI問題」が取り沙汰されている。
具体的には、オンライン麻雀における段位戦への、無許可での参加が問題視されている。麻雀AIの参入には、運営の許可が必要であるにも関わらずだ。
それに加えて、麻雀AIによるアシスト機能を導入したツールが開発されているという噂がまたたく間にSNSを駆け巡った。
これが許可なく密かに利用されれば、ゲームにおける不正なチートツールも同然ではないかというわけだ。
いや、そんなツールの利用に意味はない、そこまでAIは強くない、不正で勝って嬉しいのか、対人戦にAIが絡んでいるというだけで不愉快、段位制の崩壊、オンライン麻雀の終焉。
様々な声があがっている。
よく知られている通り、すでに将棋や囲碁の世界では、プロ棋士をも凌駕するその実力が認知されて久しく、対局中継におけるAI評価値の表示はデフォルトになっている。
AIが示した候補手が、イコール最善手を意味し、「果たして人間であるプロは、AIが推奨する候補手を正しく指せるのか?」という点が、大きな興味を引く時代になっている。視聴者もAIも知っている「正解」に、プロ棋士が自力で辿り着けるということが、その棋士の強さの証明になったり、感動を呼んだりする。逆説的なことに「藤井聡太のAI超えの一手」といった取り上げ方がなされ、人類の勝利とばかりに称賛される。
すごい時代になったものだ。
麻雀の放送対局においても、リアルタイム評価値や、推奨手、放銃確率などの数値化が導入される未来が、いずれ訪れるかもしれない。すでに実験的に行われた例もある。
現在、少なくともオンライン麻雀というゲーム環境においては、AIは人間を超えている可能性が高い。
長期的な成績=各種指標で、麻雀AIは圧倒的な実力を示している。そして真に恐るべきことにAIは、刻々と「学習」しているのだ。われわれがこうしている間にも絶え間なく。
1年前のAIソフトが、最新のAIソフトにまるで歯が立たないといったレベルの、日進月歩の世界がそこには広がっている。
当たり前のことだが、麻雀AIにはヒューマンエラーが存在しない。疲労や、メンタルのブレも無い。ただでさえ時間制限のあるオンライン麻雀において、正確な牌効率や統計的に有利とされる押し引き判断を何百何千回と繰り返し出力することなど、文字通り人間業ではないだろう。そうしたフィールドにおける人間の限界は明らかだ。
ともあれ、Mリーグはまだ、そうした界隈の喧騒とは無縁であるかもしれない。
そもそも不特定多数と密室で対戦できるオンライン麻雀と、特定少数のメンツで公開の場で対戦するMリーグとでは、ゲームとしての条件が違いすぎている。
AIアシスト機能を利用した「ソフト打ち」のような不正行為も現実的ではない。
ただ、すでに今でも、対局終了後には「NAGA」を用いた牌譜解析による「一致率」や「悪手率」の数字が出回っているし、中にはそれを実力の評価軸に考える視聴者もいる。Mリーガー当人も参照し、意識しているような発言も聞く。当然、日頃の研究や牌譜検討で、麻雀AIを活用しているプロも少なくないだろう。
さて、前段が長くなったが、そんな麻雀AI論議が喧しいこのタイミングで、あの男が第2試合に登場する。
第2試合
東家:渡辺太(赤坂ドリブンズ)
南家:小林剛(U-NEXT Pirates )
西家:中田花奈(BEAST X)
北家:HIRO柴田(EARTH JETS)
伊達朱里紗が「麻雀そのもの」ならば、渡辺太は「AIそのもの」だ。
よく知られているように、麻雀AI「NAGA」のタイプ「オメガ」は、渡辺太の天鳳(オンライン麻雀ソフト)での打牌を模倣するモデルである。ちなみにタイプ「ニシキ」の三分の一も「太」成分からなる。太とは、豚ではなくヘビなのではないか。
東2局
前局、HIRO 柴田の満貫が決まり、迎えた東2局。
点棒状況は御覧の通り。
北家の太、カン
待ちでテンパイもここはダマテン。リーチのみにつき、好形手変わりを待つ。
南家でラス目の中田が
をチーして三色1000点のテンパイ。
すると太、中田の当たり牌である
を重ねて、
とのシャンポン変化でリーチとする。
2巡目に
を切っており、
は狙い目か。
もっとも、捨て牌の
と
の手出しの間に
が挟まっており、
が関連牌だとすると
トイツの可能性も読めるには読める。ただ、だからといって単に頭のケースも多い。まるで関連していないこともある。これならリーチのみでも、アガり率は担保されているとみた。
これが3山。
2巡後、狙いではない
の方を持ってきて、リーチ・ツモ… からの~
裏に何かいるー
リーのみが満貫のツモに化け2000・4000でトップ目に。
シーズン序盤、逆連対が続いていた間も裏ドラには恵まれていたと自身でも語った。
太くないおが、太さを見せつけていく。
東4局
本局は、解説の河野直也プロの好プレーを。















