本当の戦士に役満など要らぬ 【Mリーグ2021観戦記10/22】担当記者:越野智紀

本当の戦士に

役満など要らぬ

文・越野智紀【金曜担当ライター】2021年10月22日

Mリーグ2021(10/22第1試合)

「やれんのか?」

その選手がチームの勝ちに貢献出来るのか?魅力的な麻雀を打てるのか?などを数戦で判断するのは難しいことです。

なんだか品定めしているようで少し嫌な感じかもしれませんが、新しく加わった選手に対して特別に興味を持って見ている人は多いと思います。

今期から参戦となったKONAMI麻雀格闘倶楽部伊達朱里紗も、その対象の一人です。

伊達選手には『朱きヴァルキュリア』というカッコイイ通り名があります。

北欧神話に登場する半神・ヴァルキュリアは戦場で死んだ者の半分を選別し、その魂を死者の館に連れて行きます。

館に運ばれた死んだ戦士たちは終末戦争ラグナロクに備えて戦いと饗宴に明け暮れることになり、そこでは戦士たちに蜜酒を与える給仕となることがヴァルキュリアの役割です。

そして戦争が始まれば自ら連れてきて仕えてきた戦士たちとともに勇敢に戦います。

この説明を麻雀で例えるなら、捨てられた牌を活かしたり他家をアシストしたり前に出て戦ったりと自在型といったところでしょうか?

結構、伊達選手の雀風に合っていると思います。

Mリーグデビューからここまでの2戦は2着3着とまずまずの結果で、そのルーキーとは思えない肝の据わった雰囲気にその後の活躍を予感していた人も多数見受けられました。

そして3戦目となった金曜日の週末戦争Mリーグ。


今期初の女性一色となった試合の中で、伊達選手は半信半疑で品定めしていた人たちの不安を一掃させる見事な一局を見せました。

二度のリーチ成功で2,600オールと12,000をアガリ、トップ目で迎えた南3局1本場。

岡田選手のリーチを受けた親の伊達選手にツモれば役満四暗刻のテンパイが入ります。


まだ岡田選手への無筋の牌の種類も多く、ここも独特の鋭いリーチモーションでの勝負が見られるかと期待していたら伊達選手はダマテンを選択。


巡目が進んで、仕掛けた亜樹選手から強烈な【7マン】切りが入ります。

その後に掴んだ【5マン】は岡田・亜樹の両選手に対しての危険牌。


【5ソウ】が全部見えたことや亜樹選手の無筋開拓により待ちの候補が絞られて、相対的に【5マン】の危険度が跳ね上がっています。

残り巡目も少なくなったことで、自身のツモアガリ率も低下。

とは言うものの無筋の種類もまだ複数あり、自身はツモれば16,000オール。

押したとしても誰にも文句は言われないような手に見えましたが

「チームにトップを持って帰りたい」


役満達成よりチームのポイントを優先した伊達選手は、【北】を切ってツモり四暗刻のテンパイを崩します。


実際に岡田選手の待ちが【5マン】【8マン】

ロン牌を止めたことでスーパープレーが際立ち多くの人に称賛されましたが、真に絶賛される部分は四暗刻を逃す恐怖を乗り越えて降りた勇気と降りる未来を想定してダマテンに構えたところだと思います。

「今自分はこれが正しいと思って選択したんだから、もし裏目の選択が出ても気持ちでは負けないようにします。」

このABEMAプレミアムのCMでの言葉を体現し、強い気持ちで選択していく伊達選手。


今期役満第1号を目の前にしても昂らず、ルーキーとは思えない冷静沈着さでMリーグ初トップをゲットしました。

一方、この試合で2着になった亜樹選手は鳴き6局・リーチ0局。

引きつけてから鳴いたり後づけで鳴いたり何度も何度も鳴き選択を強いられながらも「まだ舞える」と状況に応じて華麗に舞い続けましたが、東3局1本場の時だけ


1巡目の【發】をスルー。


6巡目の【白】もスルーと、この局だけ突然鳴かぬ人に変身。

10巡目に【發】をトイツで落とすと


12巡目に【白】【西】のシャンポンでテンパイ。

【發】のトイツ落としにより字牌待ちが盲点になった上で、さらにダマテンと慎重の極み。


手が進まず撤退も視野に入れていた魚谷選手でも【白】では受けることが出来ず、ここが亜樹選手と魚谷選手にとっての分岐点の一局となりました。


(特徴的なゲームスタッツ)


(亜樹選手の捨牌を見つめ、全てを悟ったような表情を見せるマーメイド)


(完全武装で打った大量のリーチがかわされ続け、最後に一矢報いるも届かなかったアフロディーテ)


(「一番厄介な魚谷さん」の不調に安心する舞姫)

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