そしてリーチを受けて一発目に持ってきた牌は
無筋の。街頭100人にアンケートを取ったら95人は押し辛いと答えそうな牌である。
テンパイは維持できそうなので直ぐにを切るかと思ったが、伊達はしばらく考える。
近藤には通ってない無筋はまだたくさんある。むしろこのはが通っている為、の1筋にしか当たらない。
は2枚切れで他家が安全牌として持っている可能性もある。伊達が1発目にを勝負すればかなり異常事態で、近藤の現物よりも、2枚切れのが選ばれそうだ。
しかしここで近藤に1発で放銃してしまうとラスの可能性も大いに上がる。
リスクとリターンを精査して伊達の右手が再び動き始めた。
動いた右手はを河へ持っていった。自身が12000点テンパイの価値ある手ということが伊達の勇気を後押ししたか。
を押し切ったご褒美と言わんばかりに、すぐにがやってきてくれた。
ツモ、チートイツ、ドラ2、赤2の3000/6000を決め瑞原の背中までも見えてきた。
南2局
後の無い本田が早々に仕掛けていく。
形はかなり苦しいが黙っている訳にもいかない。
自身39歳のこの日に何もできずに終わるわけにはいかない。
まずは親番継続を目指して進めていく。
しかし麻雀の神様は本田ではなく伊達に注目の手をプレゼントしたのだ。
待ち、とをツモれば言わずもがな四暗刻のテンパイ。
リーチで他家を降ろしてツモ回数を増やす選択もあるが、この牌姿だとリーチをしてしまうととが暗カン出来ない。
そしてもう1つ、ダマで瑞原からこの手を直撃すると一旦逆転してトップ目に立つことが出来る。
しかし、近藤もを暗カンしてもポン。トイトイに向かって懸命に仕掛けている。
このままだと近藤と親の本田に好き勝手やられてしまう。
しばらく頭に手を当てて考える伊達。
暗カン出来ないリスクよりも仕掛けている近藤、本田を止めにツモ切りリーチを敢行する。
ちなみにリーチ時点で伊達の欲しいとは全部山に残っている。
開幕戦という華々しい舞台で早々に役満が成就するのか、
すでに実況の日吉辰哉のテンションはメーターを振り切っている。
この試合を観ている全員が固唾を飲んで見守る中
「ツモ」
力強くも安堵がこぼれた様な手つきと表情でを手繰り寄せる。
元々声優として知名度のあった彼女は麻雀界でもすぐに有名になった。
先述した通り、昨シーズンの最高スコアラーでもあり、Mリーグ参戦初年度ながら凄まじい脚光を浴びた。
そして自身2年目の開幕日に役満をアガる。
これをスター性と呼ばずして何と呼ぶか。
昨年に伊達が残した様々なインパクトを今年早々に塗り替えた、自らの手で。
KONAMI麻雀格闘俱楽部のサポーターが大いに沸いた。
いや、サポーターだけでは無いはずだ。日本中の麻雀ファンが沸いたであろう。
筆者もまた、その瞬間だけは仕事を忘れ画面の前で手を叩いて興奮していた。
南3局
世の中は伊達の四暗刻を祝福している中、本田にとっては全く面白くない展開だ。
「北陸の役満プリンス」の異名を持つ本田。
39歳のバースデー当日に役満プリンスが役満を親被ってしまったのだ。このままで終わるわけにはいかない。何としてもラス回避はしたい。
少しでも高く仕上げたい。のリャンメンリーチを捨て自風のとのシャンポンでリーチをかけた。
が4枚とも場に放たれた所で伊達からが打ち出され、本田がようやく本日の初アガリ。
麻雀の神様が裏裏のバースデープレゼントを付けてくれて
リーチ、ドラ、裏2の満貫。近藤を交してオーラスを迎える。
南4局は伊達が途中テンパイながらも最終手番でテンパイを崩して流局。
インタビューでも話していたが、前局に本田に満貫の放銃が無ければテンパイ宣言していたが、瑞原の倍満ツモ、跳満直撃条件すら避けたかったので伏せたという。
この結果1人テンパイを入れていた近藤がノーテン罰符を受け取り3着に浮上した。