熱論!Mリーグ【Fri】
小林剛は“ビタ止め”を
するべきだったのか?
文・阿部柊太朗【金曜担当ライター】2018年11月23日
ゴアテックスという素材をご存知だろうか? この素材には水滴よりも小さく、水蒸気の分子よりは大きい穴が開いている。 そのため、水は弾くが水蒸気は通すという能力を持っている。 例えばこの素材をレインコートに用いれば、雨はしっかりと弾いてくれる上に、中の汗や湿気などの水蒸気は外に通すことができる。したがって従来のレインコートのようなジメジメによる不快感を起こさない。 不必要なものは通して、必要なものだけは止める。 麻雀もそんなことが出来たらいいのだが。
開局親番の小林の手牌。
をポンしてタンヤオのみのテンパイ。
下家の多井がドラポンを含む2フーロをしているため、
の押し引きで長考している。
さて切るべきか?止めるべきか?
これだけではなんのこっちゃ分かりやしない。
時間を巻き戻して多井の仕掛けを牌図で振り返るとしよう。 局面が動いたのは8巡目。
①黒沢が切ったドラのを多井がポンして打 次巡、
②多井は何か(以下Xとする)を引いて打
単純なターツ落としならば、非常に大切な情報だ。
◆手の内にはよりも優秀な待ちが残っている
◆⇒と切っているので、にがくっついたりしても採用しなくてもいいほど手が整っている そして最も大事なのは
◆この瞬間はテンパイしていない可能性が高い ということだ。 ポンしてからターツを落とすということは、①の瞬間はイーシャンテン以下であることが濃厚。 そして②の瞬間にXを引いて打。 このXは3つのパターンが考えられる
・有効牌
・よりも安全度の高い牌
・フォロー牌
有効牌は多くても6種類程度だが、それ以外の牌の種類の方が圧倒的に多い。 手出しが入ったからといって手が進んだと考えるのは早計だ。 以上のことからゴウテックスは多井の切ったをポン、
通っていないを切ってテンパイに取った。
は水蒸気、不必要なので通す。 すると多井は次巡、
③を手出し
これによりXがだったことが判明した。 ここでもまだテンパイの可能性は低いと言える。
・より安全な牌
・フォロー牌
を引いた可能性が高いからだ。 また仮にテンパイしていたとしても、多井の河に情報が少ないため当たり牌が絞り切れない。 そのためゴウテックスは終盤に通っていないを切った。
も水蒸気、不必要なので通す。 ④をチーして打 これにより多井はかなりテンパイ濃厚となった。 そして迎えるのは冒頭のシーン。 多井に対して当たりそうな牌は限られてきている。 ゴウテックスは長考の末…. このを切った。
・ツモられても4,000点の失点
・テンパイ料&親の連荘
・のワンチャンス
といった理由だろう。 結果的には放銃になってしまった。 しかし大切なのは放銃をしたことではなく、思考のメカニズムを知ること。 よく勘違いされるが、麻雀プロは当たり牌を1点で読み切っているわけではない。 可能性の高低で押し引きを決めているのだ。 11月16日の対局で小林が2軒リーチに対して四暗刻をテンパイしたが、を止めて降りたことが話題となった。 実際にはリーチの当たり牌だったが、小林はが絶対に当たると思ったからビタ止めしたわけではない。 2人に対してが当たる確率が高く、通したところで自分のアガりの確率が低いと判断したまでだ。 先ほどの局面。 小林は「以外にも当たる可能性のある牌は残っていて、通せばそれに見合うリターンを受けられると思った。」と言うだろう。 読み違えてが通ると思って切ったわけではない。 当たることもあるが通ることもあって、何万回と繰り返したときに切った方が得だと判断したまでだ。 やはりゴアテックスなど理想に過ぎない。 麻雀は確率のゲームなのだから。
阿部柊太朗
最高位戦日本プロ麻雀協会所属。オンライン麻雀「天鳳」の牌譜機能を駆使した超緻密な観戦記が話題に。ブレイク間近の若手プロ雀士。
(C)AbemaTV
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