鎬を削る最終局面──! オーラスの絶対強者仲林圭【須田良規のMリーグ2022-23セレクト・4月17日】

セミファイナルの激戦が凄まじい。

チーム数が絞られ、それぞれの試合間隔が短くなっているためでもあるのだが、
連日連戦、エース級ばかりの濃密な対局が繰り広げられ、
一進一退の順位変動が観る者を飽きさせない展開が続いている。

そんな中、目を見張る活躍を果たしているのがU-NEXT Pirates仲林圭であったと思う。

「オーラスの鍔迫り合いが得意なんですよ」

仲林はそう語る。
アガリトップやテンパイノーテンでかわすギリギリの状況、
そんな一瞬の予断も許されない緊迫した局面での判断に、仲林は絶大な自信を持っている。

もちろんそんなものは、簡単な手のアガリ競争に尽きると思う人もいるかもしれない。
しかし仲林は、相手の動向把握と自身がどう見えているかの工夫、終局間際に至るまでの諦めない思考の持続に、自身の強みがあると自負している。

4月17日(月)第2試合

セミファイナル2週目のスタートで、ここまでチームは最下位。
5位とも199.1pt差とかなり離された位置であったものの、初戦に鈴木優のトップがあってそれを131.9pt差まで詰めた。
とはいえボーダー4位までの道のりはまだまだ遠く、
ここで仲林の双肩にかかった期待と重圧がどれだけのものかは、想像に難くないだろう。

何といってもU-NEXT Piratesはセミファイナルの最終戦を打てない。
少しでも有利な状況でその日を迎えるために、目前にぶらさがったトップを取りこぼすわけにはいかないのだ。

南4局2本場、仲林は38900点持ちのトップ目。
しかしTEAM雷電黒沢咲が37900点とその差は1000点であった。

南家の仲林は9巡目でまだこの手牌。

このとき親番の渋谷ABEMAS白鳥翔は26400点持ちでこの形。

西家の黒沢に至ってはこんなイーシャンテンである。

仲林の手牌は圧倒的に遅い。
このとき北家のKONAMI麻雀格闘倶楽部滝沢和典から【3ピン】が放たれた。

これを仲林がポンしたのである。
手牌はバラバラ、クイタンが彼方に見えるくらいだ。

全体牌図はこうだった。

自身の手は、まずアガリは見込めない。
ではここで、仲林のできることは何だったか。

黒沢の早い手は見えないしどうしようもないが、実は仲林が注意したのは白鳥の捨て牌であった。
手出しで【7ピン】【8ピン】と切っており、ドラが【6ピン】である。

つまり白鳥は、【7ピン】【8ピン】が不要なほどに手牌のターツが揃っており、
そして【4ピン】【5ピン】を持っていることが予想される。

白鳥は、【3ピン】【6ピン】が欲しいのだ。

よってここは【3ピン】が薄い事実を敢えて見せることで──、
白鳥にメンゼンで高い手を作ることを断念させ、早い仕掛けを誘発しての局潰しを目論んだのである。

黒沢とのアガリ競争であるとはいえ、11400点差の白鳥に親マンクラスを許すわけにもいかない。
白鳥が仕掛けてアガらざるを得なくさせること、
そして、ひいてはそれが、結果黒沢のアガリを阻止できるかもしれないのである。

この【3ピン】ポンの後、白鳥は場に放たれた【7ソウ】をポンする。

手も進まず、仲林の思惑通りにメンゼン進行を諦めてのテンパイに向かったのだ。

【9マン】は4枚切れとはいえ、下家の仲林の仕掛けを受けているので鳴かれない【8マン】の方を切っている。
仕掛けのメリットはこのように相手の打牌を縛る効果も大きい。

15巡目、仲林の手はこうなる。

もちろん4枚目の【3ピン】は白鳥に打てず、今引いた【3ソウ】は白鳥にも、【發】を鳴いた滝沢にも打てない。
ここで、抱えていた安全牌の【北】を落とす。
人を食ったように。

ここからの超終盤も、全体牌図で見た方が仲林の執念の思考がわかるだろう。

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