奪い合うのは点棒と人生── 村上淳が礎となったプロの舞台の悲愴なドラマ【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・1月13日】

リーチタンヤオ赤赤裏で8000。
アガリ自体はありがたいが、ツモアガリだったならハネツモで白鳥と800点差まで詰まっていたのに、
これでは次のオーラス白鳥とは10800点差もある。
マンツモでも届かない、雲泥の差の出アガリだ。

村上は、置かれた牌の並びはランダムだと20年以上前から唱えている。
運の介在する博打の道具であった麻雀で、勢いや流れを真っ向から否定して、
当時単身、麻雀の真理をはっきり主張して譲らなかった。

村上がいなかったら、私もこの【2マン】食い取られを──、
ああやはり流れが悪いんだな、と適当な言葉で消化してしまう人間だったかもしれない。

オーラス、村上にこのテンパイが入る。

【9マン】を切ってドラ3のカン【6マン】リーチ。
場には【8マン】が1枚出ていて、【6マン】のありかはわからない。
平素なら引っかけのカン【8マン】の方がアガリは拾えるかもしれないが、
これはリーチドラ3でツモって裏を乗せないとハネツモにならない。

当然の、枚数優先でカン【6マン】だ。

昔の利いた風なオカルト理論だと、「流れが悪いんだから逆を行け」なんて言われたりもした。
カン【8マン】にしろってよ。適当なものだろう?
こんなことが本当に横行していた業界だったのである。

村上が戦ってくれたから、私はそれに絶望しないでいられた。
そしてそういう麻雀プロは、何人もいたはずだ。

ここで小林にもテンパイが入る。

村上と同じく、オカルトバスターズとして私の道を照らしてくれたのも小林だった。
こうして、その二人が譲れない戦いをする。
それぞれの、人生を賭けて。

私が、昔の麻雀漫画と似たような、いやもっと悲痛な感傷を現代のMリーグに乗せて、
この勝負に心酔することをわかってはくれないだろうか。

村上のカン【6マン】は、4枚残りだった。
アガれるかどうかは結局、枚数であり、確率だ。

山にランダムに置かれたその牌を、村上が引き寄せる。
万感の思いを込めて、裏ドラをめくる。

3000・6000。3着から2着になる大きな、大きなアガリ。

これでも、ドリブンズはトップの量産が必須の状況であるため、ただ命をつないだだけかもしれない。
誰かが勝って、誰かが負けるゲームに、判官贔屓のような気持ちを抱くこと自体無意味なものかもしれない。

Mリーガーの入れ替え制度そのものは、多くの選手にチャンスを与える意味では必要だと思う。
成績が振るわなければ、その舞台を去る。それは当然のことだ。
だからこそ、この厳しいレギュレーションに置かれた選手たちのドラマを、
当人の功績や過去を含めて、最後まで見つめていきたいと思う。

他の誰にも代えがたい素晴らしい選手たちそれぞれが──、
ずっといて欲しいし、それは叶わない。

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