次局、亜樹が2600は2700オールツモ。
松本をハネ満ツモ圏内に捉える、大きなアガリだ。
逆に松本としては、終わると思っていたであろう試合が終わらなかっただけに、どこか不穏なものを感じていたかもしれない。
南4局2本場。
各者に2万点ほど差がついている状況であり、寿人、近藤としては中途半端な手ではあまり戦いたくない状況だ。
しかし松本としては、ここで亜樹を自由にさせてしまえば、自身のトップすら脅かされかねない。
手は仕掛けられる形。
ならば、最後は自分で掴み取る。
松本は4巡目のからポン、続けてもチーして手を進める。
そして、9巡目にテンパイ。
待ちは悪いが、とにかくスピードで押し切る構えだ。
恐れていた亜樹のリーチが来るが・・・
最後は亜樹のアガリ牌でもあったをツモ。
自らの力でリードを守りきり、全21局の長期戦を制した。
確かに、親の役満ツモはこれ以上なく大きいアガリだった。
しかし、大量リードがあると言っても簡単に勝ちきれるほど甘いメンツではない。
そのことを、松本はひしひしと感じていたはずだ。
この試合はある意味で、これまで以上に難しい戦いとなったのかもしれない。
勝利に対する充実感か、あるいは自身を覆っていた重圧から解き放たれたからか。
試合後の松本の顔は、いつも以上にすがすがしく見えた。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。