熱論!21人のMリーガー
朝倉康心・パイレーツ
〜止まらない探求心が
生んだ「反射読み」〜
文・ゆうせー【U-NEXTパイレーツ担当ライター】
「ねぇ、センセーは生まれ変わったら何になりたい?」
先日、塾講師の仕事をしているとき、唐突に生徒から質問をぶつけられた。まぁ、受験シーズンのこの時期にはよくあることだ。
「私、パンダに生まれ変わりたーい、そしたら勉強しなくて済むし」
つまりは現実逃避したいだけなのだ。来世はパンダに生まれるかもしれないから、今は目の前のことに集中しなさい。もう入試まで2か月しかないぞ。そう言うと、生徒は再び問題を解きにかかっていった。
生まれ変わるといえば、
今日取り上げるU-NEXT Pirates朝倉は、
昨年
『初代、11代目 天鳳位 ASAPIN』
から
『最高位戦日本プロ麻雀協会 朝倉康心』
へと生まれ変わった。
ネット麻雀の成績のみならず、連盟VS天鳳位戦1st seasonの優勝、麻雀駅伝三人打ちの区間賞などなど、それまでの実績が評価されてB1リーグからのスタート。そして、リーグ戦をぶっちぎりの首位の成績で昇級を決め、プロ入り9か月ほどでAリーガーとなった。
また、8月には初代Mリーガーにも選ばれ、まさに『伝説のネット出身雀士』として今日に至る。ネット雀士の麻雀界における道筋を、何もないところからつくりあげた功績はあまりにも大きい。
もちろん、これらの足跡は麻雀が強くないと辿れない。しかもただ強いだけではなく、朝倉の麻雀は緻密でありながらも人を惹きつける独特の魅力がある。Mリーグ前半戦のハイライトを見ながら、その魅力の秘密に迫ってみよう。
魅力1 読みの深さ
10月9日(火)2戦目
(朝倉の読みを詳しく解説するために、天鳳のデジタル牌譜をまじえております。白の牌が手出し、暗転している牌がツモ切りの牌です。)
南3局、3巡目、トップ目の西家多井が動いてきた。
自風のをポンして、打。
さらに多井は、
をポンして、打。
この多井の仕掛けに負けじと親番の寿人も、
役牌のをポンして参戦してくる。
朝倉は、
上家の寿人に合わせて丁寧にマンズを払っていく。
そして、12巡目に、寿人が手の中からション牌のを打ち出した。
「ポン」
このを多井がポン。なんとも威圧感のある3副露だ。
その巡目に寿人からが切られる。 対局シーンの画像に戻って…
前巡にを引き入れてこの形になっていた朝倉。動きが止まる。
を鳴けば一気通貫ドラ3の満貫テンパイだ。しかし、はション牌。多井のトイトイ風の仕掛けにも通ってはいないし、親の佐々木の仕掛けにも通っていない。
どうする…
朝倉の選択は、
「ポン」
ポンしてを勝負した。
どうしてを切ることが出来たのだろうか。朝倉の読みを順に説明していこう。
まず寿人はあとの無いラス目の親番。ここはかなり無理をしないといけない局面だ。雀風としてもここは強気に来ることが予想される。したがって前巡にション牌のを切ってきてはいるものの、そもそもテンパイしている可能性がそこまで高くないと読んだのだろう。それならば自身の満貫テンパイを優先した方がいい、
次にトイトイ濃厚の多井に対してだが、ここは茅森と寿人の河をみてみよう。
マンズがものすごく安く、逆にピンズはものすごく高い。
ということは、茅森と寿人の手はどうなっていると読めるだろうか?手にマンズがほとんどないということは、手の内の大部分はピンズとソウズで構成されているだろう。
さらに、朝倉がソウズを多く、しかもが分断された形でもっていることから、茅森と寿人はソウズもそこまで厚くは持っておらず、
『茅森と寿人がピンズを厚く持っている可能性が高い』
と読めるのである。
だから、はション牌とはいえ茅森や寿人が持っていることが多く、逆に多井の手にトイツで入っている可能性は低い、と読んだのだ。
このように「他家の手牌構成を読んで、その情報を読みたい相手の手牌読みに用いる」ことを『反射読み』と言っているが(おそらく私だけではないはず…)、朝倉はこの反射読みが非常に得意だ。