桜が諦めず、懸命に手を伸ばした先に――
一片の桜の花びらが舞い降りた。
「やった……! でも怖いよ……!」
桜の口から出た言葉は、紛れもなく本音であったのだろう。
錚々たるメンツに囲まれ、迫力のある仕掛けに囲まれ。
それでも前に進むことしかできなかったあの状況は、怖いと形容せずしてなんとするのか。
しかし、掴み取った。
怯えていたって良い。掴み取ったそのアガリは、桜が自力で歩いて掴んだものだ。
さあ、まだ足りない。
妹のルイスを痛めつけられた分まで。
続く2本場。
この牌姿から、桜は切り。
の対子落としをしたいが、まだ暗刻もみたい。
だけを切るならば
この引きでもう一度考え直すことができる。
ここで考えを改め、の対子落としへ。
カンが埋まる……!
アガリが見えてきた。イーシャンテン。
「ある……! 負けてられないよなあ」
そうだ、負けてなんかいられるか。
昨年のMVPがなんだ。今日の主役がなんだ。2人の因縁がなんだ。Mリーグ覇者がなんだ。
ただこの1回勝つだけなら。仮に実力差があったとしても決して無理なんかじゃない。
それが、麻雀の面白さで。
「たーのーむー! まだ遊んでいたいよ!」
辿り着いた。リーチ。
そうだ、まだ遊んでいたい。夢のような時間を、もっと長く――!
掴み取った4000オール!
これで桜が3着に浮上!
桜の舞踊は終わらない。
この形からをポン。
一時的に雀頭は無くなるが、役が1つ確定し、受け入れが広くなる。
白雪からリーチが入る。
が、安全度と重ねやすさで残しておいた字牌のおかげで、安全に手を進めることができる。
実は白雪の当たり牌だったを連続で捉えた後……
歌衣から討ち取った。
で3900のアガリ。
これで2着まで浮上。まだ終わらない。
あの時一片だけ落ちてきた桜の花びらは、今や桜吹雪となっている。
その中心には一際輝く、桜姫がいた。
どこまでだって行こう。
時間の許す限り。この音楽が続く限り。
4本場。ついにこれ以上の連荘は危険と判断したトップ目松本からリーチが入る。
2着まで来たこともあり、ここでオリに回らざるを得ないかと思われたが。
、と引き入れて話が変わる。
メンタンピンのイーシャンテン。
この形になってしまえば。
を強く押す価値が生まれる。
2着目の親からのプッシュに、松本も肝が冷えたはずだ。