できることは全部やる
敗北のなかで、園田賢が見せた
ドリブンズ・プライド
文・東川亮【月曜・木曜担当ライター】2022年3月10日

大和証券Mリーグ2021-22シーズン、3月10日の2試合が終わり、4チームがレギュラーシーズン全日程を終了した。
赤坂ドリブンズは、敗れた。
数字だけで考えるなら、残る4チームのどこかが1日2試合で記録的大敗を喫すれば、まだセミファイナル進出は可能だ。だが、そんな夢物語に本気で期待するほど、彼らは愚かでも無邪気でも、麻雀を知らないわけでもない。

ドリブンズの最終戦を任されたのは、ドラフト1位、園田賢。苦しみながらも最後までもがき戦い抜いた園田の、そしてドリブンズの選手の姿を、ファンの皆さんにはしっかりと目に焼き付け、記憶に留めていただきたい。

第2回戦
東家:園田賢(赤坂ドリブンズ)
南家:松本吉弘(渋谷ABEMAS)
西家:魚谷侑未(セガサミーフェニックス)
北家:勝又健志(EX風林火山)

東1局。
園田としては、勝又に対して32万点以上の点差をつけてのトップラスが、レギュラーシーズン逆転突破の条件だった。紙のように薄い確率をクリアするための、たった2回の貴重な親番。そこで松本から先制リーチがかかる。

このとき、園田の手は直前にようやく1メンツが完成したばかり。到底戦える状況ではなかった。

その後、魚谷からもリーチがかかり、ますます劣勢になる。勝又が魚谷からチーをしたタイミングで、園田もをチーした。なんとか形式テンパイで粘ろう、ということか。

いや、違う。園田は1シャンテン取らず。この手がテンパイになる確率は相当低そうな上、はどちらかに危険な牌だ。このチーは、魚谷にまわるハイテイをずらす仕掛け。厳しい状況でもこの男、できることは全部やる。

この鳴きでズレた牌は、魚谷のアガリ牌のだった。園田は、最少失点でこの局を切り抜けることに成功する。とはいえ、残る親番は1回のみ。

東4局、園田は打のところで、余剰牌になり得る
を先に切ることを考えていたという。
を仕掛けて1枚切れの
を切っている勝又に速度を感じており、受け駒を残すことを考えたが、それよりも今の形を優先した。
「好牌先打(ハオパイセンター)」
解説の土田浩翔の口をついた言葉。自身の手から余りそう、かつ他家への危険牌となり得る牌を先に切る、という考え方。ただし牌理だけを考えれば、有効牌の受け入れは狭くなる。相手の進行と巡目を考えても、判断に困るタイミングだった。

勝又の進行に対する園田の読みは、当たっていた。当たりすぎていた。勝又がテンパイ。待ちはカン。


さすがに、これを切り遅れと評するのは酷だと思う。しかし現実は5800の放銃。失点が、園田に重くのしかかる。

痛い放銃があったとしても、園田はブレずにやれることをやる。次局はピンズ多め、一色手も少し見えそうなところから、を切ってスリムにする進行。


そこからチー、
チーとアグレッシブに仕掛けていく。手の内が見えていない側からすれば、園田がドラの
を複数抱えていそうに見える。しかし実際は1枚、ここから都合良く
が重なるか、一気通貫にでもなれば、という感じか。

その後、リーチをかけた勝又からを鳴き、役なしながらテンパイを取りきってテンパイ料1500点を獲得。テンパイすら厳しそうなところからこうして無理やりでもアガリやテンパイ料をもぎ取るスタイルは、園田ならではのものだ。

そうして迎えた東4局2本場では、リーチツモの1300-2600は1500-2800で、トップ目に浮上。

そして迎えたレギュラーシーズン最後の親番で、リーチ一発ピンフ赤の12000を魚谷から出アガリし、さらなる加点に成功する。

園田としては、この親番でオリる選択肢はない。だが、手をかなり広げた状態で勝又のリーチを受け、一発目にドラの引き。トイツの
が現物だが、これを打てばアガリからは大きく遠のく。

園田が選んだのは、1シャンテンキープの切り。
が場に4枚切れで、勝又はそんな悪い待ちでリーチを打たないのではないか、という判断。とはいえ、これも
を打つための願望だったのかもしれない。

このが一発放銃。

「5200は5500」
赤坂ドリブンズ、Mリーグ2021-22シーズン、最後の親番が落ちた。

南2局。
勝又はタンヤオピンフのテンパイを入れ、ドラのを切った。リーチ宣言はしない。もしこれを鳴かれたら、そのときに対応を考えようという様子見の一打。
