和久津がこの9種10牌の配牌から元気にを切り出して
するするっと国士無双のイーシャンテンまでたどり着いた!
一方の沢崎はツモ切りを繰り返し、ドラとを入れ替えたところで…
をツモってきた。
思い切ってドラのを切るか、それともを切るか。
沢崎の選択はそのいずれでもなかった。
じっと打!
「じっと」というのは将棋解説でもよく使う言葉であるが、リーチのみになる受けを拒否し安易にドラを切らなかったこの打は「じっと」というイメージにふさわしい選択だと思う。
そうこうしているうちに
和久津が国士無双テンパイ!
ABEMAのスイッチャーがしきりに和久津の顔を抜き出す。
待ちのは山に1枚である。
セガサミーとしてはここでの役満は本当に大きい。
さらに同巡、沢崎もテンパイ。
和久津の入り目である発をビシッと切って、じっとヤミテン。
「じっと」気に入った。
次に
をツモってきたと思いきや…
「リーチ…!」
野太い声と共に牌を横に曲げる。
あのときに切ったのおかげで、カン待ちが少し盲点になっている!
沢崎のも和久津のも山に1枚ずつ。
どっちが勝つのか--
勝負は一瞬だった。
挟まれる格好になった瀬戸熊がここからを切った。
間一髪、リーチ一発イーペーコーの5200のアガリ!
もしあそこでを切っていなかったら。
もしリーチに踏み切っていなかったら。
たらればの話になってしまうが、和久津の役満が飛び出してもおかしくはなかった。
「役満打ったら…冬眠ですね」
昨年刊行された著書「沢崎誠の強すぎる麻雀経験論」の中で沢崎は、シビアな経験論と共に「せっかく大舞台で打たせてもらうんだから麻雀は楽しまなきゃ」と、楽しむことについて何度も語っていた。
たしかに沢崎は昨年のプレッシャーのかかる場面でも、楽しむことを忘れておらず、時に微笑むこともあった。
沢崎誠。
前原同様に日本プロ麻雀連盟の初期から活躍するベテラン雀士。
昨シーズンの活躍は記憶に新しいが、今シーズンは調子を落としている。
「相手の調子はどうか」
「自分の河はどう映っているのか」
を重視しながら、ここぞというところで踏み込んでいくスタイル。
周りからは信じられないように見える打牌も、沢崎自身は「至って普通ですよ」と受け流す。
前原、沢崎…
還暦を超えてなお、Mリーガーとして活躍する姿に勇気をもらう。
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私のフォロワーの中に医者がいる。
その医者は、今の仕事を辞めて麻雀プロになってMリーガーを目指そうか迷っている、と言っていた。
Mリーグにハマったきっかけを聞くと「沢崎さんや前原さんの活躍を見て、勇気をもらった」と言う。
これには驚いた。
ファンに夢を与えているのは、萩原・岡田といったスターだけでも、滝沢のようなイケメンだけでもないのだ。
たしかに中年男性である私も、沢崎・前原の姿を見るとまだまだ頑張らないといけないな、と励まされることが多い。