3/4の純情な守備意識【Mリーグ2022-23 インターバルコラム】文・越野智紀

3/4の純情な守備意識

文・越野智紀

これまでラス回避率は滝沢和典近藤誠一小林剛多井隆晴といった、それぞれ違った個性ながらも守備型に分類される選手たちの独占してきた個人タイトルで…

今シーズン勝又選手がラス回避率1位になった理由も、守備型だからなんです。

…いったい何を言っているのか分からないと思いますが、僕も何を言っているのか分かりません。

※そもそも麻雀には攻撃型も守備型も無い。自分の中でベストと思う選択をしているのだから、誰もがバランス型だ…という話は趣がないので無しにします。

実際に対戦した多くの選手から攻撃型だと言われている勝又選手。その特徴といえば…

・場況の鬼
・5ブロックへの愛情
・メンツ手とチートイツの両天秤に対する破壊衝動

…あたりが挙げられています。
この中でも勝又選手を攻撃型だと分類している多くの人が注目している特徴は、場況を重視した大胆なターツ選択でアガリをねじ込んでくる攻撃性の部分だと思います。

見えない部分を推測して攻撃の質と量を向上させるスタイルは、正に攻撃重視の麻雀と言えるでしょう。

今シーズンの勝又選手はアガリ率が24.7%で放銃率は9.2%という、非常に優秀なデータが出ています。
これは相手の手が悪いと見るや激しく攻め立て、相手から危険な雰囲気を感じれば素早く退路を確保。
これが剣道経験者ならではの感覚か、相手からは遠間で自分からは一足一刀の間合いを保って一方的に攻撃を繰り出し続けてきました。

同卓した相手からは攻撃型と言われる勝又選手ですが、当の本人はどこ吹く風で「攻撃型か?守備型か?」との質問に対しては「かなり守備型」と答えています。

今シーズン個人2勝目のインタビューの時にも「手堅く行き過ぎることが多いというのが自分の中の反省点の一つ」と、ここでも守備型を主張していました。

守備型とは何なのか?
勝又選手の麻雀の考え方の一つに

「自分のアガリ番は良くても25%なので、残りの75%の立ち回りが大事」

というものがあります。
これはアガリに向かう以外の工夫で他家と差をつけることも重要だという考え方です。
今シーズンの試合の中から、いくつか75%の中に入る守備的な局を取り上げてみて、勝又選手が守備型の選手だということを深く理解していきたいと思います。

最初の75%の守備は10月17日第2試合の南1局3本場
守備にも色々なやり方があり、安いところに協力するのは良くある話なんですが


このように1人離れたラス目の状況では安手に協力してサクサク局消化をしていけば、待っているのは淡泊な4着フィニッシュ。

そこで大きな横移動を期待してのアシスト狙いで、親の手を進めるために【東】を切ります。
時には誰かを知らず知らずのうちに傷つけてしまう作戦です。

これが注文通りの展開になり、前面に押し出された寿人選手が放銃。
アガった松本選手が抜け出す展開になるも、戦乱に乗じた勝又選手が最終的に2着まで浮上しました。

次の75%の局は10月28日第1試合南2局

トップと微差の2着目の勝又選手は本来アガリに向かいたい手牌を貰っていましたが、瑞原選手の【赤5マン】切りがあまりにも強烈。
ラス目で【赤5マン】を打ってきた状況から考えると、瑞原選手には早さと高さを兼備した手が入っていそう。
相手の間合いに入るのは危険だと判断して、黒沢選手から出た喉から手が出るほど欲しい【南】をスルー。
トップ目の日向選手の親を落とすのは瑞原選手に任せて降りる準備を始め、点棒横移動で一局消化に成功しました。

また人読みも駆使する勝又選手は10月13日第2試合東1局2本場

親の瀬戸熊選手から2巡目に【7マン】のリャンメンチーが入ると

副露率の低い相手の早い巡目のリャンメンチーは危険すぎると即座に店仕舞い。
さらに瀬戸熊選手の大物手成就を阻むため他家の手が進むのを待ってから【發】【白】をアシストしていきます。
瀬戸熊選手の打ち筋を考えれば、1枚目の【7マン】を2巡目にチーして役牌のダブルバックのような手は例えドラが暗刻でも出てこないと読めていたのがここでは大きかったです。

狙い通りに【白】が鳴かれて危険な土俵に他家を上げることに成功した勝又選手。
自身は遠くから優雅に観戦する作戦を遂行しましたが

この局は残念ながら結果は振るわず、瀬戸熊選手のツモアガリで終わりました。

また際どい攻守の見極めにも人読みを利用。
先ほどと同じ試合の南4局1本場

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