そう信じる者しか救わない せこい神様　拝むよりは【Mリーグ2022-23観戦記12／13】担当記者:ZERO/沖中祐也

２人合わせて10枚をめくり合っているようなもので、決着は時間の問題である。
トップ目のたろうが松本のハネツモをケアして、差し込みにいくことも考えられそうだ。

しかしこの瞬間、たろうも

チートイツドラドラのテンパイを入れていた。
それに２人のアガリ牌は持っていない。

このままほっといても決着がつきそうだし、まだリーチもかかっていない松本のハネツモを恐れるよりかはまっすぐアガリに向かって10ptでも大きなトップを持ち帰りたい。

そう考えたたろうの背中に冷たいものが流れる。

「リーチ」

松本が亜樹のアガり牌であるを重ねてリーチに踏み切ったのだ！
かくして全員の名前の上に待ちが表示される。

松本は、現状リーチ・タンヤオ・赤１で、ハネツモには一発か裏ドラが複合しないといけない（もしくはの暗カンなど）細い道だが、松本も２人の気配を感じていて、あまりにも時間的猶予がないと判断したのだろう。

このリーチは大正解だった。
たろうが一発キャッチしたのが

松本のアガり牌である！
もし松本がダマテンにしていたらおそらくツモ切られ、松本による妥協の2600のアガリか、見逃しても亜樹の3900のアガリになっていて、いずれにしてもトップは取れていない。

たろうは、松本に通っていて他の2人に放銃できる牌を探すが、見当たらない。
こうしてたろうは力なく

松本の現物（かつ他の２人に放銃するかもしれない牌）であるを切り、テンパイを崩した。
たろうの待ち表示が空白になる。

逆に亜樹と寿人はビシビシと押していく。

…が、寿人の手が止まる。
この日、唯一の小考と言っても過言ではない。

なにやら亜樹も押していて、ツモってきたは２人に危険な牌だ。
それには通りそうだ。ソウズの４連形ならテンパイ復帰もできる。
そう考えた寿人は

を抜く。寿人の欄からも待ち牌が消えた。
そして次の巡目、皮肉にも…

亜樹からが打たれ、そして自身でもをツモってきた。
もう待ち表示が残っているのは松本と亜樹しかいない。

松本のカン１枚に対し、亜樹のは４枚いる。
結果は…

松本がラス牌のをツモ！
このとき、私は思った。運命というものがあるのなら、ここで裏が２枚乗ってハネマンになる… と。

ラス前にマンガンをツモり、このオーラス３人テンパイに追いつき、２人をおろし、そして相手の待ち牌が豊富な中、奇跡的にめくり合いに勝った。
運命がABEMASを勝たせに、そしてドリブンズをまくらせにきている。

松本が裏ドラをめくるとき、たろうは神に祈っただろうか。
松本が目の前の裏ドラに手を伸ばす。

裏ドラは乗らなかった。普通に乗らなかった。

たろうは松本が裏ドラをめくる瞬間も、その目をそらさずに凝視していた。

ツラいツラいツラいとわめいているばかりじゃ、心にシワが増えるだけ。
救ったり救わなかったりするせこい神様に祈るよりは、できることを積み上げるべきだ。

そういう意味ではラス前の緩めなかったテンパイ取りがトップにつながったといえよう。

俺らから麻雀を取ったら何が残る？
ドリブンズがそのままでいいわけないだろう。
見せてくれ、ここからの逆襲を。
それが最高のエンターテイメントになる。

超えてゆけ、イクラを。
反攻の狼煙は上がったのだ。