必ず船長に繋ぐ！ 時には果敢に攻め、時には堅実に守り抜いた石橋伸洋の熱き全霊【Mリーグ2020観戦記３／12】担当記者：渡邊浩史郎

リーチといった。フリテンとは言えもも見た目山にいそう、ならツモってハネマン。この手は決まればトップまで上り詰められる手だ。

しかし待っていたのは非情な追っかけリーチ。

そして跳満ツモ。魚谷はもちろん、石橋にとっても２着目白鳥の跳満ツモは嬉しくない。

【東３局】、魚谷の一回目の親番でも白鳥がやってくる。

魚谷は粘る。粘りに粘るが……

イーシャンテンでのこの放銃を、だれが攻められようか。

裏ドラが二枚乗って、どんどん下位チームに厳しい状況が続いていく。

そして【東４局１本場】……

過去最大級の試練が、訪れた。

親の白鳥の、あまりにも大きすぎる６０００オールツモ。

 

魚谷も石橋も、思わず同じ表情。素点が欲しいパイレーツもトップ必須のフェニックスにもあまりに辛い、今年のレギュラーシーズンの苦しさを体現するかのような、白鳥の大きな壁が立ちはだかった。

【東４局１本場】逆境ダイバー

トップまで60000点近く差をつけられてしまった魚谷。

とにかく打点が欲しい局面で、引いてきたのは安めも安めの。

しかし魚谷はリーチに踏み切った。白鳥も内川も石橋も前に出てきているこの局、ここで高め手替わりを待っているのは座して死を待つのと同意義。たとえどんなに安手でも、アガることでこの局の失点を防ぎ、次につなげようとする、自ら逆境に飛び込むリーチだ。

前に出てきた内川から出アガり。裏も乗らない１３００だが、魚谷がこの局出来ることすべてをぶつけた全身全霊の１３００だ。

【南１局】奇跡の価値は

南場の親を迎えた石橋。こちらは素点のある２着でもOKとはいえ、なんとしても加点して白鳥に食らいつきたい場面。

配牌はこちら。赤とドラを内蔵し形もなかなか整っている。

そして７巡目、タンヤオ確定のを引き入れた。4巡目に白鳥から出たをスルーし、門前での聴牌を果たす。そしてリーチ！

ダマも充分に考えられる手だが、石橋らしい強気の選択だ。是が非でもトップが欲しい。白鳥を捲ってやるという気迫が画面越しにも伝わってくる。

この時点では山に２枚。場に１枚見えた愚形にしては悪くないが簡単にツモれる枚数ではなく、石橋の河には次々と不要牌がツモ切られて行く。

（ダマにしておけば良かったか……？）

果たして石橋はそう考えただろうか。しかし麻雀にもしもなんて無い。石橋に出来るのは最善の選択を導く事だけ。そしてパイレーツファンに出来るのは石橋の選択を信じる事だけだ。

そして１８巡目、石橋の最後のツモ番には

彼の選択を肯定するかのようにが待っていた。

リーチ・ツモ・タンヤオ・赤・ドラ、そして裏裏、６０００オール。

キングと呼ばれた男が最終戦、奇跡の大まくりを見せるか。

【南１局１本場】終局に至るアガリ、そして

石橋がトップをまくるまであと１５０００少々。この親番はまだまだ落としたくないところだが……

内川とて個人MVP、そしてチームポイントがある。リーチ・ツモ・ドラの１０００/２０００の一本場のアガリ。

点数はさほど大きく無いが石橋に取っては南場の親を流されたのが痛い。これでこの半荘は最短であと３局。トップ白鳥との点差１６３００点をこの三局で捲らねばならない。

続く【南２局】での石橋の選択が面白い。ここから１枚切れのカン固定。を残して親への安全度を確保することで、「自分が高打点の手をアガる」ルートと「自分が放銃せずに親の聴牌、アガリ連荘で局数が増える」ルートの両方を残した。

もちろんこのを重ねるのも立派な打点の種。なかなかこのを捉えている人はいないだろう。

このは絶好の牌。当然のチーで、打点も安全度もある手牌を作り出す。

一方で３枚切れのカンの聴牌を入れていた魚谷が持ってきたのは。