熊、鳥、海豹が暴れる惑星Mリーグに近藤誠一が帰ってきた!【熱論!Mリーグ】

熱論!Mリーグ【Tue】

熊、鳥、海豹が暴れる

惑星Mリーグに

近藤誠一が帰ってきた!

文・ZERO【火曜担当ライター】2018年12月4日

この男が戻ってきた。

11/9の対局以来、約1か月ぶりの登板。その1か月の間に最高位決定戦を勝ち切り、威風堂々と戦線に復帰してきたのだ。近藤が留守の間、茅森と魚谷が奮闘していたが、ここのところは調子を落としていて、チーム(セガサミーフェニックス)の成績も下降線をたどっていた。

 

ドラゴンボールでも悟空は必ず遅れてやってくる。

「茅森、魚谷、大丈夫か。仙豆でも食ってそこで見ていろ。」

と言わんばかりの近藤。復帰初戦をどう飾るか。

東1局。その近藤がいきなり魅せる。

このドラが3枚ある手牌で、対面から打たれたをスルーしている。いくらドラ3の手牌とはいえ、このようなバラバラから仕掛けたりしないのが近藤の打ち筋だ。

「大きく打ち、大きく勝つ」

麻雀が戻ってきたことを実感する。

4回目の最高位、という素晴らしい実績を見ると、この打ち方が競技麻雀における1つの答えなのだろうな…と感じる。(同じく最高位3回の村上淳もメンゼン型だ。)

ではMリーグのルールで通用するのか…はまた別の話なのだが、それはルールというより周りのメンツによるところが大きい。

仕掛けの軽い人が3人相手だと、近藤のような「メンゼン高打点型」は速度負けして苦しくなりがちだ。逆に腰の重い打ち手が3人いると速攻型は3人いるうちの誰かの高打点に刺さり、それが致命傷になってしまう。

今日のメンバーを見ると、瀬戸熊・勝又…ともに比較的腰の重い打ち手で、白鳥が万能からやや軽い打ち手…つまり3対1で、近藤の麻雀が輝くメンツだと予想する。

 

近藤の麻雀は3段目になったところからが勝負だ。普通の人はケーテンを考える場面だが、そこが近藤のフィールドであり、メンゼン型が揃うとその場面も増える、という寸法だ。

ツモ番はあと2巡、というところでテンパイまでたどり着いた。久しぶりに見る左手の閃光。俺だけのフィールド。

しなった左手から繰り出された牌は横に曲がっていた。あと2巡で1枚ずつ切れているシャンポン待ちだが、リーチを打てば一発かハイテイが必ず付く。鈍いパンチだが、当たったら痛い。

なお、対照的だったのが勝又だ。実は近藤のリーチの2巡前

このピンフドラドラをダマに構えていた。

解説の園田もかなり不思議に感じていたようだが、これはチームポイントを意識しての選択だと思う。この日の試合前、勝又の所属するEX風林火山は150.5ptの2位につけており、3位のアベマズ白鳥の親を蹴ることはファイナル進出率に大きくかかわってくると考えたのだろう。

「まだポイントを意識するような状況ではない」

これまで、多くの選手が口にしてきたフレーズだが、折り返しを経過して、いよいよその均衡も崩れ意識が変わってきたように感じる。

結果的に近藤のリーチも勝又のダマもアガリには結び付かず、2人テンパイで流局した。

そして東3局1本場。近藤の親番だった。

瀬戸熊がここからを打った。かなり違和感のある打牌だ。

しかし、近藤や瀬戸熊のような「腰重い派」からすると通常の選択なのだろう。どこが分岐点かというと「3900を高打点と考えるか」だと思う。瀬戸熊はこの手からを切るくらいだからを鳴いて3900でアガることはサラサラ考えていないハズだ。ソウズの4連形を生かし、リーチしてツモアガろうという発想だ。

(なお、どこぞのセレブはさらに基準が一段階上で、ハネマンからが高打点だと思っている。)

ドラのをツモって打。マンガンを基準に意識していることがよくわかる選択だ。

を引き入れて打リーチ。これに白鳥が応戦する。

ここからをチーし、比較的通りやすそうなを勝負してバックのテンパイ。完全イーシャンテンを放棄してまで…と思う方もいるかもしれないが、このは4枚目であり仕方ない仕掛けだと思う。アガることができたらラッキーだし、厳しいところを持ってくるようなら…と切っていけばいい。しかし…

そう、そのは瀬戸熊のアガリ牌だった。すぐに無筋を掴んだ白鳥は現物を切ってオリるが、安牌がなくなりを選んでしまったのだ。

放銃した白鳥の手牌。

これはではなく、を切るべきではないだろうか?

が4枚見えており、放銃確率も放銃時平均打点もの方が低い。

(ドラがなので、のシャボ待ちに放銃するケースはというような形からを先に切ったケースくらいしか考え難く、より放銃確率はかなり低い)

ハードパンチャーに囲まれ劣勢を喫する白鳥。冷静を努めてはいるが心中はさぞ悔しい思いをしていることは想像に難くない。マスターズ連覇にモンド杯優勝、と、実績は残しているものの、このMリーグのメンツからするとまだ新人であり、結果を出し続けないと生き残れない。白鳥の著書にもそんな「男性プロの悲哀」が描かれている。ここで結果を出さないと、企業も次に契約してくれるとは限らないのだ。チーム(渋谷ABEMAS)の2人が好調の中、-129.1と不調の白鳥自身が一番結果を渇望しているのは間違いないだろう。

東4局一本場。その白鳥が魅せる。

まずはここから打。受け入れは減るものの、イッツーを見た一打だ。…かと思われた。次の巡目に

をツモってきて予定通りイッツーに構える…いや!

!ジュンチャンだ!マンズをどっちから払うかに注目していた解説と実況もびっくりしている。

たしかにあとから冷静に考えてみれば自然な一打だ。が必要なイッツー。が必要なジュンチャン。必要な牌の種類は同じだが、ジュンチャンの方が高い。ドラがならなおさらだ。白鳥はを切った時点でこの変化も考えていたのだろう。

これだけ点差をつけられた場面で、そしてポイント状況も逆境の中、しっかりと高打点の種を残す白鳥の目は、まだ遥か高い大空を見ているようだった。

しかしこの局にはこの男が潜んでいた。近藤の4巡目。

チートイツのイーシャンテンから何を切るか。

(関係ないが、近藤は考えるときにこうやって河を触る癖があり、見た目的によくないので少し気になる)

近藤は

を切った。を切ればメンツ手とトイツ手を天秤に進めることができる。しかし、先ほども言った通り、近藤や瀬戸熊にとって3900は高打点ではない。うまくいったらハネマン・倍満まで見えるこの手材料ならなおさらだ。直後にテンパイしたときに中待ちでリーチが打てるようにチートイツ一本に絞ったのだ。そして

狙い通りドラを引いてテンパイ!しかし近藤は

を縦に置いた。ドラがの後に切りリーチでは、自身の捨て牌が怪しすぎると感じたのだろう。近藤の捨て牌を客観的に見ると、何をやっているかはわからないが、ドラ受けを嫌うくらいだから高いことは間違いなさそうだ。ダマっていれば無条件で出るような中も、リーチなら止められかねない、と判断したのだと思う。

その結果、すぐにトップ目の勝又からがこぼれてマンガンのアガリ。

リーチしていたら勝又は出さなかった牌だ。

残しからのダマテン…という判断でしか見ることのできなかったデバサイ(出場所最高)が今ここに実現した。

3人のトップ争いが激しくなってきた南2局。

今度は近藤にこんな手牌がやってきた。

ドラがであることもありチャンタ三色が見える…と思っていたら近藤はを切った。

が2枚見えていて123は苦しく、状況的にも2000点で局消化も悪くない。それならば安全度の高い牌を残して…ということだろうか。

を重ねて打。この変化も見越していたのだろうか。近藤の選択は何もかもうまくいくかのようだ。

すぐにを鳴いて打

チャンタドラ1、3900のテンパイ。その直後の勝又の手牌

を切りたい場面。どちらも1枚切れていて、シャンポンはない。近藤の捨て牌を見ると、を先に切っていてポン⇒打だ。リャンメンも考えられない。あとはペンチャンとカンチャンだが、を引っ張るよりはを引っ張るケースの方が多いだろう。

勝又はその読みを入れて打とした。これが早い段階でが切られていたらの方が危険になる。(よりの方が先にを切りやすいため)

そうこうしているうちにラス目の白鳥からリーチが入る。その白鳥のリーチを受けた近藤の手牌は

前巡に中筋のは押したが、このでオリを選択。を切った。上の3人が超僅差とはいえ、一応近藤はトップ目。白鳥のリーチに放銃して3着、最悪ラスになるのは負荷が高い…という判断だろう。

そしてその近藤の切った4枚目のを見て勝又が

(誠一さん、オリましたね?じゃあ私がいきますよ)

と言わんばかりに、それまで近藤の待ちだったを切る。まさに牌で会話しているシーンだ。するとすると、最後方から瀬戸熊がやってきた!

この手で追いついてリーチ!さきほどオリた近藤と違うのは、親だということと、3着目であること、そしてあと1巡とはいえは良さそうに見えること…だろうか。

しかし宣言牌のが白鳥に御用。リーチ赤1裏1、5200のアガリとなった。

を見切って守備も意識し、テンパイした後もでしっかりオリた近藤。それをみてから押し返しを図った勝又。そして最後に追いついた瀬戸熊。アガった白鳥。4者の思惑が交錯し、非常に見応えのある一局だった。

次の南3局一本場。またしても近藤にファーストテンパイが入る。

はかなりよさそう。しかし四暗刻も捨てがたい。難しい選択だが、近藤はを切ってダマに構えた。しかし次の巡目に

リーチを敢行。このツモ切りリーチに対し、近藤は

「心の整理をするため」

などと語っていたが、これは近藤の煙幕だと思う。

この

「1巡ダマにしてツモ切りリーチ」

は最近の流行りでもあり、しっかりとした理屈を並べることができる。まず、近藤はこの1巡でが出ても見逃していたハズだ。そうしておいて同様にツモ切りリーチを打つ。1巡待つこと自体、相手の手を自由に進めてしまうが、役満の手変わりがあるのなら待つことに対する損もかなり軽減される。そしてツモ切りを見せることによって悪い待ちなのでは?と思わせたり、この1巡で状況が変わったのか?などと、いろいろ考えさせたりすることができる。

・一発でをツモってしまう

・相手に自由に打たせてしまう

というデメリットに対し、役満への手替わりを見つつ相手の思考に一石を投じることができる

「ツモ切りリーチ」

はかなり有効であると私も感じる。

このリーチに対し、勝又が追っかけ、そして白鳥も追いつくが

近藤がツモって4000オール。試合を決定づけた。

この半荘トップを取った近藤が次の半荘も連闘。これまで戦えなかった思いを卓上にぶつける。その2回戦も2着にまとめ、セガサミーフェニックスは5位に浮上した。

混沌とする3位~6位までのファイナル進出争い。

個人の好不調も浮き彫りになってきて、各チーム各メンバーともに思惑が交錯してきた。

ABEMASは本日の対局でこれまでの貯金をほとんど吐き出してしまったし、Piratesも不調な印象はないのだがトップが取り切れずに未だマイナス圏だ。それを追うように雷電がいて、そして近藤が戦線に復帰したフェニックスがいる。

セガサミーフェニックスは、近藤の復帰により、その名の通りフェニックスのように上位チームに食い込んでいくのであろうか。

年末に向けて、ますますMリーグから目が離せなくなるのであった。

1回戦

(近藤+57.4 勝又+11.5 白鳥-14.0 瀬戸熊-54.9)

2回戦

(勝又+56.8 近藤+9.9  瀬戸熊-15.1 松本-51.6)

 

ZERO(ゼロ)

麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で『傀に学ぶ!麻雀強者の0秒思考』を連載中。

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