まずは寿人が
待ちで先制リーチ。
ピンフイーペーコー赤赤とダマテンでもマンガンが確定しているが、攻めるところはきっちり攻めるのがいかにも寿人らしい。
村上は無理せずオリていれば安泰… のはずだった。
が4枚となった村上の手牌。
完全な安全牌はないが、形があまりよくないのでカンはせずに無理やりオリるのがマジョリティ。特に村上は筋のを切る、私はそう思った。
「カン」
私の予想を裏切って、村上の発声がこだました。
まだまだこんなものじゃ終わらせない、という意志が垣間見えるようだ。
ツモってきたのは。
暗槓しているの筋であり、危険牌だ。
しかし村上はこれをプッシュ。
次にツモってきたもプッシュ。
さらにさらに
村上をツモってテンパイ! 感触のあったペン待ちが残ったとあらば…
当然ドラをぶった切ってのリーチだ!
俺の受けた傷はこんなものではない! こんなものでは許されないんだ!
リーチの声に村上の積年の恨みがこもる。
さて、村上の押した→→に、全てチーの声をかけた打ち手がいた。
Mリーグ2019 MVP(+451.4) 魚谷侑未
魚谷の仕掛け出しであるチーはここからだった。
寿人のリーチに村上が押し返している中、かなり遠いところからの仕掛けである。
ただ安全牌は豊富にあるし、特には寿人と村上に安全なのでいつでも撤退できる。
だったら可能性を追ってやるべきことをきっちりやる。その姿勢により…
ダブ・チャンタ・ドラ1のマンガンテンパイに辿り着いた。
突き抜けようとする村上をあの手この手で阻んでくる歴代MVPプレイヤーたち。
──私は長年、最下層で支える雪粒が一番強いと思っていた。
だがそれは違ったのだ。
何千・何万の雪たちがアスファルトに降り注ぎ、一粒の雪が溶けずに残るために、ただただ地面を冷やし続け、そして消えていく。
村上も同じかもしれない。
この一粒までに積み重ねてきた多くの負けも、多くの激励の声も、決して無駄ではなかった。
全ての経験が地面を冷やし続け
そして一番下の一粒として、強く残った。
リーチ・ドラ1ながらも裏ドラが4枚乗っての18000。
ダメ押しに続くダメ押しで、3人のMVPプレイヤーは完全にトップを諦めた。
残った一粒はたまたまで、それまでに消えていった何万の雪たちが地面を冷やしたからこそ、溶けずに残ることができたのだ。
村上が挙げたこの日の一粒の上に、多くの白星が積み重なっていく… そんな景色を夢見てドリブンズは残り18試合を戦い抜く。
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で戦術特集記事を連載中。note「ZEROが麻雀人生をかけて取り組む定期マガジン」、YouTubeチャンネル「ZERO麻雀ch」