【熱論!21人のMリーガー】石橋伸洋・U-NEXTパイレーツ〜Mリーガーの中で最も平均打点が低い理由〜

熱論!21人のMリーガー

石橋伸洋・パイレーツ

〜Mリーガーの中で

最も平均打点が低い理由〜

文・ゆうせー【U-NEXTパイレーツ担当ライター】

年末年始、Mリーグは2週間お休みだ。開幕からずっと緊張の糸を緩めることの出来なかった、選手や実況をはじめ、チームの監督や担当の方、現場のスタッフの方々、そしてプロデューサーやMリーグ機構の方々が、ホッと一段落して休養されることを願う。

一方、我々ファンはわがままなもので、

Mリーグがないとつまらない!」

という気持ちになっている方も多いはずだ。

しかし、この2週間の「Mリーグロス」があるからこそ、残り20数戦のプレーオフ進出争いが、より一層白熱するのではないだろうか。「待ってました!」という気持ちが、選手への応援の熱量へと変わる。年明け初戦に爆発するそのエネルギーは、シーズン終盤まできっと持続することだろう。絶妙で素晴らしいスケジュールだと感じる。

とはいえ、待つ者にとっては2週間は長い。その間キンマwebでは、21人のMリーガーを一人一人ピックアップしてコラムとしてお届けすることとなった。7人のライターがいるので1人1チーム担当。私の担当は…

U-NEXT Piratesである。

(画像は石橋選手のツイッターからいただきました)

弟(朝倉康心選手)がいるチームなので、まぁそうなりますよね。試合後の観戦記コラムと違って、この選手特集は色々な書き方があると思います(おまえ観戦記コラムでも好き勝手色々書いてんじゃねぇか、というツッコミはナシでお願いします)。

Piratesに関しましては、前半戦で印象に残ったシーンを交えながら、選手の思考やプレースタイルの特徴を紹介していこうと思いますのでよろしくお付き合いのほどお願いいたします。

今日は、

(この画像も石橋選手のツイッターからいただきました)

じゃなかった、

石橋選手の特集です。

「デジタル戦士の集まり」であるU-NEXT Pirates。しかし、3選手それぞれ麻雀観は違うように感じる。例えば、アガリ逃しについて。

アガリ逃しは気にならないどころか、気づくことすら稀だという小林。

「鳴いていたら3900アガれてたぁぁぁ」

と放送を見返して反省し、さらにそこからドン引きするくらい落ち込む朝倉。

対して、石橋はどのように感じるのだろうか。石橋の麻雀を分析しながら考えていこう。

石橋の麻雀

テーマ1 平均打点

石橋の平均打点は、5106点(大和証券Mリーグ成績(非公式)様より引用させていただきました)。これは、Mリーガー21人中1番低い数字である。

では、これは悪いことなのだろうか?

結論から言うと、平均打点は高ければ高い方がいい、と一概に言うことは出来ない。

例えば、1半荘で8000点を1回アガった場合、平均打点は8000点だ。

一方、1半荘で8000点を1回と2000点を4回アガった場合、平均打点は3200点になる。

総収入は後者の方が多いし、ゲームとしても有利に進んでいる可能性が高い。にもかかわらず、かわし手をアガると平均打点は自然と低いものになってしまう。

もちろん、アガリ回数やアガリ率、その他の要素との兼ね合いもある。また、平均打点というデータが意味のないものだと言っているわけではない。たろうの平均打点、8188点という数字はゼウスの破壊力を表している数字だと思う

ただ、石橋に関しては「平均打点が低いからダメだ」ということは決してなく「要所要所できちんとかわし手を決めた結果、平均打点が低くなっている」というのが私の認識だ。前半戦のハイライトで石橋のかわし手の作り方を見てみよう。

11月23日(金)2戦目

トップ目で迎えた南3局。寒風吹きすさぶ配牌だ…石橋の選択は、

。役牌は重ねてアガりたいし、守備面でも役に立つ牌。があるのでロスの少ないから。

3巡目には、

をツモって、

。役牌の4面張フォーメーション。これくらい悪い牌姿だと、門前で行くのは絶望的。を1枚外して役牌に重きを置く。

次巡…

狙い通り役牌を重ねた!

ドラそばのをここで手放す。ブロックが一応決まったとはいえ、手格好としても点棒状況としてもまだスリムに構えたいところだ。

そして、

その次にをツモって打。なるほど、3巡目に1枚を外したのは、123や234を睨んでいたのもあったのだろう。三色を作るにはが1枚しか必要ない。

そして、ここもを切って守備的に。パッと河をみると、上家の萩原も下家の多井も字牌から切り出していてストレートな手牌進行をしていそうだ。しかも役牌を処理し終わって数牌が余ってきている。そこそこ手は整ってきてそうだ。456辺りの真ん中の余剰牌を中盤まで残すのはリスクが高いと踏んだのだろう。

6巡目、

を引いて、打。役牌と三色両方のリャンシャンテン。これでアガリも見えてきた。字牌を1枚切るこの選択でも、場に見えていないを先打ち。徹底した守備意識がうかがえる。リーチを打たれるくらいなら、役牌を鳴かれた方が対応しやすい、というのもあるだろう。

しかし、さすがに他家の方が早い。

親の多井がドラ2枚使いのカンリーチで勝負に来た。はなんと4枚残り。

そこに、

2着目の萩原も、卓上に火花散る打こちらもドラドラのイーペーコー確定テンパイだ。

ここで、

石橋の選択は、

は多井のリーチには打てない。が出ていかないように形を決めた。萩原のテンパイ気配も感じているはが、次に萩原が手がわったらますますは打ちづらくなってしまう。アガリも見える以上、ここでを切ることに決めた。

数巡後、

萩原が両面に手がわった!ドラのを横に曲げて勝負。

アツいリーチ合戦だ…

「チー」

そこにもう一人、割って入った男がいた。石橋はをチーして三色ドラ1のテンパイ。

このように手役をつくっておけば、アガリに向かいながらも手牌を入れ替えることが出来る。危険な牌を持ってきた場合には、もちろんオリも考えていたであろう。

 

「ツモ」

アガったのは石橋だった。まさに値千金の2000点。

もう一度配牌を見てみよう。このくっちゃくちゃの配牌から、2軒リーチをかわしてアガった2000点。

2000点をアガった場合にはもちろん平均打点は下がる。しかし、細いルートをたどってこの2000点のアガリを決められるのが石橋の強みだと思う。平均打点は気にせず、これからも美しいかわし手を見せてほしい。

簡単にもう一つ、石橋のかわし手への意識の高さがうかがえる場面を紹介しよう。

 

11月15日(木)1戦目

西家のたろうがド派手な捨て牌でをポンして打、1巡後に打とした局面。

(画像で白い牌が手出し、暗転している牌がツモ切りの牌です。)

石橋はたろうが切ったをチーして勝負。タンヤオのみカン待ちのかわし手を入れてきた。これは1000点。

たろうがをスッと切っていることと、平均打点の高いたろうの仕掛けであることから、アンコも十分に予想される局面だ。を切るのは怖い。

しかし、だからこそ自分がアガることで、たろうにアガらせないのが大事なのだ。

は危なく見えるが、たろうがを切ったとき既には3枚見えなので、仮にがアンコだったとしたらからを切ってちに固定することはないだろう、という読みも入れていたか。

 

結果は、

 

たろうの満貫のアガリとなったが、やはりたろうの手は大きくかわし手の価値が高い局面だったと言えよう。石橋のピントは合っていたのだ。

 

テーマ2  点棒状況判断

石橋が非常に長けていることとしてもう一つ、点棒状況判断が挙げられる。これもハイライトを見てみよう。

 

11月29日(木)1戦目

画像では見にくいが、オーラス4本場。この牌姿でツモに手がかかりそうだが…

点差に注目していただきたい。

2着目石橋と3着目滝沢の点差は8600点。

まず『石橋は誰にも満貫が打てない』。たとえ松本にでも満貫が打てない今、を打って鳴かれた場合には、自分が苦しくなってしまう。

さらに、滝沢に鳴かれた場合には、

滝沢は誰から満貫をアガっても条件クリア』だ。

ラス目の茅森だけでなくトップ目の松本が滝沢に打つケースも考えられる。もちろん、滝沢がツモあがっても逆転されてしまう、

最悪のケースも残っている。4着目茅森と2着目石橋の点差は17400点。茅森に鳴かれて石橋が茅森に放銃してしまった場合、石橋はなんとラスになってしまう。

よってここは打。この形でも切ってはいけないくらい、この中はよっぽどのことがない限り『打ってはいけない牌』なのだ。点棒状況判断が正確だからこそ、要所で我慢が効く。

実は、

は序盤の時点で茅森がトイツで持っていた。石橋が切ってしまっていた場合には、最悪のケースも考えられたかもしれない。

ここで我慢した石橋、

なんと残り1枚のを重ねて、

をチーしてなら19200、でも13200のテンパイを取った。ここに、

滝沢が地獄単騎のでツモ切りリーチを敢行。石橋からの直撃かツモで2着に上がれる。

両者ともアガリが出ないまま、流局間際となった。自身最後のツモをしたところで石橋の手が止まる。

は中筋の牌だが、通ってはいない。

計算中…計算中… 押すのか、オリるのか?

石橋の選択は、

プッシュ。自身のツモがないとはいえ、滝沢から出アガるチャンスは残されている。アガった場合の得点が大きすぎるため、テンパイ維持。

滝沢最後のツモにも両者のアガリ牌はいなかった。流局だ。親がテンパイをとったからもう1局か…

と思いきや、秒速で石橋は手牌を伏せていた。ノーテン宣言。石橋は2着終了を選んだ。

この判断についても、再び点棒状況をもとに考えてみよう。もし、石橋が続行した場合、

 

南4局 5本場 供託1本

石橋 25500

滝沢 15900

松本 52500

茅森 5100

となる。2着条件を考えると、滝沢は満貫出アガリOK。茅森はハネマンツモアガリOK。

すなわち、先ほど挙げたこの局開始時の条件とほとんど変わっておらず、『自身の着アップの可能性と比べて着順ダウンの可能性が高い』状況なのだ。計算していたのは、4mの押し引きだけでなく、伏せるかどうかについてもだった。この細かい計算が、Mリーグの大舞台で正確に出来るのは物凄いことだ。

それまでの精密な過程からのノーテン宣言。

ノーテン宣言に感動を覚えることすらあるんだな…私は感嘆した。

しかし、点棒状況判断が緻密すぎるのが裏目に出た局面もあった。

 

12月20日(木)2戦目

状況を整理すると、今オーラスで、石橋は満貫出アガり2着、前原からハネマン直撃or倍満ツモでトップ。

下家近藤はソウズの一色手、上家瀬戸熊は変則の切り出し。関連牌としてはが3枚切れ。

石橋の選択は…

一気通貫に手牌を固定したカタチだ。この選択をした最大の理由は「リーチ棒を出したくないこと」だ。リーチ棒を出すと、近藤に満貫を打った場合や近藤がハネマンをツモった場合に自分がラスになってしまう。点棒状況的に「最大のリスクだけは避けよう」という判断だ。

しかし、これは消極的選択に思えた。一気通貫を残すとしてもシャンポン受けを残して打が良いのではないだろうか。シャンポンが埋まってペンのテンパイが入った場合リーチをしてツモるか直撃、または一発や裏1でも2着に浮上する。

 

 ドラ

 

いくらリーチ棒を出したくないとはいえ、現実的な逆転条件が入ったのなら勝負する価値はあると思う。ドラ待ちペンチャンで待ちとして歓迎ではないが、あとのない近藤はもちろん、手が入った瀬戸熊からも出る可能性はあるだろう。また、どうしてもリーチがしたくないのなら一手がわりでタンヤオになるダマテンを入れてもいいし、その場合でもツモったらアガれる。

が全員の安全牌でもあるので、シャンポン受けをわざわざなくす必要はなかったと思うのだがどうだろうか?

近藤の手も、

瀬戸熊の手も、

大物手のイーシャンテンとなっていた。どうなる…

石橋のツモは…

裏目のだった。テンパイを逃してしまう。ここは切り。

瀬戸熊に四暗刻テンパイが…!気合のリーチが飛んでくる。

そして、

近藤もチンイツのテンパイ…!

次の分岐点は、

瀬戸熊が3枚目のをツモ切ったシーンだ。

この手格好の石橋、をスルー。待ちが良い待ちではないことと、点棒状況的に近藤が瀬戸熊からアガっての2着目浮上を狙ったカタチか。また、近藤のアガリでも4000オールでもう1局なら許容範囲だと判断した可能性もある。

Piratesの路上検討会で話に上がっていたこのシーン。ここはテンパイを入れるべきではないだろうか。瀬戸熊からの直撃なら逆転できるし、素点としてもリーチ棒込み4900点は4.9ptだ。近藤や瀬戸熊のツモアガリなら素点は削られることになってしまう。また、この状況なら3pは不要なら放たれるだろう。そしては計7枚目だ。これをスルーしてしまうとアガれる見込みがほとんど無くなってしまう。

どうなるか…

近藤はこのテンパイから、

天を仰いでを切った。石橋が門前リーチをしていても出ただろうし、万が一、いや億に一、近藤がを止めたときには、

石橋のツモアガリだった。門前テンパイにたどり着いていれば、の話だが。

ちなみに、一通で仕掛けていた場合には、このは近藤のツモになるので近藤から出アガリしていたことだろう。

結果は…

近藤渾身の6000オールのツモアガリ。湧き上がるフェニックスサポーターと、役満チャンスの高ぶりが収まらない雷電サポーターとは対照的に、何とも言いようのない歯がゆさを感じる自分がいた。

もちろん、リスクはこわい。それも重々分かっている。しかし、

ポイント状況的にリスクを負ってでもリターンをとりにいかないといけない時期に入ったのではないだろうか。

今日は紹介しきれなかったが、行くと決めたときの石橋の踏み込みは本当に鋭い。来年のシーズン後半は、点棒状況のクレバーな判断をもとに、切れのあるかわし手と勝負所での踏み込みによって勝ちを重ねる、そんな石橋が見たい。Piratesサポーターの願いはきっと同じであろう。

え?特集記事にこんなアガリ逃しの批評を入れていいのかって?

大丈夫。石橋のアガリ逃しなどについての捉え方はこうだ。

なんとも心強い。様々な意見を糧にすることでさらに強くなって、来年は「ドス黒いデジタル」と化してMリーグの舞台で暴れまわっているのでは…そんな予感がする2018年のクリスマスだった。

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