打倒『流れ』──
雷電の大黒柱黒沢咲
文・坪川義昭【金曜担当ライター】2023年11月3日
第2回戦
東家:渋川難波(KADOKAWAサクラナイツ)
南家:猿川真寿(BEAST Japanext)
西家:黒沢咲(TEAM RAIDEN / 雷電)
北家:東城りお(セガサミーフェニックス)
Mリーグが開幕してから4年もの間ファイナルステージ進出できず、昨年ファイナルステージ初進出も思うような結果が出せなかったチームがある。
TEAM雷電だ。
2年前にはシーズン成績で史上初の▲1000p越えを記録し、苦渋を舐めて舐めて舐めまくっている。
そんな中でチームの大黒柱としてプラスポイントを一人で掻き集めていたのが黒沢咲だ。
今年まだ5試合の登板とはいえ、一度のトップも持ち帰れず不調に喘いでいた。
表情も優れず、手牌と彼女の一打も噛み合わない、誰の目から見てもわかるようなスランプに陥っている。
チームとしては1試合目に本田がトップを取ったことでプラス域に浮上し、好調かもしれないが目指すファイナルステージに行くためには黒沢の復活が鍵となる。
東1局
KADOKAWAサクラナイツの渋川が2副露し、の後付けで仕掛ける。
テンパイを入れた黒沢はヤミテンを選択した。
確かにがポンされていること、が自身の目から3枚見えていること、更に注目されている渋川の現物待ちであるという3点のヤミテンにしやすい理由が存在している。
一番のデメリットであるが出た時に2600点で手牌を倒すのか?そして、見逃したとしてそれはリーチをするよりもリターンが上回るのか。
セガサミーフェニックスの東城からリーチが入った同巡でツモアガリ宣言をする黒沢は少し力弱さを感じた。
残り一枚だとしても勝負手を力強く引き寄せる黒沢の麻雀にファンは歓喜してきたはずだ。
東2局
親番のBEAST Japanext猿川が東城から18000点を出アガリ。情報の少ないリーチに誰が引いても打ち込みそうな局面でババを引かされたのは東城だった。
東3局
点棒を失った東城が果敢にホンイツ仕掛けを入れた。形は整ってはいないが、高打点を目指して真っ直ぐ進めていく。
一方親番の黒沢はというと、中々の勝負手が入っている。ドラがなだけに上家が切ったはチーとして全力でタンヤオ仕掛けをしていこうとするのが一般的な庶民の発想だ。
麻雀というのはファインプレーを目指すよりも地味なマジョリティを正解し続けることが勝利に近付きやすい。
つまり、この分岐点で殆どのプレイヤーは仕掛けを入れた世界を経験していくので、チーをしなかった世界を知ることはあまりないのだ。
ここから先は黒沢しか見たことがない世界が待っている。
東城の仕掛けを受けた黒沢は目一杯のタンヤオ進行をしない。
ここに黒沢の特徴が表れている。
を鳴かなかったとはいえ、手牌はタンヤオになっていて勝負手に将来なることは予想しやすい。
ならばなるべく早い段階で手牌に必要なくなるであろうは切っておきたい牌である。
しかし、ここから切らないのが黒沢流だ。
Mリーグ選手の中で一番鳴かない彼女は相手の仕掛けへのリスペクトもかなり高い。
自身がかなりアガリを見込めて進んだ時にしか仕掛けないが故に相手へのリスペクトも高いのだ。
手牌をもらった時にこの手を想像するプレイヤーは黒沢以外存在しないだろう。
そして3巡目にチーを発声していたならばこんな未来は見ることが出来ないわけだ。