ひなたんの逆転勝利 セミファイナルを一緒に戦った小さな両手 Mリーグ2021-22コラム【文・藤原哲史】

↓日向が6000オールをツモりあげ、なんと2局で30200点差を逆転。セミファイナル中盤の貴重なトップを手にしたのである。

終了後のインタビュー。
「今日はトップをとるために、いくつかおまもりを持ってきたんですけど…これはファンのちっちゃい子から貰ったおまもりで」
ほんの2秒ほどだが、日向がポケットから出したおまもりが映り、田森さんは思わず妻と一緒に声を上げた。うちのおもちゃ箱に入っているシールが貼ってある。一目で娘の作ったおまもりであることが分かった。

ファンの1人だけを贔屓する訳にはいかないと、日向はかほこちゃんのおまもりを大々的にモニターへ掲げることはしなかった。それでも、一瞬映ったしわしわのおまもりは、日向選手がどれだけこのおまもりを大事にポケットにしまっていたかを物語っていた。きっと自分以外のファンのプレゼントも、いつもこうやって大事にしているんだなと、田森さんは目頭が熱くなった。

麻雀だから、うまくいく日もあればそうでない日もある。ただ記録にも、記憶にも残らなくても、娘の作った優しさが、日向選手やテレビを見ていた誰かの心を一瞬でも温めたのであれば、これ以上嬉しい事は無い。
「あのおまもりのおかげで、ひなたんがトップをとったよ!」
幸せそうに寝ているかほこちゃんの髪を撫でながら、田森さんは明日の朝、そう話そうと思った。

セミファイナルを終えて、4年連続のファイナル進出を決めた渋谷ABEMAS。今年のABEMASをファイナルへと連れていったのは、選手たち一人ひとりの類まれなる実力と、沢山のサポーターの熱い応援と、そして小さな両手が作った温かな想いであった。

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