さいばら&山崎の でかぴん麻雀入門【第8回】
でかぴん程度は 目クサレ博打?
「ツモ、タンヤオ・赤3のチップ3枚オール集合!」
「あ、この野郎。当たり牌を見逃してまでツモ狙いかよ」
バブルの時代に目撃した、ワンチップ五千円のインフレ麻雀です。
レートは、でかリャンぴんなのでマンガンは一万六千円相当。
それに対してチップ3枚オールを引くと合計四万五千円。
アガリに自信があれば見逃しもアリということですね。
これはハードボイルド作家の、Sさんのグループですが、ご本人に言わせると、
「こんなの目クサレ博打だよ」
と、なんだか退屈そうなんです。
こういう人たちのシビれるレートってのは、いったいいくらんでしょうね。
もしかしたら、すでにお金じゃないのかもしれません。
●あまりにも高レートは、誘われてもやらないように。
(以下●は自分を見失わない心構えです)
日本のギャンブルでメシが食えるのは、メジャーな種目ではパチンコ・パチスロ・麻雀くらい。
仮にSさんたちのレートで腕のいい者がコンスタントに打てば、メシが食えるのは、もちろんマンションくらいは買えます。
パチンコやパチスロもプロとして生計を立ててる人たちがたくさんいる世界です。
いずれも法的にはややグレーで(Sさんは真っ黒)、民間のギャンブルなのがミソ。
競馬や競輪などの公営ギャンブルに比べると、ハウスがわが取るコミッションの率が低いのと、結果への技術関与の比率が大きいのが特徴。
公営ギャンブルのコミッションは25%と高率ですが、市場原理が働く民間のギャンブルは、平均すれば10%くらいじゃないでしょうか。
カジノのルーレットなどは、もっとコミッションが少なくて5%程度ですが、残念ながら、プレーヤーの技術関与がほとんどできないので、トータルで勝つのはほぼムリです。
●公営ギャンブルは楽しむもので、勝つのは難しい。
ぼくが若いころ(30年以上前)にやっていた麻雀は、ピンから5ピンくらいまでの東風戦。
歌舞伎町の裏の旅館麻雀で、東風戦が生まれた時から参戦してました。
当時の職安(今のハローワーク)と風林会館との間で、今もラブホテルが林立しているエリアです。
と言っても、いつでも高レートが立つワケではなく、ふだんは点ピンか2ピン。
たまに週末などに声がかかる程度。
高レートと言うと、腕のいいプロばかりが終結してるイメージを持つもしれませんが、実際には金を持っている旦那衆と、それに食らいつく雀ゴロ、さらに場を仕切る胴元の三つ巴戦。
旦那衆は不動産屋、パチンコ屋、ビルのオーナー、まれにヒモっていうのもいました。
高レートで打ち続けるのには、金か腕かどっちかが必要です。
●自分は金か腕か、どちらかを自覚しておく。
軍資金が少ないと 腕が縮こまってしまう
週末の旅館麻雀を打ち始めたころは、かなり緊張しました。
元もとのレート(3ピン)はワンラス二万円くらいですが、サシウマなどのオプションが付くと、あっというまに実質レートが上がってしまう。
●ムリなサシウマは断る。
ある程度は軍資金を持ってないと、麻雀を打つ手が縮こまって、勝負すべきところを、降りてしまったり。
ぎりぎりの軍資金で参戦する者は、たいていは腕よりも資金力に負けていました。
若いぼくもそうでしたが、軍資金の薄い者は、勝負の途中で持ち金を気にするので、それがバレてしまう。
勝ってる場合は、サイドテーブルの勝ち金を目で数えたり、負けてる場合は、予備の金が入ってる内ポケットに手をやったりとか。
いわゆる
「博打場でアカ抜けないヤツ」
と見なされ、寄ってたかってマト(カモ)にされてしまうんです。
●軍資金には余裕を持つ。
●小さな勝ち逃げはしない。
カラス金の金利は 一晩一割「カ~っ」
旅館麻雀を仕切ってた人たち、いわゆる胴元は金貸しも兼ねてました。
「ヤマちゃん、今日はツカないねえ。少し飛ばそうか?」
ぼくは借りたことはありませんが、もし借りると九万円ずつ輪ゴムで丸めた札が飛んできます。
金利は先払いの一晩一割。
翌朝、賭場が終わってカラスが「カ~っ」と鳴く時には、付け馬と呼ばれる屈強の男が、自宅まで付いて来て、キッチリと十万円回収されてしまうのだ。
●借金はしない。
博打場の胴元の副業に外ウマというのもあった。
一般的には見学している人たちに、ゲームの勝者を当てさせる馬券のことを言うんですが、時にはゲーム中の者に声をかけることもありました。
「社長、だいぶガンで(負けて)ますね。二割デラで良ければ外ウマを受けますよ?」
この場合、社長は自分の馬券を自分で買うことになる。
連対勝負なら、自分が2着までに入れば勝ち、3着以下なら負け。
ただし、二割のテラ銭(コミッション)を取られます。
相場は五分デラですが、マトのフトコロ具合や精神状態を見て、徹底的にカモるんです。
カラス金を借りて、二割デラを払ってたら、どんなに腕が良くても勝てるワケがないのだ。
●借金はくれぐれもしない。
ぼくは週末の旅館麻雀をなんとか生きのびましたが、ホームの麻雀で予期せぬことが起こりました。
低レートでズルズルと負けるようになったんです。
心のどこかで、低レートとメンバーを舐めてしまったのかもしれません。
●レートとメンバーに、常に敬意を払うべし。
冒頭のSさんに、最近の麻雀のことを聞いてみました。
「ぜんぜん場が立たなくなったな。みんな金持ってないんだもん。ま、一番持ってないのはオレだけどな」
(文:山崎一夫/イラスト:西原理恵子■初出「近代麻雀」2010年9月15日号)
●西原理恵子公式HP「鳥頭の城」⇒ http://www.toriatama.net/
●山崎一夫のブログ・twitter・Facebook・HPは「麻雀たぬ」共通です。⇒ http://mj-tanu.com/
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