チームの命運がかかる決死の差し込み! 天才・茅森早香の土壇場力【熱論!Mリーグ/FS5日目】担当記者:山﨑和也

南4局。多井はペンで即リーチ。形を変える暇はない。なんでもいい、とにかくリーチを放って加点を狙う。

しかしは山になく、なんと9回目の流局となった。多井と茅森の差が少し縮まる。

南4局1本場。17局目に入るロングゲームだ。

若干状況が変わったのが朝倉だ。リーチ棒が出たため、跳満ツモで2着が見える。

逃げ切りを図りたい茅森だが配牌はイマイチ。

最も手がよかったのは内川。満貫ツモで2着に入ることができる。三色になれば条件を満たせそうだ。

先にテンパイが入ったのは朝倉だった。のシャンポン待ちでいたところにを引く。これでリーチピンフドラ赤、あとは裏が乗るかツモるかイーペーコーがつけばといった感じで跳満ツモが見えてきた。

「(が)いるかどうか確認しますか?」(実況の小林未沙さん)

「いや、様子を見ましょう」(渋川プロ)

トップ目の茅森は朝倉のリーチに打つというのも手なのだが、跳満を食らうと多井との順位が逆転する。朝倉が跳満ツモで2着という条件なのもあり、非常に打ちづらいのだ。よって「見守るしかないんじゃないかな」と渋川プロも解説する。

さて多井だ。手格好は十分だが端の牌が通るかどうか。も朝倉に通っていない。

ここはを切って勝負した。見るからに親も押してきていることがわかる。

困ったのは茅森だ。理想は親が2着キープでオリてもらうことだったのだが、を押してくるとなると、自らの立場がまだ危ない。ここは朝倉の現物である打を選択。

も押していく多井。もうなんでも切っていきそうな雰囲気だ。たとえ朝倉の当たり牌を掴んだとしても……。

茅森の手が止まった。もう朝倉への現物がなくなっている。パニックになりそうな状況だが果たして何を切るのか。

と、ここで実況席から衝撃の事実が明かされた。

「渋川さん、視聴者の皆さんはやっぱり枚数気になりますかね」(小林さん)

が0枚の話をしようっていうんですかまさか」(渋川プロ)

!? それじゃあ多井が有利ではないか。なんと朝倉のリーチは不発……。

「ただ、ひとつ朗報があって、多井選手の捨て牌にがあるんですよ。多井選手がリーチをしたら茅森選手はを打つ可能性があります」(渋川プロ)

「なんなら今打つ可能性もあります。多井選手に鳴かせたくないんで」(渋川プロ)

「茅森の手が止まっているぞ」(小林さん)

約1分7秒。茅森が決断までにかかった時間である。この中で茅森はすべてを掌握したかのように、ある牌を切った。

だ!

結果、朝倉への放銃となった。リーチピンフドラ赤で満貫。狙い通りの放銃だったが、もし裏が2枚乗っていたら逆転負けという賭けだった。

茅森は30800点という微差でトップを獲得。最後の差し込みの判断は見事だった。

そういえば、ファイナルシリーズ3日目でも同チームの和久津が差し込みを決めてトップをもぎ取っていた。何か通じるものがあってならない気がするのは気のせいだろうか。

長い間羽を休めていた天才は、最後の最後で不死鳥のごとく舞い上がった。

どうだろう、欠けていたピースが埋まったかのようである。全員がしっかりと結果を残したフェニックスは、優勝にふさわしいチームといってもいいのかもしれない。

さあ最終日。泣いても笑ってもこの日ですべての運命が決まる。皆さんも見届けましょう。

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