思い出すと蕁麻疹が出てくる…はじめての離婚“百恵ちゃん、地獄の期間工時代編”【百恵ちゃんのクズコラム】VOL.28

思い出すと蕁麻疹が

出てくる…はじめての離婚

“百恵ちゃん、

地獄の期間工時代編”

【百恵ちゃんのクズコラム】

VOL.28

 

隠し借金

失禁未遂事件を経て、会社を辞める決心がついた百恵ちゃんは当時の結婚相手にその旨を話すと、

「それは困るよ〜」

という返事が返ってきた。意味がわからずポカンとしていると大量のハガキを見せてきた。それは水道や携帯電話の請求書の様な見開きになっているタイプのものだった。

「他人の郵便物を見てはいけない」というおばぁちゃんからの教えをきちんと守っていた百恵ちゃんは怪しい郵便物に気が付いてはいたが放置していた。更に時々非通知から電話が掛かってきていたことにも気付いていたが百恵ちゃんは普段からパートナーに対しあまり興味を持たないため特に何も思っていなかった。

そしてこの時、そのハガキや電話が借金の督促だったということを告げられた。

なぜそれまで気が付かなかったのかというと給料日になるとお互いに引き落としの分以外のお金を全て口座からおろし、家の中にドンっと置いてそこから自由に持っていくという斬新かつフリースタイルの家計システムを採用していたからだった。
今考えると本当に頭が悪いな、と思う。

そんなこんなでダマ借金の存在が発覚し、百恵ちゃんは工場からの退路を絶たれた。

正直、退路を絶たれてからは仕事は楽になった。諦めの境地に達したというのかはわからないが百恵ちゃんは地獄の様なライン作業も日常の一部として受け入れ始めていた。その間にも新しい期間工が入ってきては辞め、新入社員が来なくなってしまったりもしたがそれもまた日常の一部でもあった。

その頃、何故か徐々にお風呂に入らなくなっていた結婚相手のお風呂入らない記録が2週間を越えた。嘘だろう、と言われるが本当のことなのである。髪の毛がベタベタになっても洗わずに放置しているとある日サラサラになる瞬間があるという人体の不思議も発見できた。

そして獣臭に耐えきれなくなり厳正な家族会議を行った結果、

「登別温泉になら入ってもいいよ」

という発言を受けて百恵ちゃんの休日は片道1時間を掛けて登別温泉に獣臭のする成人男性を送り込むという日課が生まれた。この頃のことは書いているだけでも蕁麻疹が出てくる。

それからも事あるごとに

「生まれ変わるから」

という言葉の元、輪廻転生を繰り返していた彼だったがレベルアップする一方だった。
その度百恵ちゃんの何度も「離婚したい」という願いは涙ながらの土下座にかき消されていた。あまりにぶっ飛んだ人と喧嘩しているとどっちが加害者でどっちが被害者なのかわからなくなるのである百恵ちゃんの心が狭いだけなのかもしれないとさえ思ったこともあった。

しかし終わりの時は突然やってきた。
当時、全く同じ携帯を使っていたのだが間違えて相手の携帯を手に取ろうとした瞬間にビーチフラッグさながらにはぎ取られたのだ。少しの静寂のあと、開戦した。もし近くにホラ貝があったら思いっきり吹いていただろう。

まず「離婚するか、携帯を見せるか」の二択を提案すると渋々携帯を差し出してきた。この時百恵ちゃんは人生で初めて人の携帯の中身を見た。彼は複数のマッチングサイトに登録し借金まみれだというのに毎回何千円もの課金をしていた。

「いや、離婚めちゃくちゃ前向きじゃん」

というツッコミを入れてしまった。あっさりターンエンドである。

初見の相手に対するメッセージで

「実はバツイチの28才です(笑)👍よろしく(笑)👍

という全く笑えない文面を見たときには添削したい気持ちに駆られたが我慢した。新たな被害者を生んではいけないと思ったのだ。

その後、離婚のための様々な行動を婚活と呼ぶなどふざけてはいた百恵ちゃんではあったがあまりのストレスで1ヶ月で7キロも痩せた。
夜勤明けに市役所に離婚届けを出した時は開放感のあまり公道で100キロ出してしまった。もう時効だと思うので許してほしい。

あの時運転しながら放った「イェーイ」は正真正銘の曇りなき「イェーイ」だったと思う。
本当の意味での百恵ちゃん大勝利の瞬間だったのだ。

百恵ちゃん23歳の頃である。

この時百恵ちゃんはこれからは工場で働きながら一生一人で生きていくことを誓った。

 

次回は5月7日(木)午前0時更新予定‼︎

【田渕家登場人物紹介】

父 コージ:元陸上自衛隊幹部高卒ながら佐官まで登り詰めるも「髪型が奇抜すぎる」という理由で100年に1度あるかどうかの異動の内示取り消しをされた経験がある。現在は三度目の暖かな家庭を築いている。

・母 イクコ:美容師。美容室を自宅で開業するもパチンコにハマり開店休業状態を約20年続けた猛者。おそろしいほど料理が下手。ツーブロックにしたことがある。近況を知らせる連絡では年下のペンキ屋さんとお見合いをしたらしい。

・姉 タエ:無職。1度も定職に就いたことがなく家賃を滞納してはクビが回らなくなりお父さんに払ってもらいに帰ってく るお調子者。過去に大きな交通事故に遭いウン百万円もの保険金を手にするが全てホストクラブに費やした経験がある。

・エリー:田渕家の飼い犬。詐病のプロ。足をひきずったり弱ったふりをしては人間に甘やかしてもらう。動物病院で『至って健康』という診断をされるとそれまでの弱りっぷりを忘れ、凛々しい顔で帰ってくる。趣味は父の顔に噛みつくこと。オスだが思いつきでエリーと名付けられた。

・マイちゃん:母親同士が同じ美容師で仲が良く、物心がつく前から一緒にいた幼なじみ。かなりの美人だが偏差値は2くらいしかない。現在は3人の子供を産み働きながら育てているが一度も結婚したことはなく、更に子供たちは全員父親が違うという斬新なファミリーを築いている。そして最近ロシア人の子供を産んだばかり。

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