だが瑞原はここからを切ってイーシャンテンを拒否した。
マンズが全体的に高く(切られていない)カンテンパイに固執しない方が良いという判断である。
さらに手牌パズルは続く。
をツモってピンズが連続形に。
ここでもを切るのがセオリーである。
さきほど解説した通りドラとタンヤオは等価だし、よりの方が横伸びしやすい。
それでも瑞原は
を連打した。
よほどマンズが悪く、逆にピンズに手応えを感じているということだろう。
この場面に合わせたチョイスは、アサピン(朝倉康心)を彷彿とさせる。
私が瑞原の著書の中で一番共感したのは、アサピンの優しさである。
初年度で右も左もわからない瑞原に対し、アサピンが一番優しく接してくれたという。
アサピンは相手の思考を読むのに長けている打ち手であり、だからこそ相手の気持が人一倍わかるのかもしれない。
同じく、優しく見守りつつも内側に熱い気持ちを秘めている石橋、そしてプロとして一番リスペクトする小林への感謝が綴られている。
2人が去らざるを得なくなったのは耐え難いが、戦場に残る以上切り替えなくてはいけない。立派に打ち切る姿を見せることが、彼らの想いを継ぐことになるはず。
徹底したマンズ拒否に、優しかったアサピンの手筋を見たところで、一瞬瑞原の手が止まったのをカメラは捉えていた。
2人から仕掛けが入り、今上家からが打たれた場面である。
アサピン… いや多くの人が鳴くのではないか。
が全部見えてしまい、ソウズの中膨れ形が超絶劣化してしまった。
逆にをチーした部分はかなり強い。
瑞原も手を止めて迷うが、
「ううん、私は鳴かない」
と思い直してツモ山に手を伸ばした。
そして直後に下家から打たれた
このすらポンしなかったのだ!
私は声が出なかったのかとも思った。
がドラ表示牌とともに2枚見えており、ここをスルーしたらアガリはかなり厳しい。
(仕掛けている2人にアガられる分には悪くない。
一方で、半端な手牌で動いて瀬戸熊さんのリーチと仕掛けに挟まれて手痛い放銃するのだけはやってない。)
ぶつけるなら
ぶつける価値のある
手牌に育ててからでしょう!
自信のあったピンズを伸ばしてのイッツーリーチ!
何度もを切る機会はあった。
をチーする選択も、をポンする選択も有力だった。
でも、それは私の麻雀ではない。
仲間のいいところを吸収しつつ、でも最終決定を下すのは他の誰でもない私。
それは祈りだったか。
それは叫びだったか。
「ツモ」
「4000/8000は4200/8200」
瑞原の大きすぎる二の矢が冬の虚空を切り裂いた。
瑞原の著書の中で、印象的だったのは
「有機物が嫌い」
という部分。
なんでも、菌も繁殖しない、喋らない、思想もない無機物のシンプルさにうっとりするとか。
よし、瑞原ファンのあなたは今からレゴブロックのような無機物を目指すんだ。
あ、あれも一応有機物なのか? よくわからん。
そもそも、普段生活していて有機物と無機物でわけないし、考えたことすらないよね。