オーラス、鈴木優が仕掛けた罠　“戦闘民族”その強かな牙は　Ｍリーグの頂点に届き得るか【Mリーグ2022-23観戦記10／27】担当記者:後藤哲冶

テンパイが入った……！
を切って、待ちの１２０００テンパイ。
戦闘民族の牙が、風林火山の鉄壁の城を襲う。

後の展開を変える、大きなめくり合い。

危険牌のも、安全牌かのように切り出していく。

「それ、私の入り目なんだけど……　」
亜樹のそんな声が聞こえてきそうだ。
間違いなく、亜樹はこの時優の鋭い牙が自身の喉元に突きつけられているのを感じただろう。

この大事な南２局を制したのは――

優だった。
亜樹から最後のを捉えて、１２０００のアガリ。
このアガリでトップが入れ替わる。
優がトップ目に立った。

南２局は流局、南３局は多井がホンイツの仕掛けで亜樹から３９００のアガリで２着目へ。

第２試合は、オーラスを迎える。

オーラス優の配牌。
トップ目であるが故に打点がそこまで必要な場面ではないが、優の手にはドラが３枚。
対子でもっているは自風牌。鳴けばアガリは近そうだ。

次巡、なんとドラが暗刻に。
今優は特別打点が必要な場面ではないが、自分がドラを集めることができれば、相対的に相手の平均打点が下がるのが嬉しい。

を引いてきて、ターツ選択。
現状イーシャンテンではあるが愚形が２つで苦しい。
愚形ターツを払う選択肢もあるように見えたが。

優の選択は切り。
ペンとペンを残す選択。

そして多井から出たを、優がチー。
バックの仕掛け。
本人曰く、この多井から出た牌がだった場合はチーしなかったという。

それは、何故なのか。
少し、優の視点を見てみよう。

この局面で大事になってくるのは点差だ。
２着の多井との点差が１０８００点。満貫のツモでは捲られず、５２００点の直撃までならセーフだ。

ペンとペンの差は、そのターツの安全度にある。
は多井と亜樹の現物、は多井の現物。
対しては誰にも通っていない。

更に多井が、亜樹がを早くに打っていることから、の場況も悪くない。
なら、自力で引けるかもしれないという判断もあったという。

大胆でありながら、繊細な嗅覚。
オーラストップ目に立ち、ドラ４の手牌をもらって尚、優は相手との距離感を冷静に測っていた。

直後、が亜樹から出る。
当然これを仕掛けてテンパイ。

ピンズが何を引いても２つ以上の待ちになることから、ここは単騎に取るのがセオリーに見える。

しかし、優の選択は――

ドラの切り！
ペンに待ちを絞り、更にはドラをあえて見せるこの打牌。

試合後のインタビューで、優はこの切りについて、「多井の現物を残したかった」と語っていたが、実はそれだけではない。

多井の目線に立って考えてみよう。オーラスの多井の立場は、優に対して３９００までなら放銃しても２着で止まる。
つまりは、「安い手なら打っても良い」という判断になるのだ。