堀慎吾の神眼ふたたび──
視える者だけが苦しむ、
葛藤と後悔
文・須田良規 【週刊Мリーグセレクト】2021年11月29~12月3日
またしてもあの選手が、不思議なことを言ったのである──。
11月30日(火) 第2試合、傍目にはちょっと不可解な出来事があった。
順を追って見てみよう。
東4局1本場。これは南家の、KONAMI麻雀格闘倶楽部・高宮まりの手牌。
5巡目に1枚切れのを引いて、打とする。
次巡にが重なり、チートイツのイーシャンテン。
打とする。
そしてすぐにが重なって、
切りで単騎の即リーチである。
ここまでは普通の手順の、普通の光景だ。
問題は、やはりこの選手。KADOKAWAサクラナイツ・堀慎吾なのである。
堀は一発目は現物のを切ったものの、ここで三色のイーシャンテンになり、当たり牌のと、が余っている。
共に1枚切れ、は自分で切っている牌。
いかに堀といえども、こんなものは流石に放銃するしかないのではないか?
しかし予想に反して、このとき堀は相当な時間考え込んでいた。
まずここが妙なのである。
何を考えることがあるのだろう?
相手の捨て牌、自分の手牌、この点数状況だ。
まあかか、自分で切ってるからか。堀の放銃だな。
そんな風に周りも呑気に見ていたはずだ。
そして何秒か、十数秒か悩んだ末に、堀は絞り出すようにを切る。
当たり牌のではなく、。
これも不思議な感じはあったが、それよりも勝負手であるこの手牌でも、堀にはまるで気概が見られなかったのが気になった。
そして決着もすぐ。堀の運命を後押しするかのように、ツモと来る。
堀は形上もちろんリーチを宣言するが、その声にはなんとなく、諦めのようなものを感じた。
高宮のアガリ形を見て、堀はゆっくりうなずいた。
それにしたって堀は、なぜあのとき長考していたのだろう。
私は試合後、どうしても気になって、興味本位で堀に聞いてみることにした。
もちろんあまり記事に書く気もなかった。
大体堀の凄さはこの前書いたし、そんな何度も堀のことばっかり書けないよ、
週刊Mリーグが週刊堀リーグになってしまう・・・などと思っていた。
しかし堀の返答は、またしても私を高揚させるものであった。
「チートイツかなと思ってましたよ」
──いやいやいや。
そんなに何でも当たるものじゃないだろう。
なんなら後からカッコつけて言ってない?
しかしそれなら、もし本当に堀がそう思っていたのなら。
切りのときの長考も、確かに腑に落ちる。
「まあでも本当に確信ではないです。そこまで明確ではないですが、濃いなと。
ただこういう感覚、外れないんですよね・・・外れて欲しかったけど」
全体の捨て牌はこうである。