いやいや、ダメじゃない。冷静に考えれば申し分ない結果である。10万点オーバーのトップで、チームのマイナスは残り1トップ分くらいまで減った。初戦では瑞原が4着となってしまっていたが、これで1日トータルでは勝ち頭、チームとしても12月の船出は上々のものとなった。
U-NEXT Pirates、プラス域浮上まで、もう一息だ。
焦っているように見えた高宮まり
一方、高宮にとってこの試合は厳しい戦いとなった。
東1局では3900のテンパイから東城のリーチに突っ張るも、高目を放銃して8000の失点。直近2戦で連続4着となっており、この試合を良い状態で進めるためにも先制が欲しかったところだが、いきなりのビハインドとなってしまう。
その後、朝倉へのハネ満放銃などが響き、オーラス1本場では-16200点と、大きなラスとなってしまっていた。
その高宮に、4巡目で待ちテンパイが入った。ピンフ赤、リーチしてツモればそこそこの打点にはなる。
高宮は、テンパイこそ取ったがリーチはしなかった。3番手の瑠美とは13600点差、満貫直撃かハネ満ツモで逆転できる。巡目も早く、着順アップの可能性を見据えた。引きでのタンヤオ変化、引き、引きの高目イーペーコーなど、打点アップのルートは複数残されている。
次巡、ドラ引き。くっつけばリーチピンフドラ赤でツモに一発や裏が絡めば条件クリア、縦に重ねればさらに条件は軽くなる。だが、そのためには今のテンパイを崩さなければならない。
高宮は熟考し・・・
を切ってテンパイを外した。しかしその後はツモが伸びず、朝倉のツモアガリで、傷口はさらに広がった。朝倉は道中でをツモ切っており、リーチをかけていれば、おそらく朝倉の連荘はなかったと思われる。
もちろん、最後まで着アップを狙いたいのは当然のことだ。今回の選択が良い結果につながる可能性も、決してゼロではない。ただ、戦いはまだ中盤戦に差し掛かったばかりであり、そこまで無茶をする必要が果たしてあったのか。実際どうだったかは本人のみ知るところだが、少なくとも筆者は今回の高宮に、焦りのようなものが感じられた。
東1局の放銃は巡目的にも残りスジ的にも押せるかどうかギリギリのところでの1牌勝負、朝倉に打ったハネ満はうまく手を組んで打点のあるリャンメン待ちリーチをかけた結果で、失点こそ痛いものの、それほど気にするものではなかったように思う。しかし、もしもそうした結果やここ2戦のラスなどが焦りを生んでしまったのであれば、少し気がかりではある。
高宮はある意味で、チームのエース・佐々木寿人以上に「よく振ってよくアガる」KONAMI麻雀格闘倶楽部の「イズム」を体現している選手だと思う。幸いチームの状況は良く、この日もほぼプラスマイナスゼロで1日を終え、まだまだ300近いポイントを持っている。ここ数戦はらしくない戦いが続いているように思えるが、2019シーズンには強気の攻めで100ポイント近いプラスを稼いだ選手。次戦はぜひ、思い切り腕を振ってアガリをもぎ取る高宮らしい麻雀を見せてほしい。
さいたま市在住のフリーライター・麻雀ファン。2023年10月より株式会社竹書房所属。東京・飯田橋にあるセット雀荘「麻雀ロン」のオーナーである梶本琢程氏(麻雀解説者・Mリーグ審判)との縁をきっかけに、2019年から麻雀関連原稿の執筆を開始。「キンマweb」「近代麻雀」ではMリーグや麻雀最強戦の観戦記、取材・インタビュー記事などを多数手掛けている。渋谷ABEMAS・多井隆晴選手「必勝!麻雀実戦対局問題集」「麻雀無敗の手筋」「無敵の麻雀」、TEAM雷電・黒沢咲選手・U-NEXT Piratesの4選手の書籍構成やMリーグ公式ガイドブックの執筆協力など、多岐にわたって活動中。