──いやいや勝又さん、私もほとんどのMリーガーの取材をしてきたわけですが、あの人達の麻雀バカ具合(失礼)も相当なものですよ
「もちろんそれを知って… の上です」
その後、勝又の口から語られるエピソードは全て麻雀に関わるものだった。
「マンガになるような面白いエピソードがなくてすいません」
強いと思ったプロの牌譜は全部取り寄せて読んだという話。
(当時は今のような牌譜ではなく、紙の牌譜である)
役牌のポン禁止… など毎日制限を変えながら打ったという話。
「ただの麻雀オタク… なんですよ」
打数や研究は決して努力とは感じておらず、ただただ麻雀が好きだったのだという。
「何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている」
これは羽生善治先生の言葉。
そう、私が一生敵わないと思うのは「この人、自分より麻雀が好きかも」と感じた瞬間である。
詳しくはぜひ追憶のMを読んでもらいたいが、勝又の半生を振り返り、自分よりはるかに頭の出来がいい人間が、自分よりはるかに麻雀に打ち込んできた話を聞き、この人には勝てない… と感じたのだ。
をツモってフリテンのテンパイ。打ダマテンと構える。
待ちとしては悪くないが、役無しドラ無しではフリテンリーチを打つリスクに見合わない。
このがツモれないまま、魚谷からリーチが入ってしまう。
そして…
カン材のをツモってくる。
魚谷の現物はのみ。
カンすると一発は消えるがドラが増える。
は山にいるのか、全員の動向はどうか…
麻雀IQ220の頭脳が高速で回転する。
「カン」
導き出された答えはカン。
新ドラは!
(ほーん)
(やばくね?)
ABEMAのスイッチャーの顔の抜き方もこなれてきたな… と感じたところで勝又がツモってきたのが
だった。これをツモ切ってダマテン続行。
「フリテンなのでリーチをしても出アガリできるメリットが得られず、だったら後の選択を残したほうがよいと判断しました」
あくまでも冷静な勝又が手繰り寄せたのは
アガリ牌のだった。ツモ・ドラ4の2000・4000。
大きなリスクに目をつぶってリーチといけばハネマンから倍満、もしかしたら三倍満もあったかもしれない。しかしこのツモがではなく脂っこいところだったらオリ有利になる。
オリの見極め能力、そして2000・4000をツモった後のゲームメイクに自信があるからこそのダマテンと言えるのではないだろうか。
ふんわりプッシュ
とはいえ、保留をしていてばかりでは勝ちきれない。勝又も
「手堅くいきすぎてしまうのが反省点です」
と語る。
次の局、迎えた親番だった。
まずは高宮がここからを切る。
を先に切ることによりの待ちを少しだけ強くできるという、チートイツに絞った選択だ。
これがズバリハマり…
テンパイ! タンキでリーチを打つ!
宣言牌のは2枚切れになった直後なので、強くしておいたが活きた格好だ。