幾千の苦悩も、
数多の後悔も
歌衣メイカは越えたから
さあ、喉を枯らす
準備はいいか?
――痛快に笑い飛ばせ!
神域リーグ2023は、10節に渡るレギュラーシーズンが終了し、セミファイナルへと突入した。

スコアと、システムをおさらいしよう。
レギュラーシーズン1位のヘラクレスは一足先にファイナル進出決定。
2位~5位のチームでセミファイナルを行い、3試合を終えた時点で最下位のチームのみ、ファイナルには行けず敗退が確定する。
そしてこのセミファイナルのスコアは、ファイナルには持ち越さない。(個人成績には反映される)
つまりは、セミファイナルは5位のチームに与えられた最後のチャンス。
敗者復活戦というわけだ。
現状5位はチームゼウス。4位のグラディウスとのポイント差は57.9pt。一度のトップラスで100pt近くひっくり返ることを考えれば、決して無理な点差ではない。

現状3位のチームアトラスは、ほぼ通過はできそうではあるが、完全な安全圏ではなかった。
全員がラスを引いてしまうと、敗退の可能性が出てきてしまう。逆を言えば、一人でも1位や2位をとればほぼ通過だ。
初戦に出場するのは、歌衣メイカ。昨年のMVPでありながら、ここまでなかなか成績が伸びておらず、個人17位に沈んでいる。

苦しい期間も、歌衣は麻雀を打つことを欠かさなかった。
時には、昨年ゼウスに所属していた鴨神にゅうに教えを乞い、雀力の向上に努める姿もあった。
豪快で、奔放。そんなイメージが先行しがちな歌衣だが、その実、麻雀に対する姿勢と想いは本物だった。

前節。チームメイトの咲乃の連勝に続きたかったが、歌衣は無念のラス。
後悔は無いとは口にしながらも、その声には確かな悔しさが滲んでいた。
もう、ラスはたくさんだ。
トップでなくとも2着なら、アトラスの通過は確定する。しかし、来るファイナルのためにも、弾みは付けておきたい。
自分のために、チームのために。
歌衣がセミファイナルの舞台に挑む。

セミファイナル第1試合
東家 天宮こころ (チームゼウス)
南家 風見くく (チームグラディウス)
西家 歌衣メイカ (チームアトラス)
北家 渋谷ハル (チームアキレス)
東1局は流局で、東2局1本場

歌衣にピンズが多い手牌が入った。
西や北を仕掛けていけば、アガれそうな手牌に見える。
「とか
鳴いても良いんだけど、役が(ホンイツの他に)無いんだよね」
歌衣は冷静だった。や
を鳴くと、このままではホンイツのみ。2000点になってしまう。
であれば、焦って鳴くのではなく、ドラ引きやメンゼンで手を進めるまで待つという判断。

狙い通り、ドラのを引いてきた。
を切ってホンイツに舵を切る。
これで鳴いても3900。ある程度の打点は確保できた。

風見から、が出る。
現状歌衣はと
の受け入れ。メンゼンでもテンパイはできそうだが。

ここはポンしてテンパイをとった。
ドラを引いて3900になっていること、いう字牌が待ちとして優秀なこと。
が3枚切れてしまったこと。
そして何より、チームは2着以上なら通過が確定すること。様々な要素が重なって、歌衣にポンをさせた。

これを、渋谷から捉えて先制。3900のアガリ。
こうした局面に合わせた選択をできるのも、歌衣の強み。
「でも足りねえなあ~?」
チームのために。わかってはいるものの、内なる歌衣の魂は3900程度で満足なんぞするはずもなく。
歌衣が、挑戦的にニヤリと笑って見せた。
東3局