熱論!Mリーグ【Fri】
踏み込める牌はどれか…
リスクと推理が交錯した
園田賢の「50秒」
文・阿部柊太朗【金曜担当ライター】2019年2月1日
レギュラーシーズンを残り7試合まで消化した赤坂ドリブンズ。
ファイナルステージ進出ボーダーと180pt近くの差を持って挑んだこの日の対局。
4着。▲59.1pt。園田賢は散った。
より正確に表現するならば戦って散った。
戦うというのは気持ちの話ではないし、損な選択を無理に押し通したりすることでもない。損得を勘定して、前に出るべき場面で勝負をするということだ。
3着目で迎えた南3局1本場。
萩原の親リーチを受けた一発目の手番でチートイツのテンパイ。
50秒にも及ぶ長考の末、切りダマを選択。
園田はときおり、放送対局には不向きだと思わせるほどの長考を見せる。
決して頭の回転が遅いわけではない。灘高校→慶応義塾大学という経歴からも分かるように、頭の回転はむしろ早すぎるくらいだ。
そんな園田が50秒もの時間をかけて一体何を考えていたのだろうか。今回は園田の思考を徹底解剖する。
まずは園田のこの局の目的を考える。そのために注目するべきは点棒状況。園田から見た他家との点差が上の表。
Q―ここから目指すべき着順はどこか?
A―愚問。Mリーグルールならトップ以外にない。
Q―トップを取るため、この局に最低限するべきことは?
A―オーラスにマンガンツモ条件を残すこと。
Q―マンガンツモ条件(親と12,000点差・子と10,000点差)を残すためには?
A―萩原と5,400点以上の差を縮めること
つまりこの局の最低限の目的は
「萩原と5,400点以上の差を縮めること」だ。
それを踏まえたうえで先ほどの手牌。私が最もオススメしない選択は切りダマだ。
2枚切れとはいえ、萩原の現物ので待つことは一見するとメリットに思える。しかし松本・近藤からの1.600は1,900、のアガリでは萩原との5,400点差を縮めるという目的を達成することができない。
萩原の親リーチをかわせることは嬉しいように見えて、局消化してしまうことで自身のトップ率を下げてしまっているのだ。またリーチの1発目に無筋のを切るのは、高打点の放銃リスクも背負うことになる。かなり損な選択であると言えるだろう。
しかし、これだけのことを考えるのに50秒もの時間を使いはしないだろう。さらにもう1歩深く、園田の思考に迫ることとしよう。
「8.4%」
これが何の数字かご存知だろうか?
これはオーラスに2着目がマンガンツモ条件を達成する確率だ。
このデータは天鳳の牌譜より抽出したデータを基に算出された数字でありMリーグにおけるデータではない。しかし同じ赤アリルールでの条件下なので、決して的外れな数字ではないだろう。要するにオーラスマンガンツモ条件は、10回に1回もクリアできないほどの、いばらの道なのだ。
実際に園田がマンガンツモ条件をどのくらいの難易度と見積もっているかは分からないが、
「より楽な条件でオーラスを迎えられるなら、それに越したことはない」
と考えるのは当然のことだ。
となると
「この手牌を最大限に高く仕上げられないか?」
という思考に移る。
仮にこの手をリーチしてツモ、1,600・3,200は1,700・3,300、をアガったとすると点棒は以下のようになる。
どうだろう?8.4%というマンガンツモ条件とは比較にならないほどトップが近づいたと思えないだろうか?
親リーチに単騎で勝負するリスクに見合う、十分なリターンを得られる。
さらに裏ドラが乗ってハネマンになったとしたら――もはや計算するまでもないだろう。
園田はずっと「リーチしたい」と考えていたはずだ。