(勝又さんは満貫確定しているのに対し、堀さんのリーチは安い可能性もある。だから勝又さんに通りそうなを切る手が無難だ)
(いや、もっといい手があるはず)
(勝又さんの仕掛けはこう)
(は…2度受けがあるかもしれない。
はどうだ?当たるとしたら、するとと持っていてをチーしたことになる。→→とターツ落とししていることから、この食い延ばしはない!)
こうした読みを持ってを切り、堀への放銃を回避した。
鳴き読みもそうだが、1巡前にを切って選択肢を増やしていたことも隠れたファインプレーだろう。
(俺のアガリ牌を食いとってからファインプレーを見せるのやめてな)
こうして一騎打ちとなった。
勝又のか
堀のかーー
決着はすぐついた。
「ツモ」
堀が静かに、しかし力強くを手元に引き寄せる。
裏ドラを乗せて20004000となった。
--堀慎吾の…そしてサクラナイツの反撃の狼煙が、ようやく上がったのだ。
その1ポイントを削りだせ
昨年「カオス」というテーマを掲げた今シーズンのサクラナイツのテーマは
「その1ポイントを削り出せ」
というものだ。
4位→2位と2年連続でファイナルに残り、着実に実績を積み上げてきた3年目のチームに、森井監督は「優勝を狙えるチームに仕上がった」と自信を深めている。
「とりあえず残ることが至上命題とされているレギュラーシーズン、セミファイナルシーズンですが、2年連続でファイナルで敗れ、優勝するためには決してレギュラーシーズンのポイントもおろそかにしてはいけないと感じました。」
「レギュラーシーズンの40ptがファナイルでは10ptになるわけですが、その10ptでも打ち方は変わり、有利不利は出てくる。だからレギュラーシーズンから1ptたりとも漏らさない構えで、今年こそ優勝を目指します。何より自信を持って優勝を狙えるチームになったと自負しております。」
森井監督がここまで自信を持っているのはやはりこの男の加入が大きいのだろう。
舞台は南3局。
復活の軍師・勝又、クレバー・白鳥と、三つ巴のトップ争いの渦中において
絶好のをツモリ、ドラのをスッとリリース。
親の白鳥にポンされたらタンヤオで緊急回避することも視野に入れている。
さらに
またしても絶好のをツモって打。目一杯には構えない。
が1枚見えていることもあるが、現状もも山にいそうに見える。
を先に切っておくことによる一発率上昇、マンズを残しておくことによる234・345・456の三色変化対応…この局はタンヤオのかわし手じゃなく、最低メンタンピンで決定打を狙う局だと認定したのだ。
狙い通りをツモった堀は
当然の打即リーチ!
なおじゃなくてを切ったのは、を2枚切っている白鳥に少しでもチーされにくい牌を選んだからだと思われる。
たとえを切ろうとを切ろうと、ほとんど結果には直結しない。
しかし、ほんの少しでも得と思われる選択を積み重ねることだけが打ち手にできることであり、堀慎吾こそがそれを淡々と遂行できる打ち手なのだ!
「その1ポイントを削りだせ」
サクラナイツファンの思いを乗せて、堀が勝負をかける。
堀という異分子を混入させることにより、内川が発奮し、岡田が自信を取り戻し、結果的に沢崎の負担は軽くなった。
3年目となったシーズン、4人とものびのびと本領を発揮でき、本気で優勝を狙えるチームへと変貌を遂げたのだ。
「ツモれ!」
チームメイトやファンが祈る。
その中で当の堀だけが他のことを考えていた。
(が出たら見逃そう)