南4局。多井はペンで即リーチ。形を変える暇はない。なんでもいい、とにかくリーチを放って加点を狙う。
しかしは山になく、なんと9回目の流局となった。多井と茅森の差が少し縮まる。
南4局1本場。17局目に入るロングゲームだ。
若干状況が変わったのが朝倉だ。リーチ棒が出たため、跳満ツモで2着が見える。
逃げ切りを図りたい茅森だが配牌はイマイチ。
最も手がよかったのは内川。満貫ツモで2着に入ることができる。三色になれば条件を満たせそうだ。
先にテンパイが入ったのは朝倉だった。のシャンポン待ちでいたところにを引く。これでリーチピンフドラ赤、あとは裏が乗るかツモるかイーペーコーがつけばといった感じで跳満ツモが見えてきた。
「(とが)いるかどうか確認しますか?」(実況の小林未沙さん)
「いや、様子を見ましょう」(渋川プロ)
トップ目の茅森は朝倉のリーチに打つというのも手なのだが、跳満を食らうと多井との順位が逆転する。朝倉が跳満ツモで2着という条件なのもあり、非常に打ちづらいのだ。よって「見守るしかないんじゃないかな」と渋川プロも解説する。
さて多井だ。手格好は十分だが端の牌が通るかどうか。もも朝倉に通っていない。
ここはを切って勝負した。見るからに親も押してきていることがわかる。
困ったのは茅森だ。理想は親が2着キープでオリてもらうことだったのだが、を押してくるとなると、自らの立場がまだ危ない。ここは朝倉の現物である打を選択。
も押していく多井。もうなんでも切っていきそうな雰囲気だ。たとえ朝倉の当たり牌を掴んだとしても……。
茅森の手が止まった。もう朝倉への現物がなくなっている。パニックになりそうな状況だが果たして何を切るのか。
と、ここで実況席から衝撃の事実が明かされた。
「渋川さん、視聴者の皆さんはやっぱり枚数気になりますかね」(小林さん)
「が0枚の話をしようっていうんですかまさか」(渋川プロ)
!? それじゃあ多井が有利ではないか。なんと朝倉のリーチは不発……。
「ただ、ひとつ朗報があって、多井選手の捨て牌にがあるんですよ。多井選手がリーチをしたら茅森選手はを打つ可能性があります」(渋川プロ)
「なんなら今打つ可能性もあります。多井選手に鳴かせたくないんで」(渋川プロ)
「茅森の手が止まっているぞ」(小林さん)
約1分7秒。茅森が決断までにかかった時間である。この中で茅森はすべてを掌握したかのように、ある牌を切った。
だ!
結果、朝倉への放銃となった。リーチピンフドラ赤で満貫。狙い通りの放銃だったが、もし裏が2枚乗っていたら逆転負けという賭けだった。
茅森は30800点という微差でトップを獲得。最後の差し込みの判断は見事だった。
そういえば、ファイナルシリーズ3日目でも同チームの和久津が差し込みを決めてトップをもぎ取っていた。何か通じるものがあってならない気がするのは気のせいだろうか。
長い間羽を休めていた天才は、最後の最後で不死鳥のごとく舞い上がった。
どうだろう、欠けていたピースが埋まったかのようである。全員がしっかりと結果を残したフェニックスは、優勝にふさわしいチームといってもいいのかもしれない。
さあ最終日。泣いても笑ってもこの日ですべての運命が決まる。皆さんも見届けましょう。