やっぱり多井隆晴は強いんです! ケタ外れの勝率を証明する、1ミリの隙も見せない闘牌【Mリーグ2020観戦記3/5】担当記者:渡邊浩史郎

悪い、とまでは言い切れないが良くはない。

ハネマンをアガった後の表情とは思えないくらい泣きそうな顔の多井だが、これは決して配牌の悪さを悲しんでいるということではなく、この悪い手をどう料理するかを考えているのだろう。

悩んだ末に多井はから切り出していった。役牌は自身で使いたいところでもあるが、だけは東場の親が倍の恩恵を受けられる牌。安牌候補のと攻守兼用の、ターツ候補の数牌を残してWの先切りをする選択だ。

守備的ながらもしっかり形を作る多井。親の滝沢がドラのをツモ切った後もこのをポンしていった。守備的に牌とターツを残していったからこそ、この巡目にポン、打という形で都合安牌3枚を消費してしまってもアガり切れる・守り切れる手になっているのだ。

時を戻して、2巡目堀はこの手から切り。目先のシャンテン数を見るのではなく、後手で押し返しやすくなる安全牌と打点、それとほんのりの出アガリ率を上げる、三つの利点を持った先切りだ。

先切りがうまくいった形にこそならなかったが終盤に聴牌。高めドラの赤1両面をリーチと行く。

これが聴牌の入った親の滝沢から一発で出アガり。裏こそ乗らないが5200のアガリで多井・萩原に近づく。

【東4局】

またしても多井らしい一打が出る。

この形から切り。ドラのを使うか345の三色になるか以外はこの手に価値がないとでも言わんばかりのカンチャン固定。確かにこの手をまっすぐ進めていくとドラの、中張牌まみれの1~3向聴という形になって、守備力なんて皆無に近くなってしまう。

を引いて、アタマを壊す打は現状貴重な親の堀と滝沢への受け駒。ここで形を残すために切っていい牌ではないということだろう。

面子ができて初めて切り。ターツ落としを見せて自分の河で存在感をアピールする意図もあるだろうか。一連の打牌を見るだけで多井の放銃率の低さ・連対率の高さがわかるだろう。

さて、その裏で着々と手牌を進めていた堀がを引いて文句なしのマンガン確定リーチ。

そして淀みなくツモアガリ。裏こそ乗らないものの4000オールで多井と萩原を悠々追い抜いていく。

【南1局】

多井の1000点のアガリを挟んで南入。

親番の多井のそこそこいいくらいの配牌が……

9巡で赤赤ドラのピンフ聴牌!ドラを切って黙テン!チームポイント的にもこの半荘の点棒状況的にも黙テンが有力だろう。

しかし萩原のリーチが入れば……

追っかけリーチと行くしかないだろう!

このリーチ、今引いたドラのではなく手からを出す、いわゆる空切りでリーチとした。他家からすれば相当空切りに見える上に、空切りならそれまで黙テンにしていたということで打点がありそう。どう考えても安いわけがないリーチ。まさに卓上に戦慄が走った。

勝負所で強い多井。これを一発でツモ!リーチ・一発・ツモ・ピンフ・赤・赤・ドラの6000オールで萩原だけでなく堀までも突き放す!

【南1局1本場】

多井の猛攻はこれだけにとどまらない。

ここから対子の切り。字牌は抑えられているが、まだマンズは抑えられていないと感じていたという多井。ならばということでマンズを余らせずに、抑えられているであろうを切っていく。

見事にのシャンポン待ち聴牌!

堀の高打点リーチが入るが……

多井が紙一重のツモアガリ!再びの6000オールで完全に引き離した!

【南1局】

チームポイント的にも王様タイムに入ったと言っていい多井。

一枚目のから積極的に仕掛けて、セミファイナル以降の戦いを楽にするための素点、ポイントを稼ぎに行く。

対照的なのは堀。二枚目のをスルーした。ここで安い仕掛けをすることは絶対に来る親の多井への安全度を失うだけでなく、貴重な親の多井への親被らせチャンスを失うことにもなる。比重は後者のほうが大きいだろうか、トップを取るためのスルーと見えた。

そして滝沢からリーチがかかる。

堀はベタ降りを選択するが……

多井は我関せずとばかりにをポンしてをプッシュ!

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