アマチュア雀士16名の物語、
思いが交差する場所
【予選卓】担当記者:東川亮2023年10月29日(日)
いわゆる競技麻雀の世界において、アマチュアでも参加できる大会は数多くある。ただ、その中でも最大規模で行われている、すなわちより多くの人にとっての目標、憧れの舞台となっているのは、やはり麻雀最強戦をおいて、他にはないと思う。
今年も全国津々浦々で、数千ものアマチュア雀士たちがしのぎを削った。劇的な勝利もあれば、なすすべもない敗北もあっただろう。その中で勝ち上がった15名、そして前年度王者が一堂に会してアマチュア最強を決めようというのが「全国アマチュア最強位決定戦」である。
4卓に分かれて行われる予選は、他のプロ大会と違って勝ち抜けるのは1人のみ。ただ、勝った者はもちろん、負けた者もみな、それぞれのストーリーを最強戦の舞台で紡いでいた。
A卓:恐れを知らぬ老雄を捉えた押し引き
A卓の出場者は画像左から、米津聡(名古屋最強位)岡村博明(四国最強位)友(中国最強位)杉谷剛(九州最強位)。
最初に抜け出したのは米津。
東3局の親番でピンフドラドラのリーチをかけ、岡村から12000を出アガリ、大きな加点に成功した。ただ、この局は友が通っていないドラをたたき切ってカン待ちで追っかけリーチ、杉谷、岡村も終盤に形式テンパイで粘り込もうとしていた。4者がそれぞれに戦意を示した、この対局を象徴するような一局だった。
だが、そんな米津に友が強烈な一撃を食らわせる。
南1局、友は待ちで先制リーチをかけていた。しかし、は岡村が暗槓しており、目に見えてゼロ。いわゆる「ペン待ち」のリーチである。
そのあとに杉谷も追っかけリーチをかけ、終盤に手詰まってしまった米津は、リーチの2人がを切っていることから、3枚あるを選んでしまった。
一発勝負の舞台では何が起こるか分からない。リーチピンフドラドラ裏裏、18000の直撃で、友がトップ目に立つ。
友はこの試合、リーチを受けても押しまくる攻め麻雀が印象的だった。しかし、南2局・南3局はその押しが杉谷に捕まり、連続放銃。一気にほぼ並びのところまで迫る。
友と対照的に、杉谷は繊細な押し引きを随所に見せていた。相手の攻めに対し、ロン牌を止めて丁寧に守備を見せ、点数をキープ。
その守りは、勝機をつかむため。オーラスの親番で、待ちのフリテンリーチ。
ツモって裏1は4000オール。これで杉谷が友を逆転する。
最後は友がツモれば逆転のリーチをかけるがアガリには至らず、A卓は杉谷が勝利を収めた。
岡村にとっては、米津への放銃が最後まで響いた形に。その後も厳しい展開が続いたが、それでも最後までしっかりと戦い抜いた姿は、応援してくれる人たちの記憶に残っただろう。
B卓:最後に求めた牌は同じだった
B卓の出場者は画像左から、じぇりー(東北最強位)後藤正直(東東京最強位)MAYJUNC(中部最強位)井上裕貴(大阪最強位)。
B卓は、序盤はMAYJUNCがリードするが、そこに後藤が猛チャージをかける。
東3局3本場、親番でリーチのみの手をツモアガると、裏ドラが2枚乗って僥倖の満貫。そこからさらに加点し、親番が落ちたときには持ち点が5万点を超えていた。
ただ、それであっさりと終わらないのがトップにしか意味のない麻雀最強戦。
東4局にはじぇりーが門前チンイツ、ツモって倍満の大物手のテンパイを入れる。ツモり四暗刻の変化もあり、見ている側のボルテージも高まろうというもの。
残念ながらアガリには至らなかったが、まだまだこのままでは終わらない予感が漂う。
東4局にはMAYJUNCが見事な仕掛けから、リーチの井上に競り勝ってトイトイドラ3の満貫を出アガリ。後藤への挑戦権を得た形に。
A卓の岡村同様、この試合の井上にも逆風が吹き続けた。麻雀ではよくあることとはいえ、一発勝負の最強戦でこれはキツい。
迎えたオーラスは、逃げる後藤、追うMAYJUNCの展開に。点差は4900と、MAYJUNCには多少の打点が求められる。
MAYJUNCのテンパイは終盤だった。ドラはないが、ツモれば三暗刻で逆転、出アガリだと裏ドラなどのプラスアルファが必要となる。
同巡、後藤もテンパイ。どちらもがアガリ牌で、山には2枚残っていた。
決勝へのチケットを手繰り寄せたのはMAYJUNC。力強いツモで、アマ最強位への階段を上った。その牌がどこに積まれているか、それによって生まれるコントラストが、残酷で美しい。