応援配信も、公式配信も色めき立つ。
勝負の天秤は間違いなく今、ヘラクレスとアトラスの間で揺れている。
何かあと1牌が天秤に乗れば、優勝はどちらかのチームに訪れる。
「テンパれなきゃ終わるか……」
条件がわからないなか、空星も懸命に最適解を探し続ける。
テンパイを組まなければ、親が落ちる。
が、朝陽に打ったら4着。そうなればほぼ負けなのは、なんとなく感じていたのかもしれない。
空星に、冷や汗が流れる。
押す。咲乃が押す。
アトラスの2連覇へ、腕を振り続ける。
ヘラクレスか、アトラスか。
チーム優勝の行方は――
その差、1.6pt。点数にして、僅か、僅か1600点。
神域の祭典は、ヘラクレスの優勝で、幕を閉じたのだった。
各種個人賞は、以上のように決まった。
半荘最高スコア部門が、歌衣メイカ。
それ以外の3部門を空星きらめが制覇する形に。
そんな大活躍の空星だったが、試合後。
空星は一人反省していた。
優勝という栄光は掴みながらも、その最後の内容は納得いかなかったよう。
「一番酷い麻雀打っちゃったなっていう感覚があって」
そう語る空星には、どこか悔しさが混じっていた。
けれど胸を張って欲しい。シーズン中、素晴らしい成績を残し、その打牌もとても素晴らしいものだった。
ヘラクレスのチーム優勝は、空星無くしてあり得ないのだから。
この経験すらも、空星は受け止めて、強くなってくれるはずだ。
もっともっと強くなった空星の姿を、また次の機会で見られると信じて。
歓喜の瞬間は、校歌と共に。
爽やかなメロディに、松本監督も「しまらねぇなあ」と苦笑い。
表彰式の内容は、是非アーカイブで確認してほしい。
素晴らしいコメントと、選手達の声を全てまとめることはできないが、本当に素晴らしい表彰式だった。
これで、神域リーグ2023は幕を閉じる。
……けれど、彼らと麻雀に、終わりはない。
「雀聖目指します!」
「麻雀続けます」
「来年も出たいです」
これはまだまだ、続いていく物語。
麻雀を続けている限り。
麻雀を愛していく限り。
最高に楽しい時間はまたやってくるはずだから。
神域リーグ2023優勝は、チームヘラクレス。
そして今宵の勝者は、神域リーグを戦った全員と、そしてこの最高の麻雀を楽しんだ……全ての人。
ありがとう神域リーグ!
そしてまた、きっと。
最高位戦日本プロ麻雀協会47期前期入会。麻雀プロ兼作家。
麻雀の面白さと、リアルな熱量を多くの人に伝えるため幅広く活動中。
Twitter:@Kotetsu_0924