それは不死鳥たちの決意表明 近藤誠一、意志の力で呼び込んだ逆転勝利【Mリーグ2020観戦記2/4】担当記者:東川亮

次巡、近藤がを引き入れ待ちテンパイ。

意を決し、を打った。

高宮の最終手出しのそばだが、声はかからない。

それを確認し、近藤が肺に空気を送る。

ただの一打に、どれほどのエネルギーを費やしているのだろうか。

遅れて内川もテンパイ。

しかし、待ちのカンはもう山にはない。

もともと引き気味だったたろうは、1枚切れのに続き、こので手を崩した。

事実上のギブアップだろう。

そして、それが最もしやすい立場にある。

 

高宮はまだテンパイしない。

すでに山にはテンパイできる牌が残り少なくなっている。

 

内川は粘っていたが、を引いて頭のをトイツ落とし。

同点のたろうがツモ切りの後に手出し、さらに高宮の切ったを手出しということで、オリ気配を感じたのだろう。

近藤が前に出ていることが明白な以上、これ以上は立ち向かえない。

あとは、流局での同点1着を祈ることしかできない。

二人が戦線を離脱、後は近藤と高宮の勝負。

近藤がギリギリと牌を絞る。

ピンズだ。

既に近藤が2枚切っているが、高宮もそこから手出しを入れており、安全とは言えない。

近藤が静かにを置く。

実はこれで、高宮がアガるために必要な牌は全て山から消えてしまった。

近藤にも、内川がオリたことは分かっているだろう。

勝つためには、この局でツモるしかない。

残り2巡、アガリ牌はがたった1枚。

近藤の左手に、この日一番の力がこもった。

「ツモ」
タンピンツモ赤ドラ、2000-4000は2100-4100。
3度の放銃にも折れず、近藤は勝った。
苦しい状況から成し遂げた逆転劇は、たとえたたき落とされても必ず蘇るという決意表明。
近藤の左手が生んだ熱を力とし、不死鳥たちは立春の空へと再び羽ばたく。
たどり着けなかった約束の地を目指して。

「生還しました。生きた心地しないよ、もう」

控え室に戻った近藤がぽつりとつぶやく。

流局ゼロ、わずか10局という1戦ではあったのだが、その言葉と疲労困憊の表情がこの一戦の重さと苦しさを物語っていた。

極上のプレッシャーとカタルシスが渦巻く、極限の戦い。。

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