「俺たちの間には、卓と麻雀牌しかなかったよな」 盟友・前原との息詰まる熱戦を、沢崎誠はどう切り抜けたのか【Mリーグ2020観戦記3/2】担当記者:ZERO

和久津がこの9種10牌の配牌から元気にを切り出して

するするっと国士無双のイーシャンテンまでたどり着いた!

一方の沢崎はツモ切りを繰り返し、ドラを入れ替えたところで…

をツモってきた。

思い切ってドラのを切るか、それともを切るか。

沢崎の選択はそのいずれでもなかった。

じっと打

「じっと」というのは将棋解説でもよく使う言葉であるが、リーチのみになる受けを拒否し安易にドラを切らなかったこの打は「じっと」というイメージにふさわしい選択だと思う。

そうこうしているうちに

和久津が国士無双テンパイ!

ABEMAのスイッチャーがしきりに和久津の顔を抜き出す。

待ちのは山に1枚である。

セガサミーとしてはここでの役満は本当に大きい。

さらに同巡、沢崎もテンパイ。

和久津の入り目である発をビシッと切って、じっとヤミテン。
「じっと」気に入った。

次に

をツモってきたと思いきや…

「リーチ…!」

野太い声と共に牌を横に曲げる。

あのときに切ったのおかげで、カン待ちが少し盲点になっている!

沢崎のも和久津のも山に1枚ずつ。

どっちが勝つのか--

勝負は一瞬だった。

挟まれる格好になった瀬戸熊がここからを切った。

間一髪、リーチ一発イーペーコーの5200のアガリ!

もしあそこでを切っていなかったら。
もしリーチに踏み切っていなかったら。

たらればの話になってしまうが、和久津の役満が飛び出してもおかしくはなかった。

「役満打ったら…冬眠ですね」

昨年刊行された著書「沢崎誠の強すぎる麻雀経験論」の中で沢崎は、シビアな経験論と共に「せっかく大舞台で打たせてもらうんだから麻雀は楽しまなきゃ」と、楽しむことについて何度も語っていた。

たしかに沢崎は昨年のプレッシャーのかかる場面でも、楽しむことを忘れておらず、時に微笑むこともあった。

沢崎誠

前原同様に日本プロ麻雀連盟の初期から活躍するベテラン雀士。
昨シーズンの活躍は記憶に新しいが、今シーズンは調子を落としている。

「相手の調子はどうか」
「自分の河はどう映っているのか」

を重視しながら、ここぞというところで踏み込んでいくスタイル。

周りからは信じられないように見える打牌も、沢崎自身は「至って普通ですよ」と受け流す。

前原、沢崎…

還暦を超えてなお、Mリーガーとして活躍する姿に勇気をもらう。

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私のフォロワーの中に医者がいる。

その医者は、今の仕事を辞めて麻雀プロになってMリーガーを目指そうか迷っている、と言っていた。

Mリーグにハマったきっかけを聞くと「沢崎さんや前原さんの活躍を見て、勇気をもらった」と言う。

これには驚いた。

ファンに夢を与えているのは、萩原・岡田といったスターだけでも、滝沢のようなイケメンだけでもないのだ。

たしかに中年男性である私も、沢崎・前原の姿を見るとまだまだ頑張らないといけないな、と励まされることが多い。

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