【 #神域リーグ2023 第三節第9試合観戦記】ひとひらの桜が舞い落ちた ゼウスが誇る桜姫 桜凛月の奮闘【文 #後藤哲冶 】

リーチと打って出る。

「頼む～！　おねがい！」

に変化してリーチへ。
これならば十分勝負に値する待ちになった。
これくらいは勝ちたいところ。

が、軍配が上がったのは、白雪のペンだった。
桜目線、自らが雀頭に使っているは、どんなに多くても残り２枚しかない牌。
のリャンメンでリーチを打って負けるのは、悔しい。

「なんでペンツモるの……？　親被り……」

リーチ棒を含めて、桜はここでも5000点の失点。

東３局は松本が歌衣から8000をアガって、東４局へ。

歌衣がのカンをした後、リーチに打って出てくる。
それを受けて１副露の桜。
イーシャンテンだが通っている牌が少ない。ここは積極策でをツモ切るが。

これが歌衣に捕まる。
8000点の失点で、ついに桜の点棒は残り5000点を切った。

「落ち着け、大丈夫」

自らに言い聞かせるように。
桜が自らを鼓舞する。

桜がドラフト指名を受けた時のツイッター。
当時は、指名を受けられる確信はなかったのではないかなと思う。

そうして自身初の神域の舞台となった前節では連投で勝利を飾った。
しかし、まだ神域リーグは始まったばかり。

この試合は妹のルイスがラスを引いた直後ということもある。
このままは、終わりたくない。

南２局１本場、やってきたのは、桜の最後の親番。

配牌は……悪くはない。
が、良いとは言い難い。ドラも赤もなく、愚形も残っている。
とにかく、真っすぐ進めるしかない。

僅か２巡だった。
歌衣が切ったを白雪がカンでチーしたかと思うと、今度は桜が切ったを歌衣がチー。

更に歌衣がをポンして……呼応するように白雪がをチー。
因縁のある２人が、ホンイツでやり合っている。

――置いていかないで。

言葉にすることはなかったが、桜は焦りを感じていただろう。

しかし、ここで焦って必要のない鳴きをしてしまうと、上家に座る最高峰の打ち手松本は簡単に桜の手牌が進むような牌を切ってはくれない。

四面楚歌。
まさにその言葉が相応しいこの状況。

持ってきたのは生牌の。
ホンイツが２人いる状況ではあまりにも厳しい牌。

それでも切り出していく。
活路を見出すには切り開くしかない。
白雪（はくせつ）が降り積もり、凍えるような寒さに襲われながらも。
桜の姫は歩を進める。

を引いた後、白雪から出た。
これならば、ポンしてカンのテンパイだ。
松本から鳴ける牌が出なくとも、これならば勝負になる。

待ちは、良いとはとても言い難い。
たったの１種類。そしてピンズはホンイツをやっている歌衣がいる。
それでも。それでも最後の親番でようやく辿り着いたテンパイ。