元乃木坂46中田花奈が魅せた
プロ雀士としての覚悟と努力
【A卓】担当記者:藤原哲史 2022年9月17日(土)
麻雀最強戦2022女流プロ令和の乱は、若手2名(中田、内田)とベテラン2名(豊後、和久津)による対決であり、上位2名が決勝卓へと勝ち上がるシステムである。
中田花奈
言わずと知れた、乃木坂46の元メンバー。
日本プロ麻雀連盟のプロテストに合格した年に桜蕾戦の決勝戦に残り、その合格がフロックではないことを証明した。麻雀カフェ「chun.」のオーナー店長も務めている。
内田みこ
第14期麻雀女王。
2019年の麻雀最強戦では、一盃口のみのアガリを見逃して四暗刻をツモりあげた。随所で見せる鋭いプッシュは、短期決戦で最も必要な「胆力」を十分に備えていることを物語る。
豊後葵
「麻雀遊戯王」「豊後無双」でお馴染みの豊後葵。
歯に絹着せぬ軽快なトークは麻雀界随一と言っても過言ではない。勿論トークだけではなく、第13期女流雀王を獲得しており、その実力は折り紙付き。2015年の最強戦では、国士無双を含めた怒涛のアガリで驚きの131000点を記録している。
和久津晶
2021年12月に高宮まりプロとブランド「REGISTRO」を立ち上げた、麻雀界のファッションリーダー。
麻雀においては、プロクイーン2回、第17回女流モンド杯を獲得し、元セガサミーフェニックス所属と文句無しのベテランである。
東1局、ダブを仕掛けた中田が、ドラポンの豊後から2900のアガリ。
場にが1枚切れていることから、が将来的に安全度の高い牌になり得ると判断した、見事なバランスである。
を引き入れ、中田から2000点のアガリ。
豊後のTシャツから、自身が出演する「麻雀遊戯王」の文字が躍る。大切な放送対局、ファッションで自身を表現できる最大のチャンスにおいて、豊後が敢えて麻雀遊戯王のTシャツを選んだことには理由がある。
普段のトークから想像がつかないかもしれないが、豊後はお世話になっている方々への感謝を決して忘れない。
「麻雀遊戯王」のTシャツを着ているのも、対局前のインタビューで梶本琢程プロの雀荘「麻雀ロン」を紹介したのも、ただの宣伝ではなく、自分がお世話になっている人たちへのお返しの気持ちなのだ。
東2局、をポンした中田がドラドラホンイツのテンパイ。
1半荘勝負における1回の親番の価値は高く、マンズを叩き切ってテンパイをとる打ち手もいるかもしれない。
しかし、主な字牌が全て切れた状態で考えられる中田の手は、ドラのが入ったホンイツまたはチンイツである。
“超攻撃型”と表現される和久津だが、相手の手組みを読む繊細な守備力が、その攻撃力を支えている。
結果は中田の1人テンパイで流局。
他家が速くなさそうとはいえ、現状ドラがなく形も良いとは言えないリャンシャンテンで、6巡目に安全牌を持たないのは、とても勇気がいる。
対局前のアンケートで、内田みこの勝利予想は実に6%であった。
このことについて、二階堂姉妹のYouTube「るみあきchanねる」で触れられている。
瑠美:(勝利予想6%って)内田みこ少な!
亜樹:“みこみこ”めっちゃ麻雀強いけどね。
瑠美:センスあるし強いんだけど、知名度で劣るのかなあ…
知名度抜群の2人から、最大級の賛辞である。
内田の攻撃的な手組みから生まれる雄々しい捨牌は、「いつリーチが飛んでくるか分からない」脅威を他家に与え、手牌を手狭にさせる効果があるのだ。
最終的にリーチまで漕ぎ着け、全員をおろし切った内田の1人テンパイで流局。
次局親番の内田が流局の1本場を出そうとしたところ、2本場であることを笑顔で和久津が指差した。
この大舞台で、無表情ではなく、無愛想でもなく、笑顔である。記録に残らないシーンであるが、和久津の人間性が滲み出ていた。
和久津といえば「スタイルが良い」「ファッションリーダー」「元Mリーガー」というイメージが浮かぶ人も多いだろう。
しかし和久津の一番素敵なポイントは、「後輩想い」なところではないかと私は思う。
和久津は自分を慕ってくる後輩の対局を必ず見ている(※1)。
それがどんなに視聴者数の少ない対局であってもだ。
「そうしないとアドバイスを求められた時に困るでしょ」と爽やかに和久津は語るが、その表情に一切の驕りがない。
後輩からすれば、自分の対局を大先輩に見て貰えてこんなに嬉しいことはなく、だから和久津の周りには自然と後輩が集まるのである。