ちなみには誰にも通っていない牌。残した意図は迷彩以外に他ならない。
おそらく沢崎の中でのイメージは、「この手は自力で役牌を暗刻にするしかアガリの道はない。役牌が暗刻になった時、待ちのほぼツモしか狙えないマンガンよりも後の引き、切れ方次第で他家からのロンアガリが狙える跳満のほうが価値が高い」ということなのだろう。
沢崎の迷彩ここに極まれり、道なき道を切り開く覇道の恐ろしさが垣間見えた局面である。
しかし沢崎の覇道の恐ろしさはこれだけにとどまらない。が合わせられず、でのアガリがきついと見るや、引いてきたを手に残してフリテンを受け入れる体制に。
これが上家に止められるはずもなく、チーして聴牌。
結局この局、一人聴牌で3000点の収入を獲得。
この形を見せられた同卓者、Mリーガー、そして視聴者すべてに今後の沢崎の仕掛けを読めなくさせる、まさにマムシの毒が回るかのような一局であった
高宮の王道「最終親番まっすぐ手順」
【南3局1本場】
下二人が平たいラス前、高宮の親番。
9巡目でこの形。高宮はここから……
まっすぐ打!!
こうしておくことでソウズの中頃にくっついた時の良形と打点こそ失うものの
Ⅰ.一手先で完全一向聴に受けられる
Ⅱ.中盤を過ぎて他家全員に危険なを先に打って安全な九を残すことができる
Ⅲ.ペンリーチになった時に宣言牌がよりも待ちが盲点になりやすい
Ⅳ.ドラがということもあり、黙テン高打点に打ちたくない他家(亜樹、園田)の手の進行を抑えられることがある
と上に挙げたようなメリットを得ることができる。
点棒がない親番としては一打で守備面と攻撃面、そしてプレッシャー面のすべてを兼ね備える、まさに王道の一打といっていいだろう。
この半荘、いや今シーズンの今までを振り返っても、高宮は守備に回される場面が多かった印象がある。しかしその中でも過去シーズンで見せた麻雀の攻めの王道たるまっすぐ手順・リーチ戦術は高宮の中に確かに生きていることがうかがえる場面であった。
亜樹の王道「状況を的確に見透かした黙テン」
【東1局1本場】
話は東1局にさかのぼる。
親の沢崎がWポン。
チー。
引きであっさり聴牌。ここはシャンポンに受けずに両面とした。
しかしこれがなかなかアガれず。
ここに追いついたのが亜樹。ドラを暗刻にした三面張聴牌を……
ダマにした!
この三面張、実際にはが河に四枚出ているので両面なのだが、沢崎に通っていない待ちである以上、リーチに踏み込んで少しでも自分の打点を高くするというのも自然だ。なぜ亜樹は黙テンにしたのだろうか?
その理由の一つは沢崎の待ちが限定されすぎたことであろう。
沢崎に通っていない両面筋は、、のみである。そもそも通っていない牌の種類で数えても、、、、、、、、、、の11種類だけである。
残りツモ番も少ない中で出アガリ跳満・ツモって裏ドラ一枚で倍満にするためだけにリーチをして、それらの危険牌で回れる選択肢をなくすのは早計だという判断は、東発点棒が平たい状況においては得心するところだ。
そしてもう一つの理由は園田の存在であろう。
園田は前巡、小考して沢崎に通っていないを切ってきている。通っていない牌とはいえ、このはが4枚見えてが通っていることから、シャンポンでしか当たり得ないうえに手牌進行上もほぼ当たらない牌である。
とはいえ園田が手牌から現物を抜いてこないということは、まだ形を崩していないということである。仮に園田が手牌を崩していれば、万全を期して高宮のように現物の連打となるはずだからだ。
これは園田という打ち手の傾向からも伺える。ぎりぎりまで粘り、読みを入れる。粘ったことが功を奏して最終手番で危険牌が安全牌やノーチャンス・ワンチャンスとして切れるようになり、聴牌を入れる。そんな場面を我々視聴者は何度も見てきただろう。
亜樹はこの一打から園田がまだ手牌を崩していないこと、そして園田が仮に何らかの情報で沢崎の待ちを搾れるようなことがあれば、がこぼれる可能性があると考えて黙テンにしたのだ。
結果はすぐにをツモって3000/6000。
理がある王道の黙テンで得たリードからさらに得点を重ねた亜樹が、この半荘のトップとなった。
渋川プロの予言通り、王道・覇道の打ち筋が飛び交ったこの一戦。そういえば最近Mリーグでは王というワードが飛び交っていた記憶があるがきっとこのことを指していたのだろう。さて次の二戦目の出場選手は……
To be continued……