負けても負けても、白鳥翔が飛び続けなければいけない理由【熱論!Mリーグ】

熱論!Mリーグ【Tue】

負けても負けても

白鳥翔が飛び続け

なければいけない理由

文・梶谷悠介【火曜担当ライター】2018年11月6日

「なあ今まで見てきたプロの中で一番強かったのって誰?」

数年前働いていた雀荘で私は同僚にこのような質問をした。その同僚は経験豊富で雀力もあることからどのような答えが返ってくるか興味をもったのだ。そのとき私はプロ入りしておらず一ファンにすぎなかった。

「そうだなあ、白鳥プロは強かったねえ」

失礼ながら今ほど知名度もなかった頃に白鳥プロの名前を聞いたときは意外な思いをした。

(そうか、たまに聞く名前だけどそんなに強いのか…)

それ以来、白鳥プロは相当な実力者だというイメージが私の中に残ったのである。

その白鳥プロが今苦しんでいる。

白鳥翔(ABEMAS)個人19位 ▲134.8 

麻雀はいかに実力があったとしても偶然という魔物を味方にできなければ勝ちは巡ってこない。麻雀プロはそれを知りつつも必死に結果を求めてあがき続けるしかない。

この日の白鳥プロはいつも以上に勝利に懸ける執念を感じた。それは現在ABEMASでただ一人自分が大きくマイナスをしていることと無関係ではないだろう。

起家 魚谷侑未(フェニックス)

南家 鈴木たろう(ドリブンズ)

西家 小林剛(Pirates)

北家 白鳥翔(ABEMAS)

 

東2局0本場

白鳥がドラ2枚の手で場風のをポンして打としイーシャンテン。

 

しかしここで魚谷からリーチが入る。

 

一発目に魚谷がツモ切ったをポンしてテンパイ。

カンは場に3枚見えだがリーチの現物待ち。この後の待ちの変化も含めて勝負になるという判断だろう。

 

次巡を引いてカンに受け変え。終盤にドラのを暗刻にして何を切るか。

満貫のテンパイに取る打も打もどちらも無筋を切ることに変わりはない。

であれば見えている枚数を優先して打とし待ちに取った。

だが勝負にいった結果は魚谷に満貫の放銃。暗雲が立ち込める。

今日もダメなのか…そう感じた矢先だった

東3局0本場

高めチャンタになるリーチを打つと

そのを一発ツモ!跳満となって一気に浮上した。

実はこのとき魚谷が自風のをポンしてカンのテンパイが入っていた。筒子にくっついてテンパイが入っていたら間違いなく打ち込みにまわっていたのである。まさに紙一重の和がり。これできっかけが掴めるか。

南1局1本場

北家の白鳥、でチー、

バックを積極的に仕掛けていく。

直後の魚谷、親で何を切るか。

多くの人は567の三色を見て打とするのではないか?

だが魚谷は打とした。三色は崩れるが筒子をリャンカンに固定して最もテンパイ枚数が多い。白鳥の仕掛けを見て打点よりも早くリーチを打つことを優先した。

最速マーメイドらしくスピードにはスピードで対抗しようという構えだ。

白鳥はを暗刻にし、カン待ちのテンパイを入れるが

魚谷も狙い通りを引き入れて追いつく。

がんばって押していたがドラのを引いてついにオリにまわってしまう。

もしも魚谷がイーシャンテン時に三色にこだわっていたらまだテンパイしておらず、白鳥もアガリが拾えたのかもしれない。親リーの効果を熟知した魚谷の勝負勘が白鳥の前に立ちはだかる。

この局は終盤安牌のなくなったたろうから中筋になったが打ち出され魚谷のアガリとなった。

南1局2本場

好配牌をもらった白鳥がリーチ

これにたろうがドラのを重ねて、ついに追いつく。

ラス目からの追っかけは恐かったがをツモりトップ目に立つ。

南3局0本場

をポンした魚谷はを残しを切る。

このときたろうはをポンしてトイトイに、小林がでチーしてタンヤオに見えており初牌で無筋のはかなり危険牌に見えた。魚谷はホンイツが崩れたとしても5200は確定していてそれにこだわる理由がない。を使ってアガることも考えて残したのだが

直後に白鳥から待ちのリーチがかかる。

現状リーチ平和のみだがトップ目の魚谷とは1100点差。オーラスに親を残していて流局時のテンパイ料でも変わらない4000点差以上に離したいところだ。

そして何という間の悪さ。このは止められない。

3900の直撃となって白鳥は2着目と6700点差のトップ目に立つ。また、3着目とは12100点差となり満貫ツモでも変わらなくなった。

だがまだ安泰とはいえない。試練のオーラスを迎えることとなる。

南4局0本場

トップまでは満直ハネツモ条件だった小林は5巡目にあっさりと跳満のテンパイを入れると

白鳥が早い巡目でを切っており、良さげな待ちにチェンジ

白鳥はこの局で終わるつもりで暗刻のを抜く。流局までの長い道のりを必死に歩いていく。

ここがターニングポイントとなった。

直後の小林はツモ。単騎の選択もできる。

白鳥の河をよく見ると、5巡目にを切っておりを手出ししたばかり。

間に3巡挟んでいて単純なのカンチャン落としの可能性は低い。

あるとすればの対子落とし、

もしくはにツモのスライドが考えられる。

他にはなどの複合形からの切りか。

だが自分からが3枚見えているためスライドや複合形の可能性は低い。

ここは対子落としと読んで単騎に受け変えるかと思ったが、小林は単騎を継続した。

待ちの良さとリーチ棒が出たときにダマでも出アガリで条件を満たすという判断か。

しかし結果的に白鳥はを並べ、この局小林のアガる唯一のチャンスだった。白鳥は助かった。

そして魚谷がテンパイを入れ

たろうもおいつく

直後に小林の掴んだドラのが場に打たれることはなくゲームセット。

流局し、苦しみながらも白鳥のトップでこのゲームの幕は閉じた。

ヒーローインタビューではチームメイトの多井から託されたものを見せてくれた。

オーラス、ギリギリまで追い詰められた白鳥を救って流局まで逃がしてくれたのは

この幸運のお守りだったのかもしれない。

1位:白鳥(ABEMAS)+55.7 

2位:魚谷(フェニックス)+9.0 

3位:小林(Pirates)▲18.4 

4位:たろう(ドリブンズ)▲46.3

 

 

この日、白鳥の他にもう一人再起をかける選手がいた。

鈴木たろう(ドリブンズ)である。

現在、個人20位 ▲146.4

先の半荘も含めて4連ラスという苦しい立場にいる。連闘となった第2戦、なんとしてもトップが欲しいところだ。

そしてこの日は全チームの選手が連闘することとなった。

起家 小林剛(Pirates) 

南家 魚谷侑未(フェニックス) 

西家 鈴木たろう(ドリブンズ) 

北家 白鳥翔(ABEMAS)

東1局1本場

たろうはドラのをポンしてイーシャンテンとするが

直後に親の小林からリーチがかかる

しかし現物となったをチーしてテンパイ

小林から満貫のアガリとなる。

この日初めて点数的にリードした。

南3局0本場

展開は小林とたろうのデッドヒートとなる

そこに白鳥がダブをポンし割って入る

切りのテンパイ取らずから

ツモでテンパイ

小林はでチーしてタンヤオに向かう。

がほぼ出るだろうと思われたイーシャンテンからまさかのを重ねてテンパイ

そして白鳥はドラのと入れ替え満貫にする

それを受けてたろう

として安全にテンパイをとる道もあったが、打でリーチ

これが白鳥に放銃。

白鳥に対し放銃を避けることができた小林とできなかったたろうで明暗を分けた。

白鳥がとターツを落として

最終手出しが

マタギのは読めなくもなかったためこの表情。

オーラスは辛くも2着をキープした。

1位:小林(Pirates)+58.2 

2位:たろう(ドリブンズ)+5.0 

3位:白鳥(ABEMAS)▲17.8 

4位:魚谷(フェニックス)▲45.4

この日はようやく光明が見えてきた白鳥といまだ浮上できないでいるたろうが対照的だった。だがまだまだリーグ戦の1/4を過ぎたところ。たろうもこのままというわけにはいかないだろう。実力者の二人が今後どのように立て直してくるか楽しみだ。

おまけ

筒子を切って単騎待ちにしそうだが、小林は打とした。

これは私が“鳴きイーペーコークラッシュ”と勝手に名付けているもので、鳴いた手で雀頭がない場合、非常に有効な形となるため知らなかった方はぜひ引き出しに入れておいてほしい。

 

梶谷悠介

最高位戦日本プ麻雀協会所属。HNツケマイとして天鳳やブログで一時話題となる。去年パパと麻雀プロに同時なった男。最高位とMリーガーを目指して連続昇級中。

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