一人の漢と麻雀の物語
連覇へ、そして麻雀へ
歌衣メイカの想いよ届け
去年の話をしよう。
チームアトラスは、神域リーグ初年度の優勝チームだ。
その中で、歌衣メイカは獅子奮迅の活躍を見せ、MVPを獲得。輝かしいほどの成績を残して見せた。
昨年アトラスを率いた監督村上は、年度が新しくなった今年も迷いなく、歌衣メイカを1位指名。
「まあ、アトラスの顔なんでね」
「彼を外すわけにはいかない」
麻雀のみならず、プライベートではカラオケに行ったこともあったそう。
村上監督と歌衣。
2年連続同じチームで戦ってきた2人は、確かな絆があった。
そんな中で村上が、前節にあたるセミファイナルで歌衣にだけ少し、零した話がある。
「仮に神域が来年続いた時。僕Mリーガーじゃなくなっちゃったから、ワンチャン監督外れる可能性もあるんだよね」
最高峰の麻雀プロリーグ『Mリーグ』。赤坂ドリブンズに所属していた村上だったが、残念ながら今年でその席を外れることになってしまったのだ。
神域リーグは初年度、MリーガーとVtuberがコラボする企画として生まれた。
今は「麻雀トッププロ」と記載は変わっているが、来年がどうなるかはわからない。
「でも、アトラスで2連覇した監督ならさ、続けられるかもしれないから、やっぱり優勝、したいよね」
それは、村上の本心であったように思う。
村上自身が、この神域リーグを心から楽しみ、そして神域リーグの良さを周りに伝えてくれていることは良く知っている。
麻雀プロが集まる場で、私はたまたま横を通り過ぎただけだったが、村上が本当に楽しそうに神域リーグを皆に勧めている姿を見たことがあった。
「……監督のためにも、勝ちてえな」
優勝へは、トップが必須。
チームアトラスとして。神域リーグ2連覇の夢へ。
”漢”歌衣メイカが、ファイナルの舞台へ足を踏み入れた。
ファイナル第1試合
東家 風見くく (チームグラディウス)
南家 歌衣メイカ (チームアトラス)
西家 渋谷ハル (チームアキレス)
北家 緑仙 (チームヘラクレス)
東1局
歌衣がを引き入れてイーシャンテン。
が待ちとして優秀なこと、は自身で1枚使っていて少ない事から、と切ってとのイーシャンテンに構える方針。
だがここで、歌衣はいきなり打とせずに、を切った。
「これ引き次第ではリャンペーコーの可能性がある」
、と引いた時のみ、リャンペーコーという役ができる。細い線だが、高打点の香りは逃さない。
を残す進行をし続けて、待望のを引き入れた。
これで外し。最高打点が見えてきた。
渋谷から出たも、風見から出たもスルー。
歌衣は見極めていた。周りの状況、そこから導き出す、己の最適解。
歌衣が指導を受けている昨年の神域リーガー鴨神にゅうとの勉強配信で、こんな一幕があった。
「安い手に対して押す意識を持ちましょう」
鴨神が歌衣の苦手分野として挙げたのは、相手の安い手に対してオリすぎているという点だった。
副露に対しての警戒心は大切だが、時としてそれは、自らのアガリを妨げることになりかねない。
相手が安いとある程度わかったならば、迷いなく踏み込むことも大切なのだ。
それを踏まえて、状況を戻そう。
「鳴かない……周りが安い……勝負時……!」
「恐れるに足らず。(速度)合わせる必要ない」