覚悟を決めた女は強い!
圧巻の黒沢咲劇場!
【決勝卓】担当記者:増田隆一 2022年5月29日(日)
今回、「ミスター麻雀カップ」の観戦記を書くにあたり、小島先生との数々の思い出が頭に浮かぶ。
雀荘のゲストに来てもらった際に、ゲスト料を受け取るどころか、「祝儀だから取っておけ」と逆に開店祝いをくれた先生。
韓国旅行にご一緒させてもらった際、空港までのタクシーでルーレットの話を楽しそうにしていた先生。
美味しそうに缶チューハイを飲んでいた先生。
常に明るく豪快で、人の悪口やネガティブな話は一切しない先生。
先生との思い出に嫌な話なんてひとつもない。豪快でありながらも、とにかく優しい気配りの人だった。
先生との思い出話はたくさんあるけれど、今回は観戦記。最後にこれだけ言わせてもらい、本題に移ろうと思う。
ある日の勉強会でのこと。若手が3つ仕掛けて1000点を上がっていた。
オーラスの上がりトップなど1000点が勝負を決定付けるような特殊な状況ではない、いわゆる無風状態の局面である。
それを見た小島先生の悲しそうな表情を今でも忘れられない。
勝負は勝ち負けが全てと割り切る人もいる。しかし、小島先生が後輩達に教えてきたのは、見てくれる、応援してくれるファンに楽しんでもらえる麻雀だ。
「ミスター麻雀カップ」の名を冠した以上、天国の先生が、小島武夫らしく豪快に笑いながら「いい麻雀だったな」と言ってくれるような内容を期待したい。
開局、まずはルミの手を見て欲しい。
9種10牌、タイプ的に国士無双に向かうかと思ったが選択はから。
親番と言うこともあり、仕掛けも見てホンイツへ向かうが中々手が進まずにいた所、滝沢にこんなテンパイが入る。
ツモ ドラ
ドラを切ればテンパイ。考えられる選択肢は3つ。
1.ドラを切ってヤミテン
2.ドラを切ってリーチ
3.ドラを使って手を組み替える(テンパイ取らず)
トップにしか意味がない1回戦勝負とは言え、滝沢は間違いなく3の選択肢を選ぶと思っていたが、選択はドラを切ってのリーチ。
この選択肢がかなりリスキーなことは滝沢も承知。
相手とは何度も対戦しており、滝沢のスタイルは熟知されている、ルミの進行が遅いことも見越した上で、「今日の滝沢はこんなこともやるんだぞ」と見せたかった戦略も込みなのかもしれない。
さて、これを受けた黒沢がこの手牌。
僥倖の引きでのどちらかを切れば役ありのテンパイとなる。
かなりの時間を使って考える黒沢。
選んだ答えは。
フリテンになってしまうとは言え、に比べて若干安全なをまず勝負して、234の三色に変化してからより危険なを勝負する選択もあったがストレートに押し返す。
となれば自身からが3枚見えているワンチャンスの変化の即リーチはノータイム。
打の時の長考で、全てを決めた上でしっかりと押し返した黒沢に強さが見える。
こうなればブラフリーチに本物のリーチが勝つのは必然。
小島先生ならば、「滝沢はちょっとやり過ぎたな。黒沢はよく押し返したな」とコメントしそうである。
東2局は萩原のリーチに、滝沢がツモれば2000-4000のリーチで追いかけるも返り討ちにあい、3900の放銃。
本人も感じているであろうが、やり過ぎ感のあるリーチからの連続放銃は、かなりメンタルに来る。
しかし滝沢はこれで終わらない。
東2局1本場。両面作りを意識したキレイな手組みでリーチツモ。ドラに裏ドラも乗せて戦線復帰。
滝沢の改めて試合開始だと言わんばかりのアガリを幕開けに、試合はここから壮絶な殴り合いへと突入して行く。
東3局、黒沢が暗刻で先行リーチ。
これに現状4着目の親、滝沢が徹底抗戦。
無筋を切り飛ばし目一杯の構えで、片アガリながらテンパイを入れる。
黒沢にとって、いい感じにゲームが進んでおり、このままトップでゴールするために、ここは是が非でもアガリたかったに違いない。
アガリ牌のを力強く手元に引き寄せる黒沢。