失敗は自分で挽回する ぶれず焦らず戦った、滝沢和典の修正力【Mリーグ2021観戦記11/15】担当記者:東川亮

失敗は自分で
挽回する
ぶれず焦らず
戦った、
滝沢和典
修正力

文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2021年11月15日

大和証券Mリーグ2021。
11月15日の第1試合には、滝沢和典が出場した。前回出場時の成績は4着。もちろん麻雀なのでなすすべなく負けることはどんな強者にもあるのだが、滝沢は試合を振り返り、「よくないプレーがあった、揺らいだ」と語っている。自らが失敗したと感じての敗戦は、やはり苦々しく感じるものだ。それを払拭するには、今度は自分の選択で勝利をつかむしかない。

第1試合
東家:萩原聖人(TEAM雷電)
南家:滝沢和典KONAMI麻雀格闘倶楽部
西家:松本吉弘渋谷ABEMAS
北家:園田賢赤坂ドリブンズ

東2局、先手を取ったのは松本。わずか3巡にして【3ソウ】【白】のシャンポン待ちリーチをかけた。ヒントが少なく、早い巡目なら形のいい者から【白】も出アガリできそう。

滝沢は親である程度まとまった形、安全牌もないのである程度は押していく。自分の手に赤もドラもなくて怖いのは事実だが、この手でオリるのはあまりに弱気が過ぎる。

うまくまわりながら、ピンフ高目三色のテンパイまでたどり着いた。打点の見返りが期待できるなら、戦う価値もある。ここはリーチを宣言する。

競り勝ったのは滝沢、高目でツモって裏1は理想的。6000オールで一気に優位に立った。

東3局、配牌から【白】【發】トイツの滝沢が、1枚目の【白】から仕掛ける。滝沢はあまり遠くて安い仕掛けを使わない打ち手。他3者はこの時点で既に警戒モードだろう。実際に滝沢の手は役役ホンイツ、MAXでは大三元まで見える。

松本としては1枚あった【發】もあまり切りたくはなかったはずだ。ただ、自身は親番で比較的形も整っている。手に置けば置くほど切りにくくなることを考えれば、離すならこのタイミングだった。

もちろん、滝沢はポン。松本も覚悟はしていただろうが、少し表情がゆがむ。

大三元の残る一種、【中】は山に3枚あった。その1枚目を滝沢が引き入れる。【東】を鳴いての【白】【發】【東】混一色小三元もハネ満ももちろん捨てがたいが、ここまできたら役満を見たい。

しかし、今この状況で最も役満をアガられたくない親の松本がピンフテンパイ。待ちの【1マン】【4マン】は場に3枚見えている上に滝沢の現物、打点もなく、そして何よりも絶対に【中】を切らないとするなら、ここでリーチはかけられない。

すぐに萩原から出アガリ。今シーズンのMリーグはなかなか役満が実らない。

その後、滝沢は先手を取られて苦戦する場面が続く。放銃こそ松本への2000点1回だったが、萩原のハネ満ツモ、園田の満貫ツモでジリジリと点数を削られた。苦戦の中でも何とか突破口を見いだそうとはしていたが、どうにもならないときはどうにもならないのが麻雀。本人としては、フラストレーションがたまる展開だったはずだ。

滝沢は南4局をトップで迎えたものの、持ち点は30000点まで減っていた。全員に現実的な逆転条件がある状況、ここでも親の園田が東を仕掛けで主導権を取りに行く。ドラの【白】がトイツで、逆転に必要な打点の種は十分だ。

アガリトップの滝沢はソーズ【8ソウ】【8ソウ】【9ソウ】から【9ソウ】を切って【8ソウ】をトイツ固定。ピンフよりもタンヤオ、後の仕掛けも考慮したように見える。

ピンズが3メンチャンと好形になり、カン【8マン】ターツ払い。かなりタンヤオが見えてきた。ピンズやソーズのリャンメンチーからはあまり動きたくはなかったと思われるが、マンズや【8ソウ】は仕掛けやすくなった。

直後に園田が3フーロ目。まだテンパイではないのだが、周りからはかなりやりづらいだろう。

1シャンテンになっていた滝沢が【1ソウ】をノータイムで押していく。【東】ポン、カン【2ピン】チー、【6マン】チーの園田の手は、満貫クラスの打点になっているパターンがかなり少ない。安くて1500、高くて5800あったとしても、仮に放銃したとしても次局にもう一度勝負をやり直せる。赤も絡まない【1ソウ】くらい、押せないでどうする。そんな主張が伝わってくるようだ。

園田から【8ソウ】が鳴け、滝沢が先んじてテンパイ。

同巡、園田もテンパイ。萩原、松本も打点が伴いそうな1シャンテンにはなっていたが、ここは滝沢と園田の真っ向勝負となった。

萩原、松本からロン牌がこぼれるケースもあり得た局面。しかし、最後は滝沢がツモって決着した。この日2回のアガリは、いずれも【6ソウ】ツモだった。

「疲れた」と言いながらも、笑顔でインタビューに応じる滝沢。苦しい中でも焦らずにじっと耐えて失点を最小限に抑えたことが、今回の勝利につながった。それは、門前で行くべき局面で動いてしまったという前回の反省を、しっかりと生かしたものだと言えそうだ。

「結果トップになって良かったが、何着でも良かったと言える内容だった」

この勝利は、滝沢にとって大きな手応えとなったに違いない。

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