さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門【第9回】
ギャンブルは ゼロサム・ゲームである
大昔の歌舞伎町の裏の旅館麻雀では、負けないための原則や賭場の構造をいくつか学習しました。
●賭場はゼロサム・ゲームである。
ゼロサム・ゲームというのは
「参加者の得点と失点の合計がゼロになるゲーム」
すなわち、誰かが得をすれば誰かが損をするゲームのこと。
誰かが賭場にお金を持ち込んでくれなくては、その賭場もギャンブラーの生活も成り立たない。
カモがいてこその賭場なのだ。
それを熟知してるのが胴元。
「山ちゃん、あの社長には失礼のないようにな。オレたちが学習院初等科だったころからの幼なじみで、この界隈の地主の跡取りだ」
とクギを刺されたことがあります。
●ギャンブルは勝率よりも勝ち金額が大事。
ギャンブルの成果は、何時間でいくら勝ったかだけ。
誰に勝ったとか、どういうふうに勝ったかは二の次。
賭場がコンスタントに立たないことや、負けるリスクを考えれば、サラリーマンの日当の数倍勝たなければ意味がない。
ただし、パチンコやパチスロのように毎日打てるなら、もっと小額でもOKです。
●勝率が一定ならレートは高いほうがいい。
「利益率が一定なら、売上高は高いほうが利益も大きい」
という商売の原則と似ています。
どんなに腕が良くても、低レートでは稼ぎはたいしたことがない。
麻雀の場合だと、だいたい2ピンの東風戦以上は必要。かつてはそういうフリー雀荘もありましたが、今ではほぼ消滅しています。
ギャンブラーの仕事でもっとも大事なのは、腕よりも軍資金よりも、いかに高い賭場に潜り込むかです。
●技術は相対的に優れてれば問題ない。
「昔は負け知らずだった」
年配のギャンブラーにありがちな述懐です。
ウソではないと思いますが、あくまでもその時代のそのコミュニティで、負け知らずだったということでしょう。
腕のいいライバルがたくさんいるところよりも、楽に勝てる賭場を見つけるべし。
かつて、ぼくがパチンコの攻略法を使っている時も同じでした。
東京ではたくさんのプロが同じ攻略法を使っているので、競争率が高い。
まだ攻略法が知られていない地方都市まで出かけたこともありました。
●胴元は強い。
旅館麻雀時代のテラ銭は、今と比べるとずいぶん比率が低くて、1割以下の場合が多かった。
実は、技術関与の比率が大きい麻雀でさえ、10回打って、1回分の勝ち金額が残れば上等なんです。
ということは、1割以上のテラ銭だと、勝ち金を残すのが難しいということですね。
その分、じわじわと胴元が儲かるという仕組み。
もっとも胴元のほうは、旅館を手配したり人員を配置したりとコストがかかる。
また、常習賭博罪などに問われるリスクもあります。
●博打場の大半のプレイヤーは、本当は博打をするほどの余裕がない。
胴元はリスクを背負っているので、当然、賭場から大きく収益を得ようとする。
雀ゴロなどのギャンブラーも、それにぶら下がってなんとか稼ごうとしている。
結局、基本的に賭場を支えているのは、少数の金持ちのギャンブルファンで、そこに参加している者の大半は、ほとんどお金に余裕のない人たちなんです。
かつて、歌舞伎町の地下カジノが満員状態なのを見て、
「良くこんなにたくさん、遊ぶ金を持ってる人たちがいるなあ…」
と感心したことがあります。
でも後で知った実態はまったく違ってました。
常連客のほとんどは、使ってはいけない金や、借金した金で勝負をしていたんです。
●自分もそうじゃないかを、時には自問すべし。
先に紹介した学習院の幼なじみですが、社長は初等科、中等科と進み無事大学を卒業したそうですが、胴元のほうは初等少年院、中等少年院、特別少年院を経て刑務所に入ってたそうです。
小博打は ヘタ殺しが基本
西原理恵子さんが麻雀を覚えてからしばらくして、古くからの友人で白夜書房の編集局長の末井昭さんも麻雀を始めました。
「ああ、やっとあたしにも後輩のカモができた。さっそく東風戦を立てるよ」
自分をカモだったと自覚してるのは立派ですね。
末井さんに麻雀を覚えてもらうために、末井さんの手牌だけ公開して打ってもらいます。
「末井どん、そこはリャンメンにしてリーチしたほうが、ツモれる可能性が高いですよ」
西原先輩が、後輩に親切にコーチします。
「じゃ、リーチ。待ちはコレとコレだよね」
「ハイ、良くできましたぁ」
末井さんはグリグリとツモ牌に力を入れ、ぼくたちの捨て牌も真剣に見つめてます。
「うーん、ツモれない」
「がんばって!」
「なんで出ないのかなあ…」
西原さんとぼくは思わず顔を見合わせてしまいました。
これで2ピンとは、西原さんもアコギよのう。
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2010年10月1日号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/
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