悪夢の5連放銃の中で、
松本吉弘が削りだしたのは
「最善のラス」。
その微細な一打
文・渡邉浩史郎【木曜担当ライター】2025年1月16日
第1試合
東家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
南家:仲林圭(U-NEXT Pirates)
西家:内川幸太郎(KADOKAWAサクラナイツ)
北家:鈴木大介(BEAST X)
「それが今できる最善の、僕のラスの取り方だと思いました。」
Mリーグワーストレコード。悪夢の5連放銃を食らってなお、松本の瞳は前を向いていた。
思えばこの半荘、始まりは松本に逆襲の風さえ感じていた。
仲林の先制リーチを受けて、山に3枚の高め12000の聴牌。しかもは放銃しないというおまけ付きだ。これを和了ればといった聴牌が……
何のいたずらか、山に三枚の当たり牌はどこへやら。
松本が手繰り寄せてしまったのは山に一枚の。当然の高め12000の三面張に変化させる。
を切れというのは余りにも酷な話だ。
当然の放銃だろうが痛いことには変わりない。まして松本はとにかく結果が欲しい立場。
漂ってきた不穏な空気。
【東2局】、ドラ3の仕掛けは和了れないほうを引かされ、またしても放銃。
【東3局】、大介のリーチに追っかけた両面待ちは、高打点への放銃に。
この三連続の放銃で松本の口元は少し歪む。ついに大きな失点となったのはもちろんのこと、局が進んでいくのも松本にとっては我が身を切るような激痛に感じたことだろう。
続く【東4局】、をスルーしてメンタンピンに。これもラス目になったが故の当然の手順。
ドラ受けも三色も残る、残さざるを得ない。
しかしその当然が……
あまりにことごとく捕まる。
松本の顔が明確に歪む。それはそうである。
自身は安全牌がしかない中、まっすぐ進むしかない。かか。が二枚切れの分、ドラがとはいえ普段よりはカン即リーが少ないだろうと選んだ牌だ。
当たるとして、最悪なのは……
例えばこんな、ドラがいっぱいで複合している形。
開かれた手を見てのこの表情だ。
まさしく最悪のケースのみで構成された東場。
ここで連対を勝ち取るには次の南1局の親番でどれだけ稼げるかに掛かっている。
手は入っているのだ。【南1局】、6巡目のラス目で先制親リーチ。配牌をもらった松本が、できることは全てやった形。