麻雀最強戦2019
サバイバルマッチ
【ZERO特別自戦記】
出なかったリーチの声
届かなかった栄光
光の舞台へ戻る日を信じて
担当記者:ZERO2019年12月8日(日)
【プロローグ】
E席から見える富士山を眺めながら微笑んでいるお婆ちゃんを、A席に座っている私は横目に見て、思った。俺はーー
進んでいるのか。
戻っているのか。
今日は最強戦のサバイバルマッチだ。
ここのところはプロでもないのにあちこちの大会に呼ばれる。Mリーグの観戦記は好評だし、いつのまにか近代麻雀本誌にも戦術コラムを連載している。これらをまとめた本もまた出るだろう。
麻雀人生を送る身としては、めちゃくちゃ充実している。プロとして芽が出なかった頃を考えると信じられない光景だ。
しかし、肝心の麻雀の方はどうだろう。
オンライン麻雀「天鳳」の成績がここ数年かなり悪化している。決して手を抜いているつもりはない。
周りのレベルが上がったのか。
老いによる能力衰退か。
たまたまの偏りか。
もしくはそれぞれがちょっとずつ作用してのことなのか。
何1つわからないのが麻雀の怖いところだ。
ハッキリ言う。
この業界、麻雀の実力が全てだ。麻雀が強いやつは何してもうまくいくし、麻雀が強いやつはモテる。(麻雀界隈の相手限定だが)
いやいや「容姿」「しゃべり」「文章力」などいくらでも自分を売り出す方法はある、と人は言う。たしかにそうなのかもしれない。でも、自分はそれらのオプション要素を磨きつつも、やはりベースは「麻雀の強さ」で生きていきたい。できることなら向こう見ずだったあのころのように「最強」を目指したい。
なぜならそれは、麻雀を打ち続けるための大きなモチベーションになるからだ。
「天鳳」という、ホームグラウンドでも頂点を極めることができず、プロでもアマでもないような半端な立場でずっとくすぶっている。その一方で、戦術コラムや観戦記を偉そうに書かせてもらっている。私はこの板挟みにずっと苦しんでいた。
「潮時か…」ふと、そんな考えが頭をもたげる。
今回の対局で、見せ場なく負けたり、力量差を感じるようであれば、もう表舞台に出ない方が良いのかもしれない。
私にとって麻雀の「負け」は、金銭でもptでもなく、魂を取られるようなイメージだ。天鳳でも負けが込むと、こんなことを考えてしまうくらい、自然と心は荒んでいくのだ。
「サバイバルマッチ」
まさしくその名にふさわしい舞台じゃないか。
Mリーグの裏だろうと、ファイナルの前座と言われようと、俺はこの戦いに全てを賭ける。
お婆ちゃんが膝にかけていたブランケットをかばんにしまった。
着いたのだ。決戦の地、東京に。
【会場にて】
こんなことばかり考えていたので、昨夜は興奮して一睡もできなかった。一応横になって目を閉じてはいたが、全く眠れないのだ。
会場に着いた私は、めちゃめちゃ眠いわけではないが、頭にモヤが掛かっている感覚があった。これはマズいと思い、控室においてある畳をひいて、アイマスクをして横になったのだった。
2時間くらい経っただろうか、全選手が揃い、メイク→リハーサル→場所決め…粛々とスケジュールはこなされていく。この会場自体は4・5回来ているので慣れたものだ。
そしていよいよ本番の時が来た。
表で
こんなことやっているときに、舞台裏へ集合がかかる。
煽り動画が流れると緊張感はマックスに。
井出さんが最高なんだけど(笑)
Mリーグにも1人くらこういうヒール?がいた方がより盛り上がりそう。
これもオプション要素ということで(笑)
さて、私はこの対局を迎えるにあたり、参考にした打ち手が1人いる。
山越貴広さんだ(「麻雀勝ち確システム」著者)。来月発売の近代麻雀に山越さんの戦術を大きく取り上げる予定なのだが、その際、山越さんの最強戦での戦いを隅々まで検証した。「参加率」特にリーチ重視のスタイルは、赤なし麻雀の1つの答えなのではないかと思わせる。山越さんの相手はアマチュアが多いので、プロ3人に山越戦術がそのまま通用するとは思っていないが、多いに役立つのではないのかと感じたからだ。
【対局開始】
具体的に見ていこう。
東1局
私はこんなしょぼめの配牌から…