困り顔の浅見。瑠美も戦々恐々とする顔芸の持ち主かもしれない。
しかも、浮いているは
高宮のアガり牌なのだ! 大ピンチ!
一発を受けた浅見がツモってきたのは
無筋の。
一旦、1枚切れのを切る選手がほとんどなのではないだろうか。
だが浅見は手拍子で切らず、しっかり考える。
真剣な眼差しで卓に入り込んでいく。
そう、この表情だ。
いつも心にユーモアを ②
(回想シーンの続き)
昨年、私は浅見さんととあるタイトル戦のいいところで同卓。
浅見さんは卓に座るやいなや背筋を伸ばし、真剣な眼差しで牌と向き合っていた。
印象的だったのはオーラスである。
浅見さんはラスを引かなければ勝ち上がりという条件でラス目に甘んじていた。
3着を逆転するためにはマンガンツモが必要な状況。
ただ手が入らなかったのか、最後のツモ番を迎えてもアガることができなかった。
そこで浅見さんは仕掛けている親に放銃することを考えた。
このときはClassicというルールで、親はテンパイでも連チャンしないという特殊なルールだったからだ。
浅見さんは、ここぞという親の危険牌を打ち抜いた。
強打するわけでもなく、当たってと祈るわけでもなく。
ただただいつもと同じように、凛とした表情を保ち、前だけを向きながら危険牌を切ったのだ。
「ロン、2900」
この放銃により、条件はさらに悪くなったが、それでも望みは繋がった。
結果的には浅見さんの延命作戦は実ることなく、悔しいラスを引く。
差し込みにいって負けただけの話ではあるのだが、私は最後の最後まで諦めず、かといって感情を揺るがすことなく、いつものリズムで差し込みにいったこの一打のことが強烈な印象として残っているのだ。
その瞬間は、明るいお母さんではなく、どのような結果になろうとも受け止める覚悟を持った1人の麻雀プロだった。
(回想シーン終わり)
さてを一発キャッチした場面に戻る。
先ほどと同じである。早いリーチは何が当たるかわかったものではない。
自分がそこそこのチャンス手であるならば…
しっかりと押す!
これはドラも切るという意志の表れでもある。でもそのは高宮のアガリ牌…
だがそのデス牌にがくっついた! はさっき切ったばかりの牌だ! おかえり!
を落として、二軒リーチになったところで
をチーしてバック(後付け)のテンパイ。
次に掴んでしまったのが
2人に通っていないである。
いくら親とはいえ、バックのテンパイで押していいものだろうか。
さすがに困った表情の浅見。
・完全な安全牌がないこと
・はワンチャンス
・相手の手を潰すというリターンも大きい
ということから
しっかり押した。
浅見の通り名は「守備を忘れた特攻シンデレラ」である。
一発で通した、そしてこの。
リスクを背負った先に