「80点には届かねど……」
4連闘多井が目指したのは
読みと守備の
パーフェクト・ゲーム
文・渡邉浩史郎【火曜担当ライター】2024年2月6日
第2試合
東家:茅森早香(セガサミーフェニックス)
南家:二階堂亜樹(EX風林火山)
西家:多井隆晴(渋谷ABEMAS)
北家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
「もう少しいい内容で、自分の中で80点90点の麻雀を打ちたかったんですけど……」
自身の4連闘目を1着で迎えたこの男は神妙な面持ちでそう語った。
凡人から見れば、やはり多井さすが隆晴といった半荘のようにも思えたものだが……。
特に目を引いたのはやはり【南4局】の逆転であろう。
マンガン出和了り、もしくは5200以上のツモ直でひっくり返る局面。
ドラを切ってマンズを手広く構えたことで……
最終形のこの聴牌にたどり着く。
の三面張で、ダマテンでもツモ無条件・であればどこからでも無条件の聴牌だが多井はリーチに踏み切った。
ここで大事なのは他家3人の点棒状況とそれに伴う思考。
亜樹と茅森は1400点差の3着4着のため、和了や聴牌ノーテンで順位点20000点がひっくり返る。
ラス目の亜樹は当然押さざるを得ないことが多いし、それを見た茅森も聴牌を組まなければならない。二人が前に出ないといけないと考えると、多井のリーチによって下がる和了率は普段よりも低く見積もっていいだろう。
そして一番大事なのはトップ目園田の行動だ。
このまま仮に多井が黙テンに構えるとどうなるだろうか。
例えば茅森から仕掛けが入ったとする。ドラのが一枚切られている今、園田はまず間違いなくアシストに行くだろう。しかし茅森の現物にある多井の当たり牌は、園田がアシストで打ち出す牌ではない。
このアシストを自由にやらせたくないため、また何より形が三面張で十分和了りが見込めるということで多井はリーチに踏み切った。
結果、イーシャンテンから押さざるを得なかった亜樹のを捉えてのトップ獲得となった訳だが……
多井が気にしていた、減点ポイントの一つは【東3局】。
二度のマンガンの和了りを決めて、親番6巡目でこの牌姿。この手を決めれば最早この半荘のトップは堅いというところ。
変則的な河をしていた園田が第二打のところ、のポンから発進する。
役牌暗刻の手、というよりは手役を狙っているような河。トイトイが多井の脳に色濃く浮かび上がる。
そこに亜樹がをアンカン。新ドラ、打としたところで……
多井の手が止まる。そして……
チーして打。で和了れるタンヤオの聴牌を取った。
多井目線で考えてみよう。
まずは園田のトイトイの候補。多井目線から見て場に切られていない生牌はの8種類。このうちとについては固めて持たれていると、多井の手のターツがきつくなる。園田の手の中に刻子並びに刻子候補が最低4つあると考えると、かどちらかは持たれていておかしくない。
ではこのをチーして待ちになるはどうだろうか。は単純に自身が二枚持っていることで園田が持っている可能性が低い=切ってくれやすい牌。そしても、第二打のが少しおかしい(からを切っていることになる)ため、持っていることは少なそうである。食い延ばしで盲点になりやすいことも含めて、狙い目のに見えるのだ。
しかし実際には……
多井の切ったを園田がポン。数巡後に開かれた手牌にはの影も形もなかった。
が園田からツモ切られやすいという読みこそ当たっていた。
しかし結果からすれば親が二回残っているライバル候補に急所の打点上昇牌を鳴かせてしまい、マンガンの親被りという最悪の結末を迎えてしまった。
本人の感触的にも後に引きずるものがあったというこの局。
その後園田に一度は追い抜かれるも最後は逆転するわけだが、その中で多井らしさが光っていたのはやはり【南1局】だろう。
配牌から大きく受けを意識した第一打切りから……
少し形が出来上がるも、亜樹のツモ切りを挟んだ対子落としを見て再度手を狭める選択。