少牌、役満テンパイ…滝沢和典は本当に復活したのか【熱論!Mリーグ】

熱論!Mリーグ【Tue】

少牌、役満テンパイ…

滝沢和典は本当に復活したのか

文・ZERO【火曜担当ライター】2018年10月2日

8/7に行われたドラフト会議で21人のMリーガー候補が選出された。その21人の中で唯一現場にいなかった男が滝沢和典である。

滝沢は、「越後の奇跡」としてテレビ対局にデビューし、その端整なルックスでファンを魅了した。それだけに留まらず、理論的な麻雀で連盟のビッグタイトルである王位戦を連覇するなど、多くのタイトルを獲得。イケメンで麻雀も強いとは、神様も不公平だな…と当時の私は妬んだものだ。

しかし近年は不調に陥ってしまったのか、タイトルにも見放され、一線で活躍することが少なくなってきた。「滝沢の時代は終わった」ドラフト会議に姿を現さなかったことが、誰よりも滝沢自身がそう感じている証拠であろう。

 

だからこそ、である。

EX風林火山からの2巡指名。

同じイケメン仲間だからわかる。もう数年すればイケメン雀士という肩書だけでは苦しくなってくる。今回の「Mリーグ」という千載一遇のチャンスを逃したくないという気持ちは強いだろう。私は今回の観戦記を書くにあたり、イケメン仲間である滝沢という打ち手に注目しながら観ることに決めた。くれぐれも著者の名前で画像検索しないように。

 

相手はライバルである佐々木寿人、最高位戦のリーチ超人村上淳、新進気鋭の松本吉弘の三人。

開幕してすぐのことだった。南家・滝沢はここから親の佐々木の現物であるを残し、ペンを払っていく。

親の下家だからこそ安全牌を確保し、価値のある手で押し返そうという意図だろう。

巡目は進み

滝沢はここから345の三色に的を絞り、を打った。たしかにの方が安全度は高い。ピンズが高い(場に出ていない)というのも判断要素としてはあったのだろう。

このは形を決めすぎに感じた。すんなりテンパイすれば問題ないのだが、を打たれたりして薄くなってきたときやを引いてきたとき、を引いたときなど、手牌の自由度はかなり落ちる。最初の判断は押し返す手を作るという意図を感じたが、実際に押し返せる手ができたら目いっぱいいくべきだと私は思う。私の目には、「冷静な判断」ではなく「見えない何かに怯えている」ように映った。指先が震えているのがなによりの証拠だ。数々の大舞台を経験してきた百戦錬磨の滝沢ですらプレッシャーを感じているのか。見ると村上も同様に緊張を隠せないでいるし、松本はその見えない何かを跳ね返すかのように無理に気負って打っているようにみえた。それだけ企業やチームメイトの期待、そしてMリーグという舞台が大きいということだろう。

のびのび打っているようにみえるのは佐々木だけだ。

この局を制したのは村上。

この手をカンのダマに受け1300のアガリ。リーチ超人としてはリーチといきたかったと思うが

・ドラの、三色となる…と手替わりが意外と多い

・ピンズが高い

・現状ドラ0

この3つの要素を受けてダマテンを選択したのだと思う。どれか1つでも欠けていたら、リーチに踏み切っていたかもしれない。

 

緊張がほぐれたことを期待した滝沢の親番、事件は起こる。

親で1牌ツモる前に一打目を切ってしまい、少牌扱いになってしまったのだ。

「慣れない自動配牌での配信だから仕方ない」

「プレッシャーが大きいのだろうな」

「めっちゃいい配牌だけにトラウマになりそうでかわいそう…」

という擁護の声があがったが、私はあえて「おい滝沢!しっかりしろ!」と辛辣な言葉を投げかけたい。彼は2000人の中から選ばれた21人のプロなのだ。企業から年俸をもらい、Mリーグに勝つことを使命とされた選手である。「慣れない」なんてことは言い訳にもならない。私だったら事前に同じルール・環境で練習を重ねただろう。本番で使うであろう卓を調べ、同じ卓を使って鍛錬をする。そうすれば「この卓は親で第一ツモを忘れがちなので注意しよう」と気付けるはずだ。この出来事から、明らかな練習不足であり、怠慢以外の何物でもないことがわかる。厳しい意見かもしれないが、期待が大きいからこそ、裏切られた時には厳しい批判を受けるのもプロだからこそといえる。

しかし、やってはいけないということは本人が一番わかっているはずだ。気になってTwitterを覗いたら

一切の言い訳をせず、謝罪する滝沢のツイートがあった。そして戒めるかのように名前に「少牌」と入れている。本人は一刻も早く忘れたい、風化させたい出来事だろうに、それを真摯に受け止めて今後も戦っていく姿勢は、悪い中でも素晴らしいと思った。今後の挽回を期待させる。

 

そしてその滝沢の姿勢に呼応してか、挽回のチャンスはすぐにやってきた。南1局、滝沢は渾身の大三元テンパイを果たす。

松本がリーチで追いつくもその待ちであるカンは純カラ(山に一枚もない)。Mリーグ初の役満が早くも炸裂するかと思いきや…テンパイした村上から横向きになったがこぼれた。松本のアガリ。一方で滝沢はこの表情。

しかし、私が一番印象に残ったのが次の一局だった。

僅差のラス目で迎えた親番。いやが上にも力が入る。力は入るが第一ツモは忘れてはいけない(笑)そこそこの配牌を手にした滝沢は5巡目

こんな手牌からを打ってイッツーを見切り、2シャンテンに構えた。次の瞬間、である。

にっくき佐々木がこれみよがしに牌を横に曲げる。その一発を受けた場面、あなたなら何を切るだろうか?滝沢選手になったつもりで考えてほしい。

一念発起して迎えたMリーグ、地に足がつかず手が震えている。そして自業自得とはいえ親番で少牌をし、みせしめかのような辛い時間を過ごした。頭の中でいろんな想いがかけめぐる中、テンパイした役満は指の間をすりぬけるかのようにこぼれ落ち、ようやく迎えた南場の親番ではライバルの佐々木からのリーチを受けた…のだ。

麻雀は人生の縮図…とよく言われるが、この局面は今の辛い滝沢の状況を表しているかのようにみえる。やることなすことうまくいかず、ライバルだと思っていたはずの佐々木ははるか先を走っているかのよう。この暗雲を断ち払う方法はないものだろうか。

現物は。これを切ってオリるのも一つの選択だ。親とはいえ愚形が残った2シャンテン。ラス目ではあるが僅差なのでこれ以上の差をつけられないことも大事である。まっすぐいくなら打だろうか。

どちらの道も厳しい選択だな…と、思って私はみていた。オリたら「弱気」と言われるし、まっすぐいって放銃したら「バランスを壊している」「押しすぎ」と言われるような、そんな辛い場面。

 

か―――

 

しかし、逡巡した後に滝沢が紡ぎ出した牌はそのどちらでもなかった。

私は食い入るようにモニターを覗き込んでしまった。中途半端に見えるが、あとからみると唯一無二の選択だと感じた。リーチに現物のを打ってしまうと手は崩壊し復帰は遠くなってしまう。その一方でを打つと2シャンテンを維持できるうえ、次もを連打することによって時間を稼げる。通る牌が増えるし、ツモを見てから判断を先延ばしにすることができる。すんなり入ってくるようなら押し返せばいいし、さらに危険なところを持ってくるようなら引けばいい。

この選択には中途半端という言葉はふさわしくない。攻守のバランスの取れた「最適の保留」と言える。

結果はあっさりと佐々木がツモ、ハネマンを親被りするハメになり、オーラス見せ場を作るもののアガれずそのままラスを引いてしまった。

しかし、私はたしかに見た。逆境の中、保留の選択をせざるを得なかったものの、未来の逆転を見据えていた、滝沢の静かな瞳を。

競馬に「叩き二走目」という言葉がある。一回目は緊張のあまり、自分を見失ってしまったが、二回目以降は慣れてその実力を発揮できるはずだ。次回以降の滝沢にも注目していきたい。

 

さて、二戦目であるが、他チームが勝又、多井、園田を投入していく中、コナミ麻雀格闘倶楽部は佐々木が続投した。その場の空気に慣れる、という意味では2戦ワンセットで戦うのも有効なのかもしれない。多井が開幕からアガり倒し、ゲームを決めてしまったが、私は佐々木の麻雀にその強さを感じた。

もともと佐々木は「麻雀攻めダルマ」との異名をとるように、デビューから攻め一辺倒で次々と勝ちを重ねていった。しかし、ライバルとされた滝沢ほどではないが不調な時期を経験し、いろんな場所で麻雀を打ち、少しだけ丸くなったように思う。

これは東二局2本場の場面だが、なんと佐々木はこのを何のためらいもなくツモ切り。受け入れは倍近く増えるものの、は全員の危険牌。受け入れは増えると言ったが鳴ける牌が増えるわけではないし、をツモったらが出て行ってしまう。そういう意味ではメリットは意外と大きくなく、デメリットを考えるとをツモ切る選択もある。しかし、それにしてもツモ切るまでが早かった。もう新しい「佐々木寿人」のフォームが完成されているかのように感じた。その一方で手が入った時の構えは至ってシンプルだ。

これは南2局の場面。佐々木は十分形のイーシャンテンだが、実はこの直前にダントツトップ目の親である多井がドラのを切っている。その多井からいつリーチが入ってもおかしくない状況、と言える。しかし佐々木の信条は麻雀を深く考えすぎないこと。麻雀は難しいもので、いろいろ経験すれば強くなれるわけではない。手牌読みだとか、相対速度などを覚えるのは悪いことではないが、適材適所でその引き出しを使えないとかえって成績は落ちてしまう。佐々木はそういったものの一切をそぎ落とし、シンプルに戦うことでこれまで結果を残してきたのだ。

実際園田はこの手で長考。親の多井のリーチにを残すか考えていた。このように多井のドラ切りに各者が対応する中、

佐々木だけはシレっとこの安全牌であるもツモ切ってしまう。一番怖いはずの多井の下家で、である。おそらく他の選手なら安全牌を残し、を先に切ってしまうと思うが、佐々木は攻める手がきたら相手の河は一切見ない。このシンプルな麻雀がハマった時には手が付けられなくなるし、チャンスを逃すことはない。

結局をツモってリーチ。当たり前のようにマンガンをアガった。

結果的にこの半荘は3着に終わってしまったが、2副露のテンパイから回ったり攻め一辺倒ではない一面を見せつつ、攻めるときはシンプルな強さである「攻めダルマ」をいかんなく発揮した。

 

今後もタッキー&ヒサトのこの両名に注目していきたい。

ジャニーズか!

ZERO(ゼロ)
麻雀ブロガー。フリー雀荘メンバー、麻雀プロを経て、ネット麻雀天鳳の人気プレーヤーに。著書に「ゼロ秒思考の麻雀」。現在「近代麻雀」で『傀に学ぶ!麻雀強者の0秒思考』を連載中。